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ケンプ ~ バッハ・ヘンデル・グルックのピアノ編曲集
バッハ作品をピアノ独奏用に編曲した作曲家で有名なのは、《シャコンヌ》のブゾーニ、オルガン曲をピアノ編曲したリスト、《G線上のアリア》のシロティなど。
他にも、レーガー、ゴドフスキー、サン=サーンスなどがバッハ作品の編曲をしているので、バッハは作曲家の編曲意欲を刺激するらしい。
ピアニストによる編曲では、《主よ、人の望みの喜びよ》のマイラ=ヘスが一般的には最も有名な曲でしょうが、ケンプも12曲あまりの編曲を残している。

バッハ編曲者としては、ブゾーニが最も作品数が多く(と思う)有名。特に、《シャコンヌ》が良く演奏されているが、これは編曲というよりも、ブゾーニ作曲のロマン派的ピアノ曲と言ったほうが良いような重厚壮大な音響世界。
ピアニストが良く弾くバッハ編曲は、《シャコンヌ》以外では、《主よ、人の望みの喜びよ》のマイラ=ヘス編曲版。クリスマス近くになると、急にあちこちでこの編曲版が流れている。
大曲ではなく小品になると、ブゾーニよりもケンプ編曲版を使っているピアニストが多いように思う。

ケンプは、バッハ編曲版の自作自演の録音を残していて、このアルバムは1975年、ケンプが79歳の時に録音したもの。
バッハの編曲作品以外に、イギリス組曲第3番、トッカータとフーガニ長調、ヘンデルとグルックの編曲作品も収録していて、選曲はとても充実している。
さすがに79歳の高齢なので、テンポが速いところでは指回りがややもたつき気味、タッチの切れも悪くフォルテの鋭さに欠けるところはあって、いろいろとテクニックの問題を感じるものはあるが、持ち前の滑らかなレガートと柔らかい音の響きは相変わらず美しい。

Bach: Englische Suite No. 3; Capriccio; Transkriptionen für KlavierBach: Englische Suite No. 3; Capriccio; Transkriptionen für Klavier
(2008/08/26)
Johann Sebastian Bach、

試聴する(米国amazon)


バロック期の声楽曲はまず聴くことのない分野なので、山ほどあるバッハのコラールやカンタータもほとんど聴かず、原曲のイメージは全く白紙。
合唱が入っていても、もっぱらメロディしか聴いていないので、本来の聴き方ではないだろうけれどピアノなり楽器の独奏で聴く方が記憶に残りやすい。


初めて聴く《今ぞ、そのとき》は、これだけ柔い響きで弾くと、テンポが速くて細かいパッセージが混濁ぎみになりそうだけれど、主旋律は若干強めに響かせていて3声の分離が明瞭。

《シシリアーノ》はさすがに超有名な曲なので、他のピアニストの録音で何回か聴いている。
なかでもケンプの演奏は格別に素晴らしく、淡々とした表現の柔らかい響きの中で、そこはかとない哀感と暖かみが交錯する味わいが、何ともいえません。

これも超有名な《主よ、人の望みの喜びよ》だけれど、ケンプ編曲版で聴くのは珍しい。
マイラ=ヘスの楽譜と付き合わせれば細かい違いは良くわかるのだろうけど、両方ともPB化していないので、楽譜は持っていない。
ケンプ編曲版は、マイラ=ヘスよりも若干厚みのある響きの和声で、特に、終盤はかなり力強く盛り上がっていくので、透明感がやや薄い感じがする。

《シンフォニア》は、どこかで聴いたことがある旋律。
ピアノ編曲版とはいえ、華やかで堂々とした輝きに満ちていて、とてもシンフォニックな響きがする。

バッハの編曲版の間に挿入されているヘンデルの《メヌエット ト短調》の編曲版。
これがとても哀感のあるとても美しい曲で、バッハの編曲ものよりも、ずっとロマンティックな曲。

《目覚めよと呼ぶ声が聞こえ》も、どこかで聴いたことがある。多分、ビレットかヒューイットの録音。

有名なチェンバロ協奏曲第5番の《ラルゴ》
ペライアやカツァリスの録音で聴いていたのでそれと比べて、ピアノ独奏の方がしっとりと静かな雰囲気があって、このシンプルさも良いもの。

最後はグルックが2曲。
《オルフェオの嘆き》と《精霊の踊り》は高音の響きが特に美しく、瑞々しい透明感のある曲。
特に、《オルフェオの嘆き》は甘美で悲しげなメロディが特に印象的で、この編曲集のなかでは一番ロマンティック。

バッハのピアノ編曲はもちろん良かったけれど、ヘンデルとグルックの曲が思いもかけないほど美しい。廉価盤でこれだけの曲が聴ければ、もう充分なくらいに満足できる。

バッハ編曲集で比較的新しいアルバムなら、アンジェラ・ヒューイットの『バッハ・アレンジメンツ』。どうしてもケンプのテクニックが気になるなら、こっちは安心して聴ける。
このアルバムの特徴は、ケンプだけでなく、ヒューイット自身のも含めて他の編曲版も数多く収録していることと、有名なブゾーニ編曲版が使われていないところ。音がとても綺麗だし、バッハを得意としているヒューイットなので内容的にもとても良いアルバムです。


<収録曲>
-J.S.バッハ
1. イギリス組曲第3番
2.カプリッチョ《最愛の兄の旅立ちにあたって》BWV992

-J.S.バッハ/ケンプ編曲
3.コラール「来たれ、異教徒の救い主よ」 BWV 659
4.コラール「今ぞ、そのとき」 BWV 307/734
5.シシリアーノ ~フルート・ソナタ第2番 BWV 1031より
6.コラール「わが心の切なる願い」 BWV 727
7.コラール「主よ、人の望みの喜びよ」 BWV 147.No.6
8.コラール「甘き喜びのうちに」 BWV 751
9.シンフォニア ~ コラール「神よ、われら汝に感謝す」 BWV 29より

-G.F.ヘンデル/ケンプ編曲
10.メヌエット ト短調 ~「ハープシコード組曲」HWV 434,No.1

-J.S.バッハ/ケンプ編曲
11.コラール「目覚めよと呼ぶ声が聞こえ」(カンタータ第140番) BWV 140,No.1
12.ラルゴ ~チェンバロ協奏曲第5番 BWV 1056より
13.コラール「主イエス・キリストよ、われ汝に呼ばわる」 BWV 639

-C.W.グルック/ケンプ編曲
14. バレエ音楽「オルフェオの嘆き」(「オルフェオとエウリディーチェ」より)
15. 精霊の踊り(「オルフェオとエウリディーチェ」)

tag : ケンプ バッハ ヘンデル グルック

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Author:yoshimi
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クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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