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ローレム/11の練習曲、6楽章のピアノ・コンチェルト
ネッド・ローレムは歌曲で知られている作曲家。交響曲や協奏曲、室内楽曲も数は多くはないが、いろいろ残している。
初めて聴いたのは、たまたまカッチェンのモノラル録音集に収録されていたピアノ・ソナタ第2番。これがなかなか良くて、他の曲を聴こうと探してみても、録音がそれほど多くはない。
その中では、ピアノ協奏曲第2番はプーランクとガーシュインの影響を感じさせるので、わりと聴きやすい。この曲は、パリ在住時代、ローレムの友人だったカッチェンをイメージして作曲したので、技巧的にも華やかで、カデンツァがやたら長いのが面白い。
 ローレム:ピアノ・ソナタ第2番の記事
 ローレム:ピアノ協奏曲第2番の記事


ピアノ協奏曲は、この他に《左手のためのピアノ協奏曲》、《6楽章のピアノ・コンチェルト》が録音されている。
《左手の...》は右手を故障したレオン・フライシャーの録音(これは未聴)、《6楽章の...》はジェローム・ローウェンタールの録音がそれぞれ残っている。
管弦楽曲でもピアノが入っているのは《11人の演奏家のための11の練習曲》(1959年)。

《6楽章のピアノ・コンチェルト》と《11の練習曲》がカップリングされた珍しいCDがFirst Editionからリリースされている。
Ned Rorem: Eleven Studies for Eleven Players; Piano Concerto in Six MovementsNed Rorem: Eleven Studies for Eleven Players; Piano Concerto in Six Movements
(2004/02/10)
The Louisville Orchestra, Robert Whitney, Jorge Mester, Jerome Lowenthal

試聴する(米国amazon)



 《11人の演奏家のための11の練習曲 Eleven Studies for Eleven Players 》(1959年)

楽器は11種類あるが、楽章によって使われる楽器が違うので、奏者によって演奏する楽章の数が違う。フォーマットとしては、ソナタ、トリオ、カルテット、室内オーケストラ。
第1楽章でトランペットにより主題が提示され、続く第2楽章と、最後の4つの楽章は変奏曲形式になっている。
全般的に管楽器が旋律、伴奏側両方によく使われているが、第4楽章と第7楽章は、ピアノ、ハープ、弦楽器主体。第6楽章はパーカッション2台のみ。
似たような曲想の楽章があっても、楽器編成が違っていると、色彩感や響きが変わるので、結構バラエティがあるように聴こえる。
解説では、この形式と曲想が色とりどりに変わっていく作風を"Musical Soda-Fountain(ソーダスタンド)"なんて喩えている。管楽器が目立つ曲が多くて、その音色が好きな人なら、わりと面白く聴けそう。
ハープの出番は少ないけれど響きが綺麗で、弦楽+ハープ+ピアノの組み合わせた時の響きが一番好みに合っている。

Ⅰ Prelude (11 players:trumpet solo)
冒頭は新古典主義のストラヴィンスキーの《カプリッチョ》かと思えたような打楽器の”パンパン、パン”という連打&ピアノの低音の”ガ~ン”。
この短いフレーズが何度か繰り返されていくのを背景に、トランペットのソロが延々とアンニュイな雰囲気の旋律を引き続けている。
アメリカの現代音楽で良く感じる乾いた叙情感が漂って、黄昏たような雰囲気がする。

Ⅱ Allegretto (9 players)
ピアノの伴奏を背景に、管楽器にパーカッションが、同じ旋律をカノンように順番に弾いていく。
やや不協和的だが楽しげな雰囲気の旋律で、ここもストラヴィンンスキーみたい。

Ⅲ Bird Call (4 players:flute solo)
ゆったりとした静かな曲想で、フルートのソロは、暗い森のなかで鳥が寂しく歌っているようなイメージ。

Ⅳ The Diary (6 players)
過去を振り返るような懐かしさを感じさせる旋律を、弦楽とハープに管楽が弾いている。こういう曲想はやはり弦楽だと情感豊か。

Ⅴ Contest (5 players:trumpet and clarinet solos)
trumpetとclarinetがミニマル的な旋律をカノン風に繰り返し弾き、ピアノがリズムセクションがわり。

Ⅵ Invention for Battery (2 players)
ジャズ風で、パーカッションがいろんな音をランダムに立てて、リズムだけで成り立っているような曲。テンポがゆったりしているので、音の隙間が多い。

Ⅶ In Memory of my Feelings (10 players:cello solo)
これも叙情的な曲で、かなり抑制された情感が漂う。
初めから暗い感じのチェロのソロが延々と続き、ピアノやハープもそれに呼応するような重たげな伴奏。時々パーカッションが低くゴーンと鳴っている。前半はちょっと憂鬱な感じ。
やがて曲想が変わり低音部から徐々に高めの音へと移行しつつ、明るめの色調の旋律になり、徐々に開放感されていくような雰囲気になる。

Ⅷ Fugato (11 players)
これもストラヴィンスキー風の不協和音がかった、明るくてどこか人を食ったようなところのある旋律。
管楽器が順に主旋律をフーガのように弾いていき、他の楽器も徐々に加わっていく。時たまハープが弾くアルペジオが幻想的で綺麗。

Ⅸ Elegy (11 players:English horn solo)
冒頭はイングリッシュホルンのソロ。元々音色自体に翳りがある上に叙情的な旋律。ついで弦楽と管楽がこの旋律を弾き、パーカッションとピアノがリズムセクションのようにリズムを刻んでいる。この曲も砂のように乾いた哀感がある。

Ⅹ Presto (5 players)
管楽と弦楽が旋律を弾く。ピアノの伴奏が珍しく派手で、速いテンポで目まぐるしく動き回っている。

XI. Epilogue (11 players:clarinet solo)
憂鬱げなクラリネットのソロ。バックではパーカッションとピアノが冒頭の楽章と同じく同音連打して、さらにフルートや残りの楽器も伴奏に加わる。
ヴァイオリンのソロも終わりには入ってきて、締めくくりらしく華やかに終る...とおもったら、一旦ディミニヌエンドしてから静かになり、少しクレッシェンドして明るめの安定した協和音で締めくくり。



 《6楽章のピアノ・コンチェルト》(1969年)

パリ在住時代に作曲したピアノ協奏曲第2番とは全く違った作風。
この《6楽章のピアノ・コンチェルト》は、1960年代頃に流行った前衛的な音楽に影響されている気がするような、全体的にかなりメカニカルなパッセージ、打楽器的なピアノ奏法、やや威圧的な不協和音が特徴的。
旋律や響きの妙というよりも、音自体の動き方やリズムの方が目立って聴こえてくる。オケも打楽器や管楽器のパートが賑やか。
解説ではこの作風を”programmatic(標題音楽的)”と評していた。
聴きにくいタイプの曲ではないといっても、聴きやすいともいい難い。楽章ごとの標題と音楽とのイメージがつなげにくく、ちょっととらえどころがないかな~という感じ。

この曲のなかでは、第4楽章Signsが旋律も響きも最も美しい。
静かな曲想に切り替わって(オケは相変わらず賑やかで物々しいが)、前の3つの楽章とは違って、ピアノは高音域主体のやや憂いを帯びた叙情感を感じさせる旋律と和声がわりと美しく感じる。
弱音主体のかなり内省的で雰囲気で、もやもやとした不可思議さが漂っている。時々突発的にフォルテになったりしているが、最後は段々明るい色調になっていって、雲が消えて視界がすっきりとしたような感じ。第5楽章Lavaも似たような雰囲気。

第6楽章Sparksは、一番明るくて躍動感もある。”Sparks”というタイトルのごとく、速いテンポで、ピアノが目まぐるしく動き回り、とても煌びやか。
オケは、ここでも打楽器と管楽器が目立って、物々しく騒々しい。Sparks(火花)が激しく踊っているといえば、そういう気もする..。

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クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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