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アウエルバッハ/ヴァイオリン、ピアノと管弦楽のための二重協奏曲、《ルードヴィヒの悪夢》
ロシア出身の作曲家レーラ・アウエルバッハのホームページでは、アウエルバッハ作品のライブ録音を聴くことができる。
アウエルバッハの作品は、自身がピアニストだけあって、ピアノを使った作品は響きが多彩で綺麗に響くので、現代音楽のなかではかなり好きな作曲家。
静動の対比が鮮やかで、音の密度も高く、テンポやリズム感も良いので、わりとわかりやすい作風だと思うけれど、アウエルバッハの作品が日本で演奏されることは、たぶんあまり多くない。
彼女はオーケストラ・アンサンブル金沢(OAK)のコンポーザー・イン・レジデンスでもあり、ヴァイオリニストの諏訪内晶子とは友人同士(らしい)。
OAKの委嘱作品であるヴァイオリン協奏曲第2番は、岩城宏之指揮OAK&諏訪内晶子のヴァイオリン・ソロで2004年9月に初演されている。
(アウエルバッハのプロフィール)

アウエルバッハのホームページでは、全作品が聴けるわけではないが、それでもライブ録音がアップロードされている作品が結構ある。初演もかなり入っている。
彼女の作品を録音したCDはそれほど多くはないので、ホームページで音質の良いライブ録音がこれだけ聴けるのは貴重。
すでにCDリリースされている作品は、CDの試聴ファイルのあるサイトへリンクしているので、当然のことながら一部のみ試聴可能。

作品リストを見ると、バレエ音楽、管弦楽曲、室内楽曲(ヴァイオリン/チェロ&ピアノ、ピアノトリオ、弦楽四重奏曲など)、ピアノ独奏曲、合唱・声楽曲と、オペラ以外のジャンルはカバーしている。
管弦楽・室内楽曲・ピアノ独奏曲でライブ録音がアップロードされているのは、次の曲。

 DOUBLE CONCERTO FOR VIOLIN, PIANO AND ORCHESTRA Op. 40 1997
   Stuttgard SWRによる委嘱作品で、GluzmanとYoffeへの献呈。
   このライブ録音は2006年12月の初演。Boreyko指揮Stuttgard SWR、
   ヴァイオリンはGluzman、ピアノはYoffe。
  CONCERTO NO. 1 FOR VIOLIN AND ORCHESTRA Op. 56 2000/03
 SUITE CONCERTANTE Op. 60 2001
    クレーメル、バルティカ・カメラータとアウエルバッハ自身のピアノによる初演。
    ロッケンハウス音楽祭の20周年記念のための委嘱作品。
 SERENADE FOR A MELANCHOLIC SEA Op. 68 2002
    オーケストラ・アンサンブル金沢の委嘱作品で、クレーメルへ献呈。
 CONCERTO NO. 2 FOR VIOLIN AND ORCHESTRA Op. 77 2004
 PIANO TRIO Op. 28 1992/96
 24 PRELUDES FOR VIOLONCELLO AND PIANO Op. 47 1999-2008
 SONATA FOR VIOLONCELLO AND PIANO Op. 69 2002
 SYMPHONY No. 1 'CHIMERA' 2006
 SYMPHONY No. 2 'REQUIEM FOR A POET' 2007
 SONATA FOR VIOLIN AND PIANO NO. 3 2006
 LUDWIGS ALBTRAUM 2007
    第2回国際ベートーヴェン・コンペティションによる委嘱作品。
    音源はコンクールでのライブ演奏。



 DOUBLE CONCERTO FOR VIOLIN, PIANO AND ORCHESTRA Op. 40 1997
[ライブ録音の音声ファイル]

アウエルバッハはピアニストなので、ピアノ関係の曲が多いかと思ったら意外とそうでもない。
ピアノ協奏曲はないし、独奏曲もそれほど多くはないが、CDは何枚がリリースされている。
《ヴァイオリンとピアノ、管弦楽のための二重協奏曲》は、ヴァイオリンが主旋律を弾いていて、ピアノソロも時々入っている。オケは全体的にあまり目立たず、演奏していない時も多い。
ピアノパートはとても美しく響くように書かれている。和音とアルペジオを多用した厚みのある華やかピアノの響きには、クリスタルのような冷たい透明感がある。

《ヴァイオリンとピアノのための24のプレリュード》と同じく、この二重協奏曲も、協和音と不協和音を同時に響かせたり、弦楽の息の長い旋律、突然大音響が鳴り響いたりと、旋律の動きや和声の響きがシュニトケに似ているところがある。
シュニトケよりもずっと不協和音は控えめで美しい和声が多いので、調性感が強くなり、旋律も歌謡性の強いロマンティックな感じ。
1つの楽章のなかでも、緩急の変化を明瞭につけながらいろいろと展開していくが、それでも混沌・錯綜したところがなく、形式的にすっきりと整った印象。現代音楽にしてはとても聴きやすい方だと思う。
特に第2楽章は、両端楽章とは全く違ったタイプの旋律と雰囲気があって、古典的な典雅な響きと現代的な不協和な響きが混在したとても美しい曲。この楽章はシュニトケの曲を聴いているような気がしてくる。


第1楽章 Moderate
前半はヴァイオリン協奏曲のようにヴァイオリンのソロが目立つ楽章。
ピアノは伴奏的に入っているが、華やかさはあって、響きもとても美しい。
やがてオケが躍動感と急迫感のあるモチーフを弾いたり、その後にアルペジオを多用した華麗なピアノ・ソロがはいったりして、変化がわりと目まぐるしい。

第2楽章 Chorale Andate religioso
冒頭はオケが演奏するとても叙情的な旋律が流れるが、この主題旋律は、シュニトケの《Grass Harmonica》で使われた旋律に良く似ていて、古典的な典雅さと厳粛さがある。
その調和的な旋律に不協和音が混在していて、どことなく不安感を感じさせる。時々ヴァイオリンとピアノがオケを遮るように、不気味な響きの旋律を弾いている。
最後はヴァイオリンがキリキリと不安げな音を延々とヴィブラートさせているところに、オケがそれを覆いかぶすように主題を弾いて、ドラマティックに終る。

第3楽章 Vivace
ヴァイオリンとピアノのパートに比べて、テンポの速いところでは、オケのパートのリズムと旋律が、(吉松隆の交響曲のように)ポップというかロックというかちょっと雰囲気が違う気はする。
この楽章は主にヴァイオリンが主題を引き続けていて、ピアノはヴァイオリン・ソロの伴奏的なところが多い。
Vivaceにしては、ヴァイオリン&ピアノによる静かで動きの少ないパートがあちこちで挿入されていて、オケとは対照的。この部分は調性感はあまりないが、かなり叙情的なタッチで書かれていて、旋律と和声がとても美しい。



LUDWIGS ALBTRAUM 2007 [ライブ録音の音声ファイル]

《LUDWIGS ALBTRAUM》は、”LUDWIGの悪夢”という意味。LUDWIGとくれば、すぐに連想するのはベートーヴェン。
第2回ベートーヴェン国際コンクールの委嘱作品なので、当然ベートーヴェンをテーマにした曲。
ライブ録音は、コンクール時の参加者のピアノ・ソロがいくつか収録されている。
作曲経緯がないかと調べていたら、コンクールサイトでインタビュ記事があり、アウエルバックが解説している。
http://beethoven-competition-bonn.de/2007/en/preface_interview.html

-アウエルバッハは、成功した作曲家ベートーヴェンには共感できなくて、逆に彼のいろいろな欠点にや失敗の方がとても人間的に思えるという。ベートーヴェンの肖像画は、彼のもじゃもじゃな眉毛が不幸な瞳に影をおとして、額には汗が光っている。一体彼はどんな夢をみたのだろう?
-”Ludwigs Alptraum”では、夢の出来事のように、相互に関連していない要素が突然つながりあっているのが明らかになり、独自の関係性と時間性/無時間性を持つ奇妙な歪んだ現実のなかで同時に存在しているように見える。
-全ての芸術は夢のなかからしか生まれない。夢は象徴の塊であり、夢が記憶に残っていればそれが理解できる、etc.

《LUDWIGS ALBTRAUM》はとても幻想的な曲。
多彩なピアノの響きがとてもファンタジックで、悪夢のなかに現れる不吉さ、不安、切迫感などの要素を象徴したような感じ。
はじめは、曖昧模糊とした響きで幻想的な雰囲気が強いが、徐々に不安に駆り立てられ、何かに追われているような焦燥感や恐怖感のような雰囲気に変わる。左手のバスのオスティナートが不吉でとても効果的。

tag : アウエルバッハ ベートーヴェン

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yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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