*All archives*



スティーヴン・ハフ ~ リスト/スペイン狂詩曲
スティーヴン・ハフのVirginレーベル時代の作表作の一つが『リスト/ピアノ作品集』。
選曲がかなり個性的で、人気のある《超絶技巧練習曲》からは1曲もなく、主に《巡礼の旅》(第2年と第3年)、宗教的な色彩の濃い作品、晩年の作品からの選曲。

さすがにピアニスティックな曲として《メフィスト・ワルツ》や《スペイン狂詩曲》くらいは入れているけれど、リスト作品集としては、ヴィルトオーゾ性よりも音楽的な内容の濃い選曲というところが、技巧優れて叙情的表現も豊かなピアニストのハフらしい個性的なアルバム。
リストというと、まず《超絶技巧練習曲》を録音する人が(特に若手の新人さん)多くて、この曲集が好きではないのもあっていい加減辟易するものがあり、これも話題性とセールス上の理由から仕方がないのだろうとは思うけど。

リストのラプソディとくれば、一番先に思い浮かぶのはたぶん《ハンガリー狂詩曲》。
弾き映えのする華やかな曲だけれど、この曲集はあまり好きにはなれないタイプの曲。(あの舞曲的なところがどうも相性が良くないようなので)
同じラプソディでも、《スペイン狂詩曲》の方は、なぜか一度聴いただけで好みにぴったり。
序奏のちょっとオドロオドロしいオープニングから、哀愁を帯びたロマンティック主題に変わり、華やかで舞曲風の旋律は、真紅の鮮やかな情熱がほとばしるようで、やや東欧的な暗めの色調を(私は)連想してしまうハンガリー狂詩曲とは違っている。

 スペイン狂詩曲の作品解説(ピティナ)
 スペイン狂詩曲の楽譜ダウンロード(IMSLP)


この曲は人気があるので録音はいろいろあるだろうけれど、よく聴くのはハフの1987年のスタジオ録音。
キーシン(1990年/カーネギーホールのライブ録音)とベルマン(1956年/ライブ録音)の演奏も好きだけれど、雰囲気がちょっと違っていて、キーシンは全体的に開放感と明るさがあり、べルマンは熱気と勢いがあって良いけれど音質が悪いのがちょっと残念。

ハフの打鍵は細部まで鋭く精密。演奏は完璧にコントロールされた精巧さがあり、スケールやアルペジオの流麗さは言うまでもなく、厚みのある和音移動でも軽快でよどみなく流れていくところが華麗。
ハフの演奏を聴いていると、さらさらと弾いているのでそんなに力技には思えないけれど、楽譜を見るとその指さばきの鮮やかさがよくわかる。
両手の重音が三連符で音を変えながら移動していくところとか、両手ともオクターブのスケールが続くところとか、とにかくリストらしいピアニスティックな技巧ば満載。
ハフは、音の階層の豊富さと微妙な響きがよくコントロールされていて、この録音の音質だとハフのタッチが一音一音細部までくっきりと明瞭に聴こえる。
この冴えた技巧をベースに、ハフらしく情緒的ではないクールで繊細な叙情表現と、この曲自体のもつ推進力と緩急のコントラストがよく効いた情熱的な曲想とが相まって、ぴんと張り詰めた緊張感とパッショネイトな雰囲気は十分。
特に前半部分は細かなルバートはかけてはいるけれど、弱音のタッチが柔らかく表現に繊細さがあるので、情熱的な感情表現はやや抑えぎみ。その分ためがよく効いて、徐々に盛り上がっていくところの高揚感が抜群。


ハフのスペイン狂詩曲(冒頭部分)(Youtube)



キーシンの1991年東京でのリサイタル(Youtube)

このスペイン狂詩曲の演奏は、20歳と若い頃のライブだったせいか、初めからかなりの熱気と迫力。自由奔放で情熱的な”スペイン”のイメージで、カーネギーホールのライブ録音よりも、ずっとテンションが高い気がする。ハフとはちょっと違ったタッチだけれど、この演奏も素晴らしく素敵。
バッハ=ブゾーニの《シャコンヌ》の録音を聴いて以来、キーシンのCDコレクターになったくらいに、20歳代の頃のキーシンの演奏は凄かったと今でも思う。(最近はちょっと壁に突き当たっているような気がするけど)


                             

Liszt: Mephisto Waltz; Après une lecture de Dante; Les jeux d'eau à la Villa d'EsteLiszt: Mephisto Waltz; Après une lecture de Dante; Les jeux d'eau à la Villa d'Este
(1998/01/01)
Stephen Hough

試聴する(英amazon)[track3]

スティーブン・ハフはVirginとHyperionにリスト作品の録音をしている。
このVirginの2枚組の廉価盤は素晴らしい出来で、針のようにシャープで精密なハフの打鍵がくっきりと鮮やか。まるでレントゲン写真を見て(聴いて)いるような感覚がする。といっても、圧倒的な技巧で聴かせるのではなく、音楽的な表現で聴かせるところがハフの良いところ。
これだけの演奏がわずか千円足らず(私が昔買ったときはそのくらいの価格だった)で聴けるというコストパフォーマンス抜群の廉価盤。
CD1は、リストのピアノ曲のなかで技巧的に有名な作品と宗教的な曲を収録(1987年録音)、CD2はリスト晩年の作品が中心(1990-91年録音)。

<DISC1>
1.メフィスト・ワルツ第1番(「村の居酒屋での踊り」S.514)
2.タランテラ(「巡礼の年 第2年補遺"ヴェネツィアとナポリ"」S.162より第3曲)
3.スペイン狂詩曲 S.254
4.死者の追憶(「詩的で宗教的な調べ」S.173より第4曲)
5.小鳥に説教するアッシジの聖フランチェスコ(「伝説」S.175より第1曲)
6.孤独のなかの神の祝福(「詩的で宗教的な調べ」S.173より第3曲)

<DISC2>
1.アヴェ・マリア(「詩的で宗教的な調べ」S.173より第2曲)
2.エステ荘の糸杉に寄せて-葬送歌(第1)(「巡礼の年第3年」S.163)
3.エステ荘の糸杉に寄せて-葬送歌(第2)(「巡礼の年第3年」S.163)
4.エステ荘の噴水(「巡礼の年第3年」S.163)
5.瞑想 S.204
6.悲しみのゴンドラ 第1稿 S.200/1
7.悲しみのゴンドラ 第2稿 S.200/2
8.ダンテを読んで-ソナタ風幻想曲(「巡礼の年第2年"イタリア"」S.161)
9.アヴェ・マリア(ローマの鐘)S.182

tag : キーシン フランツ・リスト スティーヴン・ハフ

※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。
Secret
(非公開コメント受付中)

スペイン狂詩曲は私も好き♪
私も、ハンガリー狂詩曲はさほどではないのですが、スペイン狂詩曲は大好きで自分でも練習しました。
この曲の演奏はなかなか気に言ったものが見つからなくて・・・。キーシンは素晴らしい演奏家だと思うのですが、この演奏は、以前に聴いた時も、符点のリズムの取り方と力で押していくような弾き方があまり好きになれませんでした。
でもハフの演奏は気に入りました。冒頭の部分だけですが、とても好きな弾き方です。あの後の舞曲の部分はどんなふうに弾かれているのか興味深々ですね。
これは全部聴いてみなくてはいけませんね。
ハフのリストはとってもおすすめです
マダムコミキ様、こんにちは。

この曲は聴くだけなので、弾き方についてはさほどこだわりはないのですが、若い時のキーシンは直球勝負みたいなところがあって、灼熱のスペインを連想されるような情熱的なところが好きですね。(こういうのは好みの問題なので)

ハフはずっとクールですが、緩急のテンポが微妙に揺れたり、弱音で勢いを少し緩めたりと、単調にならないように細かく工夫をしているように思います。
もともとロマンティックな人なので(ラフマニノフの第2番やブラームスの第1番のコンチェルトを聴けばよくわかります)、ためがよく効いて盛り上げ方も上手いですね。
この曲に関しては、キーシンよりも表現が凝っていて、聴いていても面白い演奏です。

ハフのリストアルバムは選曲・内容ともとても優れた録音だと思っていますので(それに安いですし)、とってもお薦めです。
カレンダー
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
ブログ内検索
最近の記事
最近のコメント
カテゴリー
タグリスト
マウスホイールでスクロールします

月別アーカイブ

MONTHLY

記事 Title List

全ての記事を表示する

リンク (☆:相互リンク)
FC2カウンター
プロフィール

yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

お知らせ
ブログ記事はリンクフリーです。ただし、無断コピー・転載はお断りいたします。/ブログ記事を引用される場合は、出典(ブログ名・記事URL)を記載していただきますようお願い致します。(事前・事後にご連絡いただく必要はありません)/スパム投稿や記事内容と関連性の薄い長文のコメント、挙動不審と思われるアクセス行為については、管理人の判断で削除・拒否いたします。/スパム対策のため一部ドメインからのコメント投稿ができません。あしからずご了承ください。