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バッハ/ヴァイオリンソナタ第3番より ~ 第4楽章 Allegro
バッハのヴァイオリン・ソナタの本来の名称は、ピティナの解説によると、”現存する最古かつ最重要の資料(J. H. バッハによる筆写パート譜、1724-27年頃作成)には、イタリア語で『協奏的チェンバロとヴァイオリン・ソロのための6つのソナタ、ヴィオラ・ダ・ガンバの低音部付』と題されている。”という。

それまでは、室内楽曲でのチェンバロは、左手が通奏低音を弾くという伴奏扱いだったらしく、このソナタは両手のパートを楽譜に書き起こして、”全6曲を通じて、チェンバロはヴァイオリンの和声的な伴奏ではなく、その左右の手がそれぞれ独立した声部となり、対位法的に展開する。”という扱いに変わっている。

チェンバロのパートは、2声で書かれていることが多いが、楽章によっては3声以上(緩徐楽章に多い)になっていたりする。
楽譜を見ると、音符はそれほど詰まっていないし、弾きやすそうな雰囲気ではある。
ヴァイオリン・ソナタを演奏するのが目的ではなく、チェンバロパートだけをピアノで弾いて楽しむ人が多いとは全く思わないけれど、好きな楽章をいくつかピアノで弾いてみると、これがかなり独奏曲的にも聴こえる。
ピアノの練習については書かないことにしているけれど、この曲はピアノの練習用に弾く人もほとんどいないだろうし、とても好きな曲なので、今回は例外。

家庭でチェンバロを持っている人はほとんどいないだろうけれど、電子ピアノを使うとチェンバロの音色を使っては弾くことはできる。
たまにチェンバロモードで弾いてみると、曲の雰囲気が変わって新鮮ではあるけれど、所詮本物のチェンバロを弾いているわけではないので、擬似的な音に変わっているだけでこういうのは長続きしない。
チェンバロ特有の残響と、慣れのせいとで、1音1音が明瞭なピアノの音でないと、速いパッセージで正確に打鍵できているかわからなくなるので、結局ピアノで弾くことになる。

弾いてみたのは、第1番の第2・第4楽章、第3番の第4楽章、第4番の第4楽章。
曲にもよるけれど、緩徐楽章を弾くのはあまり好きではないので、独奏曲でもテンポの速い楽章を選んで弾くことが多い。
この楽章の他にも、第6番の第3楽章は、ヴァイオリン・ソナタなのになぜかチェンバロのソロの曲なので、一人で弾くのに向いている。この曲の最終楽章も華やかでダイナミックな曲で、これも弾き映えはしそう。

このヴァイオリン・ソナタのチェンバロパートは、音を拾うのはわりと楽な曲が多いとは思うけれど、指定どおりの速いテンポで、ノンレガートで音の粒を揃えてよどみなく弾くとなると、黒鍵を弾くことが多いこともあって指使いがところどころややこしくて、その動きになれるように何度も弾かないといけない。
他の鍵盤楽器曲(パルティータとかフランス組曲とか)でも、音の配列はシンプルでも、指使いがなぜか難しい部分がちょこちょこと出てくる。
IMSLPでダウンロードした楽譜だと、運指番号が書いていないことも多い。自分で一番効率的で弾きやすい運指を決めないといけないので、指使いがいかに大事かが実感できるという意外な効用がある。

弾いていて一番楽しいのは、《ヴァイオリン・ソナタ第3番ホ長調 BWV1016》の第4楽章。
CDで聴いていると、まるで協奏曲を聴いているような雰囲気がする。3声しかないのに、響きが膨らみがあって華やかで、ヴァイオリンとピアノが弾く流れるように滑らかな旋律と、その掛け合いが面白く、生き生きとした躍動感に溢れている。
このバッハのヴァイオリン・ソナタは、昔からチェンバロで弾かれることが多く、ピアノによる録音はほとんど見かけない。その珍しいピアノ版の新しい録音なら、ツィンマーマン&パーチェのソニー版がとても良い。
こういうフォーマットで演奏するのが良いか悪いかはともかく、ヴァイオリンとピアノ(2声)の3声が、それぞれ明瞭に聴こえてくるので、チェンバロ版とは別の曲のように聴こえるのが面白い。

私が使った楽譜はIMSLPに登録されているパブリック・ドメインの楽譜。[楽譜ダウンロード]
構成は、A-B-A’-A(という形だと思う)。中間部のBは3連符のクロスリズムが入ってゆったりとした優しげな主題に変わり、A’は短調に転調した主題の変奏。最後に主題がそっくり再現される(これで最後の2頁分は練習しなくて済む)。

楽譜のチェンバロパートは、冒頭は左手が単音で拍子をとるように入っているが、いくつか聴いた録音(チェンバロ、ピアノ)では、両手で弾く和音になっている。たぶん、使っている楽譜が違うんでしょう。

冒頭の主題は、ヴァイオリンが弾く16分音符の華やかなパッセージと、歌うような8分音符の旋律。これをピアノが交代で弾いたり、ヴァイオリンとユニゾンしたりと、この掛け合いがとても面白い。
ピアノパートだけでも、完結した一つの曲のように聴こえてくる。
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中間部は、とても優しい雰囲気の旋律に変わり、ヴァイオリンとピアノが囁きあっている。
チェンバロパートは、クロスリズムになっていて(右手8分音符の3連符、左手8分音符。クロスリズムは苦手で最後に練習する部分)、ときどき主題の断片のような16音符のパッセージが、このリズムと旋律をかき乱すように入ってくる。
これは、独奏楽器が弾く旋律に対して、オケがそれを断ち切るように入ってくるという、協奏曲的な手法らしい。
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中間部が終ると、冒頭の主題が再登場。といっても、すぐに短調に転調して主題が変奏され、決然とした雰囲気の曲想に変わる。(下の楽譜の第1段4小節目から)
この楽章は4分ほどの演奏時間だけれど、短いわりに曲想が次々に変化していくので、聴いても弾いても本当に面白い。
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徐々に音階を駆け上がっていったときに、急に連続した2音のトリルでカスケードのように下降する旋律が何度も出てくる。この部分はオケの弦楽パートが弾くような動きの旋律に思える(実際どうなのかはわかりません)。
ピアノで弾くにしてはいくぶん変わった動き(と私には思える)なので、弾いていてもとても面白い。
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このヴァイオリン・ソナタのチェンバロパートは、バッハの鍵盤楽器曲とはちがってかなり自由に動き回っているような感じがするし、ヴァイオリンとのユニゾンや掛け合いも入っているので、ソロとは違った趣きがある。
特に、この第3番の第4楽章は、まるで小さな協奏曲を弾いているような気分になってくる。独奏曲ばかり弾いて疲れたときは、こういう曲を弾いてみるのも悪くはないでしょう。

tag : バッハ パーチェ

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クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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