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ツィンマーマン&パーチェ ~ バッハ/ヴァイオリンソナタ全集(ライブ録音/DVD)
NHK-BSで以前放映していた『ツィンマーマン/パーチェのヴァイオリン・ソナタ全集』をYoutubeで一部だけ見たところ、かなり良い内容だったので、早速それと同じ内容のDVDを購入。

このDVDは本編のライブ録音が1時間半。ドキュメンタリー(特典映像)が1時間。
ライブ録音は、2008年5月にドイツのポリング修道院図書館で収録されている。
ドイツでも有数のバロックホールらしく、古典的な宗教絵画が天井に描かれた自然光の射し込む白壁のホールがとても美しく、この曲集の雰囲気にとても似合っている。
収録には3日間かけていて、どちらかというとリサイタルのライブ録音というよりは、公開録音という雰囲気がする。ライブ特有の雑音がなく、ヴァイオリンとピアノの音も綺麗で、映像もいろいろな角度と距離から撮影して画面も細かく切り替わるので、視覚的にも単調にならない。

Sonatas for Violin & Piano Bwv 1014-1019 (Ws) [DVD] [Import]Sonatas for Violin & Piano Bwv 1014-1019 [DVD] [Import]
(2009/05/26)
Frank Peter Zimmermann(violin), Enrico Pace(piano)

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このDVDは輸入盤のみ。リージョンALLだし英語字幕があるので問題はないが、英語で話している場合は英語字幕が出ない。だいたい言わんとしていることはわかるとはいえ、やっぱり字幕があった方が良い。
映画だと英語を話していても英語字幕がでるので、英語の勉強に良く使っていたが、こういうドキュメンタリーの場合は違うらしい。

DVDのプロモーション用映像(Youtube)
 (流れている曲は、第1番第2楽章、第3番第3楽章(とても美しい曲です)、第6番第5楽章のフィナーレ)


 ヴァイオリン・ソナタ全集のライブ映像

ツィンマーマン&パーチェは、このライブ録音の半年前(2006年11月)にも、ヴァイオリン・ソナタ全集をスタジオ録音している。
両方の演奏を聴くと、緩徐楽章はライブ録音が全体的にややテンポが遅め。アクセントの付け方の強さが少し違ったりと細かいところで違いはあるが、基本的には大きな違いない。
ピアノの音も録音条件(ホール、調律の違いなど)のせいか、スタジオ録音は丸みのあるコロコロとした音でライブ録音より残響がやや長め。ライブ録音も似たような音だけれど、ピアノの音はより柔らかい響きでとても可愛らしい音。液晶テレビで見ながらヘッドフォンで聴くと、音が間近で鮮明になってかなり良い音がする。

ライブ録音は、映像でみる限りではスタインウェイを使っているが、コンサートホールのライブ録音よりは、音色と響きがずっとマイルドで落ち着きがある。
パーチェの弾き方は、柔らかなノンレガートでコロコロと粒の揃った丸みのある音が軽やか。
ノンレガートでも、スタッカートに近いタッチと、レガートに近いタッチ、その中間くらいのタッチと数種類のノンレガートを弾きわけているので、音色と響きが多彩で表情も豊か。
緩徐楽章だとレガートで弾いていることが多くて、柔らかいピアノの響きがとてもまろやかだし、特に弱音と高音の響きが美しく、ツィンマーマンのストラディバリウスの絹のような滑らかで品の良い音色に良く似合っている。

このソナタのなかでは、第3番の第4楽章、第4番の第3楽章、第6番の第5楽章が好きなので、何度見ても全然飽きない。やっぱり映像で見る魅力というのは強い。

収録上の都合か、この曲の演奏ではいつもそうしているのか(そんなことはないだろうが)、なぜか“譜めくリスト”がいない。
パーチェが自分で譜めくりしているが、あやうく譜めくりしそこねそうになったところがあって、ピアノを弾きながら片手で譜めくりするのは、結構タイミングが難しい。

第2番の第4楽章は弾いていて思わず微笑んでしまうようなとても可愛らしい曲想。2人ともリラックスして楽しそうに弾いている(パーチェの方がずっとニコニコしているけど)。リピートした初めのところで、2人がちらっと視線を交わしてにっこり。

第3番の第4楽章は、スタジオ録音の方がフォルテやアクセントの付け方が穏やか。ライブ録音の方はややテンポが速めで、起伏もはっきりとつけている。

第4番の第3楽章はだいたいスタジオ録音と同じくらいのテンポのピアノ・ソロで始まる。スタジオ録音はテンポが徐々に上がっていって、終盤になるとやや気ぜわさを感じるので、どちらかというとライブ録音くらいのテンポが良い気がする。
ツィンマーマンは前半部の終わりでリピートに差し掛かるところで、ピアノの方にかがみながら弾いているが、ほんの一瞬パーチェに何か言っているような雰囲気。やっぱりテンポが遅いと感じたのか、”もう少し速く”とでも言ったのかも。リピートで冒頭に戻って、ヴァイオリンが弾き出すと、ピアノもヴァイオリンも一緒にテンポを少し上げていた。
ピアノのパーチェはこのあと何回かツィンマーマンの方をちらちら見ながらピアノを弾いている。多分、このテンポで良いのかどうか、確認しながら弾いているんじゃないかと思う。それでも、それほどセカセカしたテンポにならずに、ちょうど良い速さで終わりまで弾いていた。

ライブ映像は、ピアノのパーチェの表情が曲想によってコロコロ変わっているのが面白い。
第3番の第4楽章で、優しげな三連符のレガートの旋律から急にフォルテで短調に転調したところで、チンマーマンを見て、急に引き締まった表情になったり、第4番の第4楽章や第6番の最終楽章で楽しげな表情で弾いていたりと、ツィンマーマンがとてもマジメな表情で弾いているのと対称的。
第2番の第4楽章はとても可愛らしい曲想で、聴いていても楽しいし、演奏者もそういう気分になるらしい。演奏中に2人がちらっと顔を見合わせて、ニコっと微笑んでいるところが映っていたりする。

第6番の第5楽章は、やや落ち着いたタッチのスタジオ録音よりも、ライブ録音の方がテンポが速めで、弾むように生き生きして、ずっと良い感じ。
最後に主題部分が再度現れるフィナーレのところは、パーチェが”とうとうフィナーレだよ!”とでも言うように、ピアノを弾きながらツィンマーマンに笑顔を向けると、ツィンマーマンもそれに気づいて振り向き加減にパーチェを見やって、ヴァイオリンを弾きながらニコリと笑っている。
ライブ特有の緊張感があったので、コンサートも終わりにさしかかると、やっぱり開放感と高揚感を感じるのかもしれない。

曲がクライマックスになったり、情感を深く感じさせるような部分になると、2人が同じような身体の動きをすることも多い。演奏者が曲を通じてシンクロしているのがいろいろなシーンで見れるので、ソロとは違った室内楽の演奏映像を見るのは面白い。



 ドキュメンタリー 『Bach and Me』

ドキュメンタリーの方は『Bach and Me』というタイトルで、ツィンマーマンがバッハについていろいろ語るところがメイン。
ライブ録音の映像がドキュメンタリーでも一部重複して収録されている。当然本編を見るのだから、その映像よりは他の曲のライブ映像をたくさん収録しておいてくれた方が良かったとは思う。
バッハ以外の話も結構多くて、7年近く弾いているストラディバリウス、弦楽トリオ、シベリウスの協奏曲などに関するツィンマーマンの話と映像も収録されている。

特にシベリウスの協奏曲に関する話が面白く、子供の頃にシベリウスの協奏曲を弾いては、まだ早すぎると両親に怒られたとか、若い頃に集中して弾いて以来弾いていないかったが最近再び弾き始めて、昔とは弾き方がずいぶん変わったとか、etc.。
ライブ映像が一緒に収録されていて、パリでの弦楽トリオによる室内楽や、シベリウスのヴァイオリン協奏曲のロンドン公演の様子が、少しだけ映っている。
珍しい映像は、ロンドンでアンコールに弾いたパガニーニ編曲の英国国歌。ただし、収録されているのは、主題と最終楽章だけ。アンコールなので、抜粋して弾いたのかも。
英国国歌といえば、ベートーヴェンが《”God Save The King"の主題による7つの変奏 WoO.78》という変奏曲を作曲している。創作意欲を刺激される曲なのか、編曲に使いやすい旋律なのか、ブリテンも編曲していたし、他にも探せばいろんなバージョンがあるに違いない。
シベリウスのコンチェルトは、ツィンマーマンがヤンソンス指揮フィルハーモニア管の伴奏で若いときに弾いたスタジオ録音のCDを持っているけれど、ややシャープさ強くでて尖った感じがする。そのうちSONYから再録音がリリースされるのではないかと期待してしまう。

本編とドキュメンタリーで2時間半のDVDなのでコストパフォーマンスも良く、ドキュメンタリーもいろんな話が盛り込まれて面白い。
今まで買った音楽DVDの中では一番面白いし、音も綺麗で演奏内容も素晴らしく、飽きもせずに何度も見て(聴いて)いる。


<参考情報>
フランク・ペーター・ツィンマーマン&エンリコ・パーチェ:オール・バッハ・リサイタルの演奏会評
"ヴァイオリンとピアノでたどるバッハの対位法" (ニューヨーク・タイムズ 2011年10月13日) アラン・コージン

tag : ツィンマーマン パーチェ バッハ

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見ていました
こんにちは。

いつも見るわけではないのですが、NHK-BSでツィンマーマンのバッハ/ヴァイオリン・ソナタを見ていました。

よかったですね!記事を拝見し、記憶がよみがえってきました。
曲も演奏も素晴らしくて
よんちゃん様、こんにちは。

このBSの番組を見た方は結構いらっしゃるようで、いくつかのブログ記事でも取り上げられていて、かなり評判が良かったです。

別録音のCDも持っていますが、やはり映像の魅力は格別です。
演奏もとても良かったですが、曲自体が素晴らしいものですね。鍵盤楽器曲よりも曲想が自由で、情感豊かに感じます。パルティータ全集と同じくらいにお気に入りの曲集になりました。
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yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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