ギレス ~ スティーブン・ハフ/組曲 R-B 

2009, 10. 17 (Sat) 18:00

日本ではあまり人気がないけれど、海外では有名なピアニストのスティーブン・ハフは作曲家でもあって、すでに自作品の楽譜も数多く出版している。
小品が中心で録音された作品は多くはないが、《組曲R-B》が録音されていたのを発見。
収録しているアルバムは、アメリカの現代作曲家によるヴィルトオーソ的ピアノ作品集で、タイトルがまさに『American Virtuoso』。
ハフはイギリス人で今はイギリスに住んでいるが、昔はジュリアード音楽院で学び、アメリカで演奏活動をしていて、NY暮らしが長かったので、”アメリカの作曲家”でもあるらしい。
このアルバムには、ハフのほかに、リーバーマン、ローレムという聴きたい作曲家の小品が詰め込まれている。3者3様の作風なので、こういうコンピレーションタイプのアルバムは、方向性の違った曲がいろいろまとめて聴けるところが面白い。

ピアニストは、全く知らなかったジェイムス・ギレス(James Giles)。ギレスのホームページにあるプロフィールを見ると、主に米国、それに欧州で、メインはソロ、室内楽でも演奏している。師事したピアニストはバイロン・ジャニス、ジェローム・ローウェンタールなど。今はNorthwestern Universityで教職につき、Las Vegas Piano Institutを設立したりと教育活動にも熱心らしい。
このアルバムは20世紀~21世紀へ変わる頃に作曲された委嘱作品を集めているが、ほとんどがギレスのために書かれたもので、初演もギレスが行った(とブックレットに書いている)。

ギレスは初めて聴いたけれど、これが思いもかけず凄く良いピアノを弾く人だった。
打鍵がシャープで音の切れが良く、響きも濁りがなくて綺麗。リズム感も良いし、音色・響きもカラフル、ダイナミックレンジも広く、曲想に応じた表現の変化も鮮やか。
リーバーマン、ローレム、ハフは、全く作風が違うけれど、それぞれの曲に応じたタッチと表現で弾きわけている。委嘱曲なので作曲家自身から作曲意図や解釈を聞いているはずだと思う。ハフ作曲の《組曲 R-B》の演奏を聴いていると、ハフ自身が弾いているように錯覚してしまう。
ギレスの感性が、現代の作品を弾くのにとても向いているのは間違いない。

American VirtuosoAmerican Virtuoso
(2006/11/21)
Giles, James(piano), IEBERMANN, L. / HOUGH / THOMAS, A.R. / ROREM / CURTIS-SMITH / BOLCOM / WINTLE

試聴する(米国amazon)


ハフのピアノ作品《組曲 R-B》は小粒ながらも、本業が作曲家ではないにしては、リズムやパッセージの組み合わせに工夫があるのか、単調さや平板さを感じさせない曲集。
組曲形式になっているが、序曲で提示された主題を組み込みながら、ワルツやトッカータに、フーガと形式もいろいろ。
ギレスの透明感のある響きが映えて、旋律と現代的な和声がとても美しくて、ロマンティスト(ではないかと私は思っている)のハフらしいファンタジーが煌くような小品集。
この曲を聴いていると思わずにっこりとしてしまう。

”R-B”というタイトルは、ハフの友人Richard GoulaのニックネームRichard-Bitchieにちなんでいて、彼のために書かれた曲。最後の楽章は、共通の友人であるギレスに捧げされている。

ⅠOvertureは序曲らしく、やや不協和的な響きのする鐘が響きわたっているような和音が華やかな曲。
ここで2つのモチーフが提示されているが、これがとてもシンプル。全楽章はこの2つのモチーフをもとに展開されている。
1つは、レとシ(R-Bの意味だそう)の2音だけのモチーフ。続くもう一つのモチーフは、6つの八分音符と休止からなる2小節の主題。これはGoulaのパーティピースの一つであるリストの"Les cloches de Geneve ジュネーヴの鐘"(《巡礼の年》第1年「スイス」第9曲) からとっている。

ⅡWaltzは、Overtureの主題をわかりやすく変形した柔らかい響きの優しげなワルツ。
III. Gavotteは調性が安定したとても可愛らしいガヴォット。リズムがいろいろ変化して、とてもお茶目で軽やか。
ⅣLittle Lullabyはタイトルどおり夢見るようなほわ~としたタッチの曲。最後はとうとう眠りに落ちたようにフェードアウト。
ⅤToccatinaは、小さなトッカータという意味らしく、速いテンポでクルクルと目まぐるしく動くフーガ。明るく楽しげな雰囲気で、この組曲のなかでは一番つくりが凝っている。
最後のⅥThe Iris Gardenは、Overtureの主題をゆったりとしたテンポで変奏した曲。濃密な時間がゆったりと流れるような雰囲気がする。どうして、Iris(あやめ)の庭なのかというと、Richard Goulaがアイリスが好きでいろいろ詳しいからだそう。

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