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ギレス ~ リーバーマン/ピアノ・ソナタ第3番
ローウェル・リーバーマンは、スティーブン・ハフがピアノ協奏曲と独奏曲を録音しているアルバムを聴いて、初めて知ったアメリカの作曲家。
リーバーマンの公式サイトでディスコグラフィを調べてみると、現代音楽にしてはCDがかなり多い。
特に、”Sonata for Flute & Piano”などのフルートの入った室内楽に人気があるようで、リーバーマン自身はピアニストでもあるので、Gargoylesやピアノ・ソナタなどのピアノ曲の録音もいくつか出ている。

リーバーマンの曲は、現代音楽にしては調性が比較的安定し、リズム・旋律も明瞭、和声も現代的な美しい響きで聴きやすいが、曲想としてはかなり切迫感や不安感の漂うものが多い。
といっても、ピアノ・ソナタやピアノ協奏曲の緩徐楽章は叙情性が強くてかなり美しいし、ピアノ小品の”Album for the Young, for piano”などはとてもリリカルで、この”動”と”静”のコントラストが鮮やか。
ヴァイオリン・ソナタやピアノ三重奏曲などの室内楽曲も作風としては似ている。リーバーマンの曲は私の波長にわりと良く合うので、室内楽を聴いていても面白く聴ける。

このピアノ・ソナタ第3番も、聴いていて心地良いとは言い難いところはあるけれど、前衛的なわけのわからなさは全くなし。
力強く拍子を刻む左手バスの動きはリズム感があって歯切れ良く、旋律は明瞭でいろいろ変化していく断片的なフレーズの組み合わせが面白い。
各楽章の構成もすっきりと明確で見通しが良くて、(この雰囲気が苦手でないなら)とても聴きやすいタイプの音楽。
両端楽章のやや物騒な雰囲気でメカニカルな音の動きと、中間部や第2楽章の叙情性のある旋律とのコントラストも鮮やか。

第1楽章 Inquieto, esitante - Con tutta forza
リーバーマンのピアノ協奏曲のソロパートを独奏曲に編曲したような曲。
リーバーマン独特のちょっと物騒な響きの和音による旋律と、細かい音の詰まったパッセージを組み合わせたフレーズはリズミカルだが、どこかしら不安さを感じさせる急迫感がある。
中間部では、ねっとりとした叙情感の漂う旋律が挟まれている。主題を変形した旋律なので、曲の流れが遮られずに、動と静のコントラストがよく効いている。
この楽章は、メカニカルな動きのパッセージが多いが、弾力のあるリズムで、主旋律と伴奏の組み合わせのバリエーションも凝っている。

第2楽章 Adagio con molto rubato - movendo
叙情感が強く和声も美しい楽章で、ピアノの響きがネットリまとわりつくように妖艶。第1楽章の中間部も、この感覚的なネットリ感があって、独特の雰囲気。蜘蛛の巣に絡めとられて息が徐々に詰まってきそうな不気味さを感じるところもある。
初めは単音主体の内省的で密やかな旋律。静かな湖面に細波がたつように、時々アクセントのように和音が強く入ってくる。中間部では、感情が揺れ動くように、似たパターンの和音をフォルテとピアノで交互に弾くフレーズが入ったり、強弱・静動のコントラストが強くなる。
最後は、古びたオルゴールが鳴っているような響きと懐かしさを感じさせる旋律。少しミステリアスな雰囲気の旋律と伴奏のアルペジオが相まってとても幻想的。

第3楽章 Allegro - Adagio - Presto
アタッカでつながる第3楽章は、再び第1楽章のような物々しい雰囲気が再現され、目まぐるしく展開する。
拍子を刻むような左手低音部の和音、右手の細かいパッセージ、時折連打される両手の和音、左手の対旋律など、いろいろなパターンの音型が次々に組み合わさっていく。
この楽章も速いテンポで、メカニカルなパッセージがリズミカルに錯綜していくのが結構面白い。
最後はフォルテの和音で締めくくったと思ったら、エピローグのように静かなゆっくりとした旋律に。今度はこのままフェードアウトするのかと思ったら、また急展開して、再び元の物騒な曲にもどって、階段を駆け上がるように勢いよく終る。


リーバーマンの《ピアノ・ソナタ第3番》が収録されているこのCDは、アメリカのヴィルトオーソ的な曲を集めたアルバム。
ピアニストで作曲もするスティーヴン・ハフの作品《組曲 R-B》も収録されている。ハフはイギリス人だけど、ニューヨークに長く住んでいたので、一応アメリカの作曲家にカウントされている。
ハフ以外にも好きなローレムなど、現役のアメリカ人作曲家の作品がいろいろ収録されていて、面白い選曲。
収録されている曲は、演奏しているピアニストのジェイムス・ギレスが作曲家へ委嘱した作品で、世界初録音の曲が詰め込まれている。
ギレスは、タッチをいろいろ変えているので音色や響きのバリエーションが広く色彩感があるし、曲想の変化に応じた表情づけも豊か。この人は全然知られていないけれど、とっても良いピアノを弾く。
ギレスのピアノも申し分なく、現代のアメリカ人作曲家のピアノ作品を聴くには、選曲・演奏ともとても良いアルバム。

American VirtuosoAmerican Virtuoso
(2006/11/21)
Giles, James(piano), IEBERMANN, L. / HOUGH / THOMAS, A.R. / ROREM / CURTIS-SMITH / BOLCOM / WINTLE

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tag : リーバーマン ギレス

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クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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