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アウエルバッハ/ヴァイオリンとピアノのための24のプレリュード
《24のプレリュード》というタイトルの曲ですぐに思い浮かぶのは、ロマン派ではショパン、現代ものではショスタコーヴィチ。
多分最も新しい作品は、ロシアのコンポーザー・ピアニスト、レーラ・アウエルバッハのとてもピアニスティックな《24のプレリュード Op. 41》(1999)。

アウエルバッハは、《ヴァイオリンとピアノのための24のプレリュードOp.46》という曲も書いていて、ピアノ独奏曲の編曲版かと思ったけれど、両方聴いてみるとそれぞれ独立した作品だった。
《ヴァイオリンとピアノのための24のプレリュード》はヴァディム・グルーズマンとアンジェラ・ヨッフェのために書かれた曲。グルーズマンとヨッフェは、2003年6月に有名な振り付け師ジョン・ノイマイヤーとのコラボレーションにより、ハンブルク・バレエとの共演で世界初演している。

アウエルバッハは詩人としても有名。1996年に国際プーシキン協会の「ポエト・オヴ・ジ・イヤー」に選ばれているし、ノーベル文学賞にもノミネートされた。彼女の曲を聴いていると、幻想的でポエティックな雰囲気が漂う曲もあるし、詩人としての感性が音楽にも生かされているのでしょう。
[アウエルバッハのプロフィール]

ピアニストであるアウエルバッハはピアノ独奏曲やピアノを入れた協奏曲系の作品が多いが、ヴァイオリンとチェロのための曲もいろいろ書いている。
ショスタコーヴィチのピアノ曲《24のプレリュード》のうち、5曲をヴァイオリンとピアノ版に編曲しているので、ピアノに弦楽器を加えたフォーマットはわりと得意らしい。

この曲の録音もグルーズマンとヨッフェによる演奏。レーベルは現代音楽の録音も豊富なBIS。
Lera Auerbach: 24 Preludes for Violin and Piano; T'filah; PostludeLera Auerbach: 24 Preludes for Violin and Piano; T'filah; Postlude
(2003/06/24)
Angela Yoffe (Piano), Vadim Gluzman (Violin)

試聴する(BISサイト)


《ヴァイオリンとピアノのための24のプレリュードOp.46》(1999)

現代音楽のヴァイオリン&ピアノ作品としては、調性と無調が混在しているが和声の響きは綺麗で、曲想もわかりやすいので、かなり聴きやすい曲集。

構成的にいくつかのパターンがあって、練習曲みたいにメカニカルな動きだけであっさりと終る曲、3部形式など中間部や展開部を持つ曲、対位法を使った曲、静動の対比で構成され突如フォルテが爆発する曲、など。

作曲様式がシュニトケに近いと言われるように、調整的に安定した旋律と和声に、不協和的な響きが混在/並行している曲も多く、ややマイルドで毒気のないシュニトケを聴いているような気がしてくる。
緩徐部分での静謐さや、突如暴発的なフォルテでかき乱すように鳴らされる弦やピアノの強打もシュニトケの音楽を連想させる。静かに消え入るように終るところなんかも良く似ている。

旋律部分は、シュニトケよりもかなり叙情性が強くメロディアスなものが多い。
ピアノの使い方はシュニトケと良く似ていて、透明感のある高音の単音を静かに響かせたり、低音部の重苦しい響きをゴ~ンと鐘のように鳴らしたり、突如ピアノを強打させたり。
ピアニストだけあって、シュニトケがあまり使わないアルペジオも時々使っていて、色彩感や華やかさ、幻想性もあり、ピアノパートの響きは美しい。
シュニトケよりもピアノパートはかなり凝っているし、アウエルバッハの作品は現代音楽のなかでは好みのタイプなので、聴いていてもかなり楽しい。

No. 1 in C major (Adagio)
低音、高音を単音や重音を通奏低音のようにオスティナートで弾くピアノ。その上を、息苦しそうに少ない音を線的に引き伸ばすように旋律を弾くヴァイオリン。
静寂で和声が神秘的なので、綺麗な曲だと思うけれど、シュニトケの作品といわれても、納得するような構造の曲。

No. 2 in A minor (Andante) (Tempo di valzer)
ピアノの低音の強打が重苦しく響いて、”Tempo di valzer”とあっても全然ワルツ風ではなくて、行進曲かと聴きまちがいそうになる曲。初めは何かのパロディかと思った。

No. 3 in G major (Andante misterioso)
初めは可愛らしい雰囲気で始まるが、ヴァイオリンの音が変に軋んでいてどこか調子ハズレ。
ピアノの伴奏は低音が葬送行進曲のような重苦しく曖昧で不協和的な響きで、不気味さも漂う。
突如、ピアノが鐘を叩くように連打して終る。これもシュニトケのパロディ的な語法に近い気がした。

No. 4 in E minor (Allegro)
シュニトケの合奏協奏曲第1番の第4楽章のような疾走感と悲愴感があり、古典的な響きを感じさせる旋律が綺麗な曲。

No. 5 in D major (Allegro moderato)
ピアノの低音の連打と右手の華麗なアルペジオで始まり、その後にヴァイオリン・ソロでやや悲愴感のあるメロディアスな旋律が続く。
最後に、ピアノとヴァイオリンが協奏して華やかに終るという、ドラマティックで美しい曲。

No. 6 in B minor (Allegro marcato)
冒頭は、速いテンポで弾くピアノの左手の変則的なリズムをベースに、右手側の旋律とヴァイオリンの旋律が重なりあって、疾走感のある曲。
しばらくすると、テンポが落ちて静かで不可思議な叙情性のある旋律に変わるが、これもすぐに消えて、フォルテで壮大で憂いを帯びたワルツが登場し、最後にはピアノとヴァイオリンが追い込むようなテンポと勢いで激しく協奏して終るという、いろいろ錯綜した曲。

No. 7 in A major (Allegro moderato)
ピアノの和音の響きが重々しく、その上をヴァイオリンが短い音型をずっとオスティナートして、あっけなく1分も経たずに終る。

No. 8 in F sharp minor (Andante)
ピアノの左手低音部の音がやや不気味には響くが、哀感に溢れたとても美しい旋律と和声の曲。
主題の旋律は聴いたことがある気がして記憶をたどると、この旋律の一部は、モーツァルトのピアノ協奏曲第23番第2楽章冒頭でピアノが弾く主題に良く似ている。

No. 9 in E major (Allegro)
ヴァイオリンのピッチカートで弾く旋律が面白く、この旋律のパターンをピアノがフーガのように後から追いかけて弾いているという、とても短い曲。

No. 10 in C sharp minor (Allegro)
一貫してピアノが弾く左手低音部のオスティナートの伴奏が厳しい雰囲気を出していて、その上をヴァイオリンとピアノの右手の旋律が加わって、悲愴感に満ちた曲。

No. 11 in B major (Allegretto)
今までの曲とかなり雰囲気とつくりが違う。軽妙でどこかしら奇妙な感じのするやや不規則なリズムの旋律を、ヴァイオリンとピアノ(右手)が対位法的に弾いていく。左手はオスティナート的に同音連打が多い。
全て単音の旋律なので、響きはとてもシンプル。やや真面目な諧謔さのあるショスタコーヴィチ風という感じ。

No. 12 in G sharp minor (Adagio)
ピアノの左手は同音連打、右手が伴奏的な分散和音。ヴァイオリンはキリキリと神経質な雰囲気の旋律。

No. 13 in F sharp major (Allegro moderato)
ヴァイオリン・ソロが悲愴感のある旋律を冒頭から弾き、その後でピアノが重苦しい和音で入ってきて、悲愴感を強調している。

No. 14 in E flat minor (Presto)
ピアノとヴァイオリンとも、速いテンポの細かいパッセージを弾いているので、かなり疾走感と激しさのある曲。ピアノの左手側のリズムが、時々変則的になってジャズ風な雰囲気がする。

No. 15 in C sharp major (Adagio sognando)
静かでか細くに息の長いヴァイオリンの旋律に加えて、ピアノは左手低音部の不協和的なぼわ~んとした響きと、右手高音部のシンプルで透明感のある旋律と響きが美しく、幻想的な雰囲気がする曲。

No. 16 in B flat minor (Misterioso)
でたらめな音階練習をしているようなヴァイオリンの旋律はか細く、ピアノも左手が時折ボーンとなるくらい。シュニトケ風ともいえるが、どちらかというとペルトの方に近い感じがする。

No. 17 in A flat major (Vivo)
急降下するヴァイオリンの鋭い響きに、ピアノの左手強打と右手の下降スケールが加わって、一体何が始まるんだろうかという雰囲気で始まるが、すぐに静かになってピアノが重苦しく和音をぼんやりした響きで弾いている。最後は右手が短いフレーズを高速で何度もキラキラっと繰り返し、ヴァイオリンの不協和音のソロで終る。

No. 18 in F minor (Agitato)
この曲はピアノのウェートが大きい。特に、ピアノの幻想的な雰囲気のアルペジオが美しく、ヴァイオリンはその響きの波に呑み込まれまいとしているかのように力強いところがある。

No. 19 in E flat major (Moderato)
冒頭は、左手低音部のオスティナートが漠然とした響きで、右手の高音部の旋律は不可思議な雰囲気。その上をヴァイオリンがやや不安げに旋律を弾いている。気持ちが昂ぶるように徐々にクレシェンドし、ピアノも和音を多用して響きが厚くなっていくが、突如終息して、元通りの静けさに戻る。

No. 20 in C minor (Tragico)
前半は、ピアノが両手で弾くフォルテの和音で始まり、それを背景にヴァイオリンが悲愴感のある旋律をキリキリと弾いている。
後半になると、曲想が変わってピアノが弱音で調和的な美しい旋律を弾くが、そこにヴァイオリンも加わって不協和音が交錯し、突如、ガガーンとフォルテになったりと、シュニトケを連想するような構成。

No. 21 in B flat major (Andante)
ヴァイオリンのソロが、不安げな雰囲気のある旋律と重音を弾き、そこに音は少ないが重苦しいタッチのピアノの響きが加わってクレッシェンドして、最後は弱音のヴァイオリンソロに戻って終る。

No. 22 in G minor (Moderato serioso)
この曲も冒頭はヴァイオリンの不安げなソロ。ピアノ低音部はオスティナート的に単音がボンボンとなり、右手の旋律は、ヴァイオリンの弾く主旋律に対して対位法的な動き。これも弱音のヴァイオリンソロで終る。

No. 23 in F major (Andante)
密やかな雰囲気で旋律と和声が美しく、ほのかな叙情感を感じさせる曲。
ピアノの伴奏の左手部分は軽やかで柔らかい響きの和音、右手高音部は澄んだ響きの単音の旋律。ヴァイオリンは、全編終始儚げな旋律をか細く弾いているので、これが通奏音のように聴こえてくる。

No. 24 in D minor (Presto)
冒頭から急下降してから目まぐるしく動くヴァイオリンと、ガガーンと突如打ち鳴らされるピアノ。
ここが終ると、静かにヴァイオリンが息の長い旋律をか細く弾き、ピアノも弱音で和音のオスティナート。と思うと、また突如ヴァイオリンが急下降して冒頭のようなテンションの高い曲想に戻る。
これで終ったかと思うと、また静かになってピアノの柔らかい分散和音の上をヴァイオリンが弱音で弾き、今度はそのまま消えるようにヴァイオリンのソロで終っていく。
シュニトケ風の展開に似ていると思うが、ずっと叙情性の強い旋律と響きなので、シュニトケの曲よりはかなり聴きやすい。

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Author:yoshimi
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クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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