*All archives*



スティーヴン・ハフ ~ リーバーマン/ピアノ協奏曲第1番&第2番
リーバ-マンのピアノ協奏曲は、現時点で3曲書かれている。
リーバーマンといっても、《ジャズ・バンドと管弦楽のための協奏曲》を書いたスイスの作曲家ロルフ・リーバーマンではなくて、アメリカ人のローウェル・リーバーマンの方。
ニューヨーク在住のリーバーマンの作品は、昔同じくNYで演奏活動をしていたスティーブン・ハフの現代音楽の重要なレパートリーの一つ。
ハフの録音はラフマニノフやリスト、ショパンなどが有名だけれど、現代音楽もの録音もかなり多く、数種類リリースされているピアノ小品集でも日本ではあまり知られていない作曲家の作品をいろいろ収録している。

リーバーマンのピアノ作品の録音はあまり多くはないので、ピアノ協奏曲第1番と第2番に加え、ピアノ独奏曲集が2作品収録されているハフのアルバムはかなり貴重。
特にピアノ協奏曲第2番はハフに献呈された曲なので、ピアノはハフ、伴奏はリットン指揮ダラス響というラフマニノフのピアノ協奏曲の演奏でお馴染みの顔合わせで初演された。
”サミュエル・バーバーのピアノ協奏曲以来の傑作”という評した評論家もあり、この曲はアメリカ人にはかなり評判が良いらしい。

リーバーマンのピアノ協奏曲はスポーティでシャープな切れ味が、現代的で都会的なスマートさを感じさせる曲。そのせいか、時々SF映画のサントラを聴いているような気がするけれど。
ピアニスティックな技巧がちりばめられ、行進曲風のリズミカルでやや厳しく勇壮な急速楽章と和声・旋律が美しくさらさらした叙情感の緩徐楽章のコントラストが鮮やか。
ピアノ協奏曲の急速楽章は、ピアノ独奏曲《ガーゴイル/Gargoyles, Op.29》に、音の配列や雰囲気がとてもよく似ているので、コンチェルトが気に入ったなら 《ガーゴイル》も好きになるのは間違いない。

このスタジオ録音は、リーバーマン自身が指揮するグラスゴーBBCスコットランド交響楽団が伴奏。
日本では、指揮はデュトワ、ピアノはハフで、2001年のN響の定期演奏会で演奏されている。現代音楽といっても、かなりわかりやすくノリの良い曲なので、聴衆にはウケが良かったらしい。

Liebermann: Concerto for piano No2; Album Op43Liebermann: Concerto for piano No2; Album Op43
(1997/06/10)
Stephen Hough (piano)(Performer) Lowell Liebermann (Conductor), Glasgow BBC Scottish Symphony Orchestra (Orchestra)

試聴する(hyperionサイト)

カップリングされているのは、ピアノ独奏曲《子供のためのアルバム/Album for the Young, Op. 43》からの6曲。《子供のためのアルバム》は調和的な和声と旋律がとても美しい18曲の曲集。


 ピアノ協奏曲第1番 Op.12 (1983年)
第1楽章 Allegro
リーバーマンのトレードマークのような騒然とした雰囲気。聴けばすぐにリーバーマンの曲だとわかる。
ミリタリー調というか行進曲風というか、明確で克明に刻まれるリズムが軽快。
ハフのピアノは、いつもながらシャープな打鍵で、音が舞うように軽やかでクリア。

第2楽章 Larghissimo
暗い色調で静かに呟くようなピアノ・ソロが美しく、冷たい水がぽつんぽつんと滴りおちるような透明感と静けさ。
旋律には歌謡性はないけれど、無機的な感じはなく、クールな叙情感。

第3楽章 Allegro Con Fuoco, "Maccaber Dance"
"Maccaber Dance(死の舞踏)”というタイトルがついているが、まるでSF映画のバトルシーンのBGMのような曲。(スペクタクルな”スターウォーズ”よりも、地味な神経戦の戦闘シーンが多い”スタートレック”の方に向いている)
第1楽章と同じように、オケ伴奏は管楽器がかなり目立ち、とてもリズミカルで勇壮な雰囲気。
ピアノも速いテンポの厚みのある和音移動が多く、骨太の響きがオケとぴったりマッチ。
途中で、敵の出方をうかがうような弱音主体の部分が挟み込まれていて、ここはピアノの軽やかなアルペジオの高音の響きが素晴らしく綺麗。


 ピアノ協奏曲第2番 Op.36(1990年)

第1楽章 Allegro Moderato
冒頭の蝶のように軽やかに舞うピアノのアルペジオが幻想的。音が細かく込み入っていても、ハフの響きは1音1音がシャープでクリアなので、響きに濁りがなく細部までくっきりと明瞭。
続いて加わったオケは、プロローグのように何かを予感させるような旋律。
同じ主題をピアノが後から弾きなおし、序奏から徐々にエンジンがかかっていくように、ピアノとオケがスケールを交互にカスケードするように弾き、次にはエジプトのピラミッドがようやく目の前に現われたような堂々としたファンファーレ。
なぜかスタートレックの映画第1作(The Motion Picture)で、新生エンタープライズ号の姿が徐々に現われてくるシーンがあって、そこにぴったりな曲に思えてくるのは、雰囲気がちょっと似ているせい?

この後も同じ複数のモチーフがやや変形されながら、繰り返し登場する。
リーバーマンの曲はどれも錯綜感が強く感じないのは、単純なモチーフを執拗に展開して構造が堅牢に思えるせいに違いない。
第1番以上に展開が凝っているので演奏時間は長くなっているけれど、身体が自然に反応するようなリズム感が良く、管楽器を多用したカラフルな色彩感とやや調和的な和声の響きがとても馴染みやすくて、意外と単調さを感じさせない。

第2楽章 Presto
この楽章は、何かが得たいの知れないものが蠢き、事態が急展開したような急迫感。
冒頭に弱音でピアノが弾く主題が、この楽章でも変形されながら、ピアノパートと伴奏パートに繰り返し現われる。

第3楽章 Adagio
このアダージョは、第1楽章のような叙情感は全くなく、前2楽章の雰囲気に統一したように、不気味なものが潜んでいるような漠然とした不安感が流れている。
中間部では、オケの合図とともに急にテンポが上がり、何かから逃れるように、疾走感のあるピアノが和音で機関車の車輪のごとく賑やかに動き回る。
やがて安全なところにたどり着いたように、再びテンポがスローで静かになるが、それでも曖昧模糊とした不安感が漂っている。

第4楽章 Allegro
再びアレグロで相変わらず賑やかな曲想に戻る。
霧が徐々に晴れていくようにやや明るい色調で、ラストスパートをかけるように躍動的でダイナミックな楽章。

同じモチーフを変形しながら展開していくのが、職人芸のように凝っていて、聴いている時はとても面白い。
管楽器が賑やかでカラフルで、特に急速楽章はダイナミックで、ポップな雰囲気もあり、かなり聴きやすい。
ただし、第1・2・4楽章が音の動きや雰囲気に似通ったところがあり、主題自体もさほどメロディアスでも魅力的でもないので、もう少し聴き込めばまた違った印象になるかもしれない。


 リーバーマン/子供のためのアルバム、ガーゴイルの記事

tag : リーバーマン スティーヴン・ハフ

※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。
Secret
(非公開コメント受付中)

カレンダー
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
ブログ内検索
最近の記事
最近のコメント
カテゴリー
タグリスト
マウスホイールでスクロールします

月別アーカイブ

MONTHLY

記事 Title List

全ての記事を表示する

リンク (☆:相互リンク)
FC2カウンター
プロフィール

yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

お知らせ
ブログ記事はリンクフリーです。ただし、無断コピー・転載はお断りいたします。/ブログ記事を引用される場合は、出典(ブログ名・記事URL)を記載していただきますようお願い致します。(事前・事後にご連絡いただく必要はありません)/スパム投稿や記事内容と関連性の薄い長文のコメント、挙動不審と思われるアクセス行為については、管理人の判断で削除・拒否いたします。/スパム対策のため一部ドメインからのコメント投稿ができません。あしからずご了承ください。