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バルトーク/ミクロコスモス
《ミクロコスモス》は、バルトークのピアノ独奏曲で最も名前が知られているが、実際に全曲聴いたことのある人は、知名度の高さほどには多くはないであろうと思われる曲集。
初めは子供のピアノの練習用を意図していたらしいが、徐々にバルトーク自身がこの曲集に凝り始めて、最後には、バルトークの作曲技法のエッセンスが凝縮されて詰め込まれたような高い完成度の曲集となっている。
まさにタイトル通り、それ自体で完結した小宇宙のような世界で、均整のとれた独特の美しさを感じさせる。

第1巻から第6巻まで全153曲にサブタイトルがついているので、使われている作曲技法が何かがよくわかる。ピティナの解説だと、”民俗的な旋律、旋法や五音音階、全音音階などの使用、不規則なリズムや、拍子の変化、不協和音の使用など”が特徴とある。右手=旋律、左手=伴奏というパターンがあてはまらず、対位法がかなり使われている。
現代音楽の入門用練習曲に良いという人がいるのももっとも。

第1巻から段々難易度が高くなって第4巻まではまさに練習曲。それも、ショパンやリストのエチュードなどコンサート映えするようなものではない。無理やり喩えていうとすれば、古典派音楽のチェルニーの練習曲のようなものだろうか。
ピアノを練習する人やバルトークの作曲技法自体に興味があるなら、全曲楽譜とにらめっこして聴くのも良いし、つくりはシンプルでもリズムや和声の面白い曲はたくさんある。
あまり現代音楽になじみがないのなら、技法が高度になり、音楽としても面白くて洗練されている第5巻と第6巻(コンサート用の小品レベルといわれる)から聴き始めるのが良さそうです。

 ピティナの楽曲解説(第6巻)

 ミクロコスモスを弾いてみたいと思っている人には面白いブログ記事”バルトークが試したかったこと~「ミクロコスモス」第1巻からだけでもみてみましょう”

《ミクロコスモス》には、なぜか2台のピアノ用や歌付きの曲が数曲含まれている。
全曲録音しているものでも、(第1)ピアノパートだけ弾いているものが多いが、ヤンドーが弾いているNAXOS盤だと、第2ピアノとメゾソプラノが入ったバージョンが収録されている。
歌付きの曲は、ピアノ独奏版と歌曲版の両方が録音されている。バルトークの声楽曲はそれほど多くはないし、そうそう聴く機会もないので、ここはNAXOS盤の良いところ。
ヤンドーの弾くミクロコスモスは、音楽的な側面を強調するというよりも、曲の骨格・構造が明瞭になるような演奏で、残響もかなり抑えている。
無骨というか、質実剛健というか、そういうタイプの弾き方なので、人によっては荒々しくて無愛想な演奏に聴こえるかもしれないけれど、よけいなフレイバーがついていないバルトークなので、安心して聴ける。

バルトーク:「ミクロコスモス」全曲バルトーク:「ミクロコスモス」全曲
(2006/09/01)
イェネ・ヤンドー(piano) , バラーシュ・ショコライ(piano) , タマラ・タカーチュ(Ms)

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日本人で全曲録音しているピアニストで有名なのは山崎孝。1981年の古い録音のせいか音がやや篭もりがちだが、演奏自体は残響が少し長めなので響きは綺麗に聴こえる。
旋律の流れは滑らかで、表現も豊かでわりと饒舌。聴きやすくて面白くはあるけれど、私がバルトークの音としてイメージしているゴツゴツしたところがなくて、なぜかポップな雰囲気を感じてしまう。
日本のバルトーク研究の第一人者と言われるピアニストなので(『バルトーク ミクロコスモス 演奏と解釈』という本も上梓しておられます)、演奏内容は全く問題ないはずなので、単に好みとずれているだけなのでしょう。

バルトーク:ミクロコスモス(全153曲)バルトーク:ミクロコスモス(全153曲)
(1999/09/25)
山崎孝

試聴する(itune storeサイト)
全曲録音の国内盤にしては良心的なプライス。ジャケットデザインは、てんとう虫とかにするよりもこの曲集の雰囲気に似合っているようには思うけれど、この虫は気持ちが悪くて全然好きではない。

                     

《ミクロコスモス》は、リズム感が面白く、変拍子にオスティナート、シンコペーション、スタッカート、etc.と、奏法のバリエーションがいろいろあって、なかでも変拍子やオスティナートがはいっていると、現代音楽的なリズムに溢れていて、とても好み。
やや不協和的な和声の重音やアルペジオ、半音階などが使われているので、現代音楽でよく聴かれる不安定さや不可思議さに満ちてはいるが、響き自体はとても美しいので、音を無理やり歪めたような”前衛的な”ところはない。
現代のピアノ独奏曲のなかでは、かなり聴きやすい。特に第5巻と第6巻の2巻は、それまでの曲とは違って、書法・リズム・旋律とも格段に込み入ってきて、バルトークの作曲技法のエッセンスが詰め込まれ、音楽そのものも練習曲の域を超えている。短い曲が多いので、バルトークらしい音楽が豊富なバリエーションで聴けるという贅沢な曲集。
第1巻から順に全巻聴き通すのは結構大変なら、最後の2巻だけ聴けば、集中力が途切れることなく、最後まで一気に聴き通せるはず。
楽譜を見ながら聴くと、この音の配列だとこういう風に聴こえるのかというのかわかって、さらに面白く聴ける。

「ミクロコスモス」(第5巻)の楽譜(Scribd .com)
「ミクロコスモス」(第6巻)の楽譜(Scribd .com)
※上記サイトは、ユーザー登録せずに楽譜閲覧は可能。ダウンロードにはユーザー登録必須らしい。楽譜閲覧しても問題なかったが、私はユーザー登録はしていないので、ご自身の判断で利用してください。


《ミクロコスモス 第5巻》
122. 同時に奏される和音と付随される和音:打楽器的に弾かれる和音。テンポ良くモダンで明るい。
123. スタッカートとレガート
124. スタッカート
125. 舟遊び:やや浮遊感のある旋律。
126. 変化する拍子:変拍子で弾かれる122番のようなモダンな旋律。
127. 新しいハンガリー民謡:ピアノが伴奏にまわり、メゾソプラノが独奏。
128. 農民の踊り
129. 交代する3度:3度重音で、連打・スケールなどで目まぐるしく動き回る。
130. 村の冗談
131. 4度
132. 分散形と同時形の長2度
  -特に同時形の響きが不可思議な雰囲気。”夜の音楽”のトーンクラスターの音を少し減らしたような感じ。
133. シンコペーション
134. 3つの重音の練習:
135. 常動曲:重音で移動する曲
136. 全音音階
137. ユニゾン
138. バッグパイプ
139. 道化師
 -少しドビュッシーの「象の子守歌」に似ているおどけた雰囲気の曲。

《ミクロコスモス 第6巻》 第5巻にも増して充実した内容の曲集。この第6巻は何度でも聴いてしまうくらい面白い。
140. 自由な変奏曲
  -変拍子のリズム感が面白い。テンポが速く急迫感のある前半と緩徐部のコントラストが鮮やか。
141. 主題と鏡像形
  -楽譜を見ると一目瞭然。右手と左手が鏡像のように対称的な音の配置。
142. 蝿の日記より
  -ミニマル的な同形パターンがスタッカートで展開され、レガートな内声部の旋律が浮き出てくるのが面白い。どうしてハエなんだろう?
143. アルペッジョの分奏
  -これも茫漠とした響き。波が寄せては押し戻されるような感じの動き。
144. 短2度と長7度
  -「戸外にて」の”夜の音楽”に出てくるようなトーンクラスター的な響きが神秘的。
    短2度と長7度の組み合わせがこの上なく不可思議な雰囲気を漂わせている。
145. 半音階的インベンション
146. オスティナート
  -左手が和音・重音を連打して律動するリズムが小気味良く、テンポも速いので疾走感もある。
147. 行進曲
148~153. ブルガリアのリズムによる6つの舞曲
  -第3曲(150番)は、明確に拍子を刻むように打鍵していく部分と、内声部がヘミオラでつながっていく部分に分かれているところが面白い。
  -第6曲(153番)は、疾走感のあるモダンで軽快な旋律。ヤンドーはそんなに軽めには弾いていないのに、なぜかモダン・ジャズの薫りがする。山崎孝の演奏で聴くと、私にはジャズ・ピアノとしか聴こえてこなくて困ってしまう。

tag : バルトーク ヤンドー

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Author:yoshimi
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クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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