『ヴァイオリニスト33 名演奏家を聴く』 

2009, 07. 16 (Thu) 18:50

詳しくない分野の録音を探すときに事前にチェックするのは、HMVやamazonのサイトのレビュー、ブログ記事、それに名盤100選とかのカタログ的なレビュ本。
やはり世評というのをある程度知っておくと、いろいろ役に立つこともあるので。
HMVやamazonのサイトのレビューは、何人かの信頼できそうなレビュワーの評を参考にしているが、網羅性には欠ける。
特定の作曲家の録音のレビュを探すなら、演奏のポイントの解説が載っているブログ記事が、カタログ本よりもよっぽど参考になったりする。(ただし自分の好みと同方向か反対方向かをわかっておかないと、かなりはずれたりするので要注意。)
超有名な曲だと名盤もいろいろあるので、そういう時はまとめて名盤カタログの類の本を探す。

評論家が書いたレビュ本は、いわゆる誰もが推す名盤を落とすことは少ないが、推奨している/していない録音には評者の好みが多分に反映されている。ヒマがあったら、複数のレビュ本を読むと、その評者の傾向と、自分の好みとの相性が良くわかる。
たまたま図書館で見つけた渡辺和彦氏の『ヴァイオリン/チェロの名曲名演奏』。ヴァイオリンとチェロの録音に絞っていたので、わりとコンパクトにまとまっていた。その演奏をとりあげた理由も書かれているので、録音を選ぶときの目安にはなる。
評論家ではオールラウンドに書くタイプと、特定の楽器・分野に絞って(たぶん得意だろうから)書く人と2種類あるようで、渡辺氏は後者の方らしい。

ヴァイオリン/チェロの名曲名演奏―弦楽器の魅力をたっぷりと (オン・ブックス)ヴァイオリン/チェロの名曲名演奏―弦楽器の魅力をたっぷりと (オン・ブックス)
(1994/11)
渡辺 和彦

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渡辺和彦氏の著書である『ヴァイオリニスト33 名演奏家を聴く』のなかに、ヨゼフ・スークの章があるのを知ったので、これも読んでみた。
この本は、全体的に評伝のようなプロフィール部分は比較的少なく、評者の記憶に残っているエピソードや、個々の演奏者に対する演奏スタイルの分析・評価が主体。
評者独自の見解が色濃く反映されていてかなりクセはあるけれど、それをわかって読めばなかなか面白い。
書きぶりがわりと論理的というか冷静なところがあるので、思い込み過多のタイプの評論家の本よりは、ずっと読みやすい。

彼はジュリアードのディレイ門下の”アメリカンスタイル”のヴァイオリニストについては、おそらく好みではないせいか、結構辛口。パールマンについてはちょっと厳しいかなという気もするけれど、奏法の特徴を書いた部分を読むとなるほどとも思う。
超絶技巧とドライなタッチの演奏で”機械的”とか”冷たい”とか言われた(まるでポリーニみたいな気がする)ハイフェッツは高く評価している一方、シゲティには(というか、それを評価する人たち)にはやや懐疑的、とか、わりとスタンスが明確。
他の評論家の見解に対してもいろいろ言っている。名指しでこんなにはっきり書いて良いのだろうか...と思うところはあるが、評価する視点と好みの違いがわかるので、これはこれで良いところである。

門外漢には、録音や映像だけではわからないことが多いので、この本はいろんな知識もインプットできて、中身もなかなか面白い。
名だたるヴァイオリニストについて知るきっかけとしてはとても役に立ったけれど、ヴァイオリニストによって書いているポイントがかなり違うので、内容の濃淡が結構ある。
それに2002年発行なので、2000年以降の情報がほとんど入っていないのが少し惜しい。

この本を読むと、やはりグリュミオーとクレーメルを聴いておいた方が良さそうに思えてきたので、持っているCD(探すと20枚くらい持っていた)を聴き直してみようという気になってきた。
スークの章については、1990年代の来日公演のエピソードなどが数多く盛り込まれているし、演奏スタイルの変化についての考察もあって、これはとても参考になった情報だった。

ヴァイオリニスト33―名演奏家を聴くヴァイオリニスト33―名演奏家を聴く
(2002/01)
渡辺 和彦

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2009/07/18 (Sat) 20:43 | REPLY |   

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