ペライア ~ バッハ/バルティータ第1番 

2009, 10. 16 (Fri) 18:04

ペライアの最新盤は、バッハの『パルティータ集 Vol.2』。
Vol.1は1年半くらい前にリリースされていて、第2,3,4番の3曲が収録されている。ようやく残りの3曲(第1,5,6番)の録音が9月に入ってリリースされた。
指の故障の再発(らしい)で数年間休んでいたらしく、復帰第1弾の録音がVol.1。このVol.2は3番目のリリースで、故障の影など感じさせない安定した弾きぶり。

同じ頃にシフのパルティータ全集の最新盤もリリースされていたが、期待どおりの素晴らしい演奏。でも、シフのバッハは、チェンバロの演奏スタイルをピアノで聴いているような気がするし、いつも作為的な感じがつきまとうので、どうも好きにはなれない。
結局、聴くのはもっぱらアンデルジェフスキとペライア。
ペライアは、シフのように磨きぬかれた繊細な音色の美しさとか、装飾音や細部の表現に神経を張り巡らしたような凝ったところとかはないので、かなり地味。
旋律の流れのなかで緩やかな起伏を付けていくほうなので、それほど強弱のコントラストも強くはなく、盛り上がりやドラマティックさは薄い。
それでも、ペライアの明るく暖かみのある響きはとても心地よく、素朴というか大仰さのないシンプルな演奏を聴いていると、とても和やかな気持ちになってくる。
そもそもペライア弾くバッハが好きな人は、強い癖のないごく自然な音楽の流れと、柔らかくて温もりのある響きが気に入っているに違いない。

Bach: Partitas No. 1, 5 & 6Bach: Partitas No. 1, 5 & 6
(2009/09/01)
Murray Perahia

試聴する(国内盤にリンク)


パルティータを聴くときは第1番が多い。この長調で明るく優しい雰囲気の第1番は、ペライアの美しいレガートと柔らかい響きがとても似合っている。
ペライアらしく滑らかなレガートで旋律の流れがよどみなく、ノンレガートは柔らかいタッチなのではじけるような躍動感は強くはないが、丸みのある柔らかい響きで落ち着きがある。
一見あまり凝った工夫はしていないように聴こえるけれど、細部まで丁寧に弾いていて、響きの強弱のグラデュエーションや長さのコントロールが良くきいている。
タッチの違いで声部ごとの音色や響きが変わるので、自然に声部がきれいに分かれて聴こえてくる。副旋律を弾く左手声部の弱音がとても柔らかく、さりげないけれど表情はとても豊か。
レガートなタッチなので元々響きが長く残る方だけれど、響きが重なって混濁することがないように響かせているし、時々ペダリングで響きを伸ばしている音もとても効果的。
装飾音をいろいろ入れているが、旋律の一部のようにさりげない入れ方なので浮き立つことなく、流れを遮らないところが。

プレリュードは、柔らかい響きのレガートがとても綺麗で、滑らかな抑揚で弾く旋律がとても優しい。わりとゆっくりめのトリルが柔らかく、旋律の一部のように聴こえてくる。

次のアルマンドはちょっとゆっくりめのテンポで、ややノンレガートを交えた柔らかいタッチ。躍動感は抑え気味で、しっとりとした響きの落ち着いた弾き方。ささやくような弱音の響きがちょっと儚げでとても綺麗。
時々左手のフレーズ最後の音をかすかな響きで余韻を長く響かせているのが印象的。

クーラントはノンレガートが中心。シフのように飛び跳ねるようなタッチではなく、ちょっと丸みのある響きがとても優雅。時々入れるトリルは、アルマンドの時よりも素早くて可愛らしい響きがさりげないアクセントになっている。

サラバンドはとても穏やかで、静かに語りかけるようなトーン。それほど大きな起伏をつけいていないので、清々しくさらっとした叙情感が心地良い。

メヌエットも、柔らかいノンレガートで、ゆったりとしたテンポ。可愛いけれど、ちょっと奥ゆかしさのある品の良いメヌエット。

最後のジーグ。ここを猛スピードで弾いているピアニストは結構いるが(グールドとアンデルジェフスキは滅法速い)、ペライアは全然メカニカルに聴こえないくらいのさほど速くはないテンポ。
右手のメカニカルな声部はとても柔らかい弱音なので、左手が弾く主旋律のリズムがくっきりと聴こえる。左手は2つの声部のタッチと響きを変えているので、とても鮮やかに2声に分かれて聴こえてくる。

アンデルジェフスキのパルティータは曲ごとの性格づけと強弱のコントラストが明瞭で、全曲を通して聴くとかなりドラマティックな流れ。
それに比べると、とても穏やかなトーンで音楽が空気のように自然に流れていくような感じがするのがペライアらしいところ。第1番を聴いていると自然と穏やかな気持ちになってくる。

タグ:バッハ ペライア

※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。

0 Comments

Leave a comment