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シサスク/スパイラル・シンフォニー(渦状銀河交響曲)
今年は世界天文年なので、最近は宇宙にちなんだ曲をよく聴いている。
宇宙にちなんだ曲といえば、ポピュラーなのがホルストの《惑星》。この曲はずっと前に書いたことがあるし、有名すぎてまた何か書こうという気が起こらないので、それよりもあまり知られていない曲でも結構面白いものがいろいろある。

グラナドスの《星々の歌》はピアノ独奏付き合唱曲で最近初録音されたし、このシサスクのピアノ作品やジョージ・クラムの《マクロコスモス》は、現代音楽らしい面白さがある。
シサスクとクラムの曲はピアノの音が綺麗で幻想的で、旋律やリズムはイメージ喚起力が強くて、聴いているといろんな星や星雲のイメージが浮かんでくる。音でできた写真を見ている(聴いている)ような気分。

1960年生まれのウルマス・シサスクは、エストニアの若手作曲家。
彼は子供の頃から天体観測に興味を持ち、今ではアマチュア天文学者としても知られている。
そのせいか、14歳の時に作曲したピアノ曲《星の組曲(カシオペア座)》を始め、《Starry Sky Cycle》(邦題は「銀河巡礼」)、《Starry Sky Cycle Southern Skies》、《Cycle of Piano Pieces“Spiral Symphony” for 4 Hands》など、宇宙をテーマにした曲が多いので有名。

録音はそれほど多くはなく、10年以上前に北欧音楽が一時流行ったときに、Finlandiaがリリースしたのが、ピアノ組曲の《銀河巡礼》(以前に書いた記事)。
それ以外で国内盤が出ているのは、《星の組曲》(『音楽と物語の世界~ぞうのババール~』に収録)くらいだろうか。
輸入盤だといくつかシサスク作品のCDが出ているが、《Spyral Symphony(渦巻銀河交響曲)》は、ピアノ独奏曲ではなく、4手のピアノのための作品。
同じく宇宙をテーマにしたクラムの《マクロコスモス第4巻~天界の力学》も、ピアノ連弾曲集だった。

Gavrilin/Sisask:Spirale Sym Etc.Gavrilin/Sisask:Spirale Sym Etc.
(2000/05/26)
Fany Solter(piano),Eva-Maria Rieckert(piano)

試聴する(米国amazon)


 Cycle of Piano Pieces“Spiral Symphony”op.68 for 4 Hands (1999)

タイトルに、NGC番号やメシエナンバー(M)まで正確に入れているのが面白い。
固有名詞がついていないと、番号でしか銀河を特定できないからだろうけれど、”ケフェウス座の網状星雲”程度に省略しなかったところが、さすがにアマチュア天文学者らしい几帳面さ。
このM***という記号をみると、すぐに思い浮かぶのが”M78星雲”(ウルトラマンの故郷の星)。幼少期の記憶の定着度は凄い。


1. ケフェウス座 NGC 2276銀河(網状星雲)
中~高音域の単音のオスティナートやアルペジオが高速で交錯し、星雲のなかでいろいろな物質が飛び交っているようなイメージ。とてもファンタスティックで和声の響きが美しい。
最後は全ての活動が収束して一転に凝縮したような和音のユニゾン。

2. 猟犬座 M51銀河(凝縮した二重渦状銀河“子持ち銀河”)
2つの異なるリズムの旋律が並行して演奏される。
二重渦状の銀河のイメージらしく、低音&中音、高音域の異なる2つの旋律が融合することなく、ミニマル的に繰り返される。
最後は2つの旋律が、別のパターンの旋律を順にカノン風に弾いていく。低音だけは相変わらずボーンボーンと鳴り続けている。

3. 髪の毛座 M64銀河(~眠れる美~不安定な渦状銀河“黒眼銀河”)
絶え間なく弾かれる右手のアルペジオとそこに重なる和音が躍動的で、響きもとても美しく幻想的。
最後はどこなく不安げなリズミカルな和音の旋律。ユニゾン~重音~単音へと響きが薄くなって、ディミヌエンドして終る。

4. 炉座 NGC1365銀河(棒渦状銀河の平和)
静かにスケールのユニゾンで高音域から下降してくる旋律と、その合間に弾かれる低音の4音で構成される旋律が、ずっと繰り返されるのみ。
たしかに何の変化もないので、平和といえば平和だが、色調は暗めで沈鬱な感じもする。

5. 獅子座 M66銀河(渦状銀河の混乱)
高音で柔らかい響きの細かいパッセージが絶え間なく弾かれるなかを、中音~低音域で和音による旋律が弾かれ、この両方の響きが混ざり合って混濁していく。たしかにカオス的な雰囲気はする。

6. 大熊座 M81銀河(巨大渦状銀河)
低音がミニマル的な旋律をずっと引き続け、これが不吉なものが迫りくる足音のようでかなり厳しい雰囲気。
その上を中~高音域で、複数の断片的な旋律を繰り返し弾いている。この曲はテンポも速めで、動きの多い旋律なので、躍動的。和声はとても綺麗な曲。
徐々にクレッシェンドされていき、重音が増えていくので、渦が徐々に大きくなっていくような感じはする。

7. 大熊座 M101銀河(分離した渦状銀河“回転花火銀河”)
レクイエムのような悲愴感のある旋律がミニマル的に繰り返される。低音は同一音のオスティナートのみ。一群の旋律の最後に小休止が置かれて、また初めから繰り返される。

8. はるかなる乙女座銀河団(渦状銀河のパレード)
おとめ座らしく、高音域の旋律は蝶々があちこちで舞っているようなイメージで、珍しく可愛らしい雰囲気。拍子をとるように低音~中音域でゴーン、ゴーンと鳴っている。
全体的に響きが柔らかく、パレードにしては、とてもおしとやか。

9. 渦状銀河フィナーレ
アタッカで同じ旋律がしばらくそのまま弾かれているが、この曲に入ると声部が追加されて、トランペットが静かに鳴っている音が、同一リズムでオスティナートされる。
まるでラヴェルの《ボレロ》のように、曲が徐々にクレッシェンドされていきタッチも力強く明瞭になって、こっちは本当のパレード風に華やか。
最後はディミヌエンドされて、ゴーンという響きで静かに終る。

クラムのような電気的に増幅したアンプリファイド・ピアノは使っていないので、聴覚的な刺激性は少ないが、内部奏法(弦をはじく、弦を押さえて鍵盤を弾く、弦をグリッサンドする、弦を手のひらでたたく、etc.)は使われている。
内部奏法を使うと色彩感が増すので、ピアノの音の響きがカラフルで美しく、旋律もわりとメロディアス。ファンタジックではあっても、神秘主義的とも評されるクラムのようなアクの強さはなく、どこかしら青白く冷たい透明感が漂っている。

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クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
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