バルトーク/2台のピアノと打楽器のためのソナタ 

2009, 08. 27 (Thu) 12:00

《2台のピアノと打楽器のためのソナタ BB 115》(1937年)は、バルトークのとても珍しい編成のソナタ。バルトークに限らず、クラシック音楽の歴史のなかでも、かなり変わった編成らしい。
この曲は、指揮者のパウル・ザッハーがバルトークに委嘱して作曲されたもの。《弦楽器・打楽器・チェレスタのための音楽》もザッハーからの委嘱作品で、その初演が成功したので、ザッハーがバーゼルのISCMグループという室内楽合奏団のために、バルトークに室内楽曲を委嘱したという。

この曲の楽器編成がピアノと打楽器だけなので音色が単調かと思っていたら、聴いてみると意外に色彩感がある。
打楽器といっても、パーカッションが2台、ピアノも2台。これだけあれば、音色と和声のバリエーションも広がるので、まるで小さなオーケストラのような質感・量感がある。
バルトークはピアノを打楽器的によく使ってはいるが、もともとバルトークの曲の和声は美しい響き。
この曲も躍動的なリズム感が面白い上に、ピアノをどういう風に使っていても響きが不思議と綺麗に聴こえる。
バルトークは、初めはとっつきにくいタイプの音楽だけれど、いろいろ聴いてバルトークの音楽のつくり方に慣れてしまえば、構成とリズムが複雑ではあっても、不協和音も少なく現代音楽の中ではかなり聴きやすい。

ハンガリー出身のピアニストのアンドラーシュ・シフが、20世紀の作曲家のなかで好きなのはバルトーク。
シフのハンガリー時代の先生であったパウル・カドシャはバルトークの友人。カドシャとバルトークは、バルトーク作品を一緒に研究していたという。
カドシャは、バルトークは叩きつけるように弾くもんじゃないとシフに教えたという。「バルトークはいつも荒々しく、ばんばん弾かれます。ですから彼の音楽の音色の美しさが失われてしまうのです。」とシフは言っていた。
”ばんばん”弾くのが一般化したか、もしくは、拍車をかけたのは、ポリーニの弾くバルトークのピアノ協奏曲第1番・第2番のCDがリリースされたからではないかとひそかに思っているけれど、実際そうかどうかはわかりません。

バルトークの全集といえば、ハンガリー出身の演奏家が録音しているHungaroton盤。
特に名盤がなかったり、好きなピアニストの演奏が見当たらないときは、それほど新しい録音ではないけれど、この全集でよく聴いている。
ご当地ものというか、バルトークやドヴォルザークといった東欧の作曲家の作品は、同郷の演奏家による録音を聴く事が多いので。
《2台のピアノと打楽器のためのソナタ》の演奏は、ピアノがコチシュ、ラーンキ、パーカッションはペッツ、マルトン。

Bartok: Complete EditionBartok: Complete Edition
(2000/09/19)
Andras Korodi, Antal Dorati, Ervin Lukacs, Gyula Nemeth,他, Budapest Philharmonic Orchestra, Budapest Symphony Orchestra

試聴する(米国amazon/135-137)




第1楽章 Assai lento: Allegro molto
冒頭こそレントだけれど何かが起こりそうなオドロオドロしい雰囲気のピアノとパーカション。
やがてフォルテでいかにもバルトークらしい荒々しく物々しい曲想に変わって、速いテンポでリズミカルに。
バルトークの音楽は言葉で説明しにくいので、とにかく聴いてみるのが一番。
第1楽章はリズムが錯綜していて、バルトーク自身が第1楽章にはリズムや音の強さの振り分けが難しいところがたくさんあって(同じf、mf、p、ppでも強さが違う)、ピアノの第1パートもかなり難しいと言っている。
中盤を過ぎたあたりでどこかで聴いたことのあるフレーズが出てくる。記憶をたどると、ピアノ協奏曲第3番の第3楽章の冒頭あたりで使われていた主題の旋律だった。

和声が特に美しいのが第2楽章Lento ma non troppo
ピアノ曲の《夜の音楽》のような、静かで神秘的な響きのする旋律をピアノが弾いている。パーカションの木琴のような音も、森の中の静寂さのなかで鳴り響いているような神妙さ。
バルトーク=打楽器的なリズミカルで荒々しい曲というイメージがなきにしもあらずとは思うけれど、実際はかなり和声が美しく響く曲が多くて、民謡風に変形されたドビュッシーのような響きとでもいうような不思議なメロディアスさを感じる。

第3楽章 Allegro non troppo
テンポが速くてダイナミックで、華やかな民謡風な旋律がところどころ使われているようなので、わりと聴きやすい楽章。
冒頭の開放的な雰囲気は、ピアノ協奏曲第3番の第3楽章の冒頭に似ている感じもする。
2台のピアノの掛け合いと旋律の受け渡しが軽妙で、そこにパーカッションが合いの手を入れるようにリズミカルに入ってくるのが面白い。
ピアノは和音の厚みがかなりあるので、響きが重厚で華麗。パーカッションもリズムを刻むだけでなく、旋律的なフレーズを弾いたりして、他の楽章よりも目立っている。
楽章中でも緩急のテンポがかなり変化し、いろんなモチーフが出てくるので、冒頭こそわかりやすいと思ったけれど、最後まで聴くとやっぱり構成がわかりにくい曲だった。

このソナタの管弦楽編曲版が、《2台のピアノと打楽器のための協奏曲 BB 121》[試聴ファイル/201-203]
バルトーク全集にこの曲も収録されているが、ピアニストがTusaとバルトークの妻Ditta。パーカッションは、ペッツとマルトン、ヤーノシュ・シャンドール指揮ブダペスト交響楽団による演奏。
当然のことながら、ソナタよりもシンフォニックな響きになっているが、ソナタの方がリズムや和声の骨格が明確だし、曲としての面白さが良くわかる。ピアノを聴きたいのなら、やはり原曲のソナタの方を聴いた方がずっと良い。

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