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バーバー/ピアノ協奏曲
バーバーといえば《弦楽のためのアダージョ》。他にもいろいろ作品は残しているが、一番有名なのでこの曲を真っ先に思い浮かべる人が多いに違いない。
このアダージョ、よくセレモニーでかかっているし(特にお葬式)、鎮魂歌ならブルッフの《イン・メモリアム》の方が好きなので、わざわざCDを買って聴く気にはならない。

リーバーマンのピアノ協奏曲のレビューを米国amazonで見ていると、”バーバーのピアノ協奏曲以来の傑作”というコメントが度々出てくる。
バーバーのピアノ協奏曲は、アメリカ人作曲家が書いたピアノ協奏曲の中でも傑作と言われて、初演では絶賛されたという。録音自体は多くはないが、見かけるのはアメリカ人ピアニストによるものが多い。
日本のamazon、HMVでは、バーバー作品に対するレビューがあまりついていないが、米国amazonだとさすがに自国の作曲家だけあって、バーバーの作品は人気があってレビューも多い。

このピアノ協奏曲は、ピアニストのジョン・ブラウニングをソリストに想定して作曲されている。ブラウニングはバーバー作品の演奏で有名。
初めの2つの楽章は1960年末、途中いろいろ出来事があって中断し、第3楽章は1962年9月に完成。初演は同月、ブラウニングのピアノとラインスドルフ指揮ボストン響で行われた。
1963年のピュリツァー賞、1964年のMusic Critics’ Circle Award(音楽評論家サークル賞) を受賞し、ピアノ協奏曲はバーバー作品の中で一般的に最も高い評価を受けている曲の一つ。

初演者のブラウニングによる録音がいくつかあるが、なかでも1964年のセル指揮クリーヴランド管弦楽団の評価が良いらしい。
このNAXOS盤のスティーヴン・プルッツマンのピアノ(マリン・オールソップ指揮ロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管弦楽団)による演奏は、シャープなタッチでエネルギッシュ。ピアノの音も綺麗。
Barber: Piano ConcertoBarber: Piano Concerto
(2002/10/22)
Marin Alsop (Conductor), Royal Scottish National Orchestra (Orchestra), Stephen Prutsman (Performer)

試聴する(米国amazon)


バーバーの時代のアメリカ人作曲家(コープランド、ローレム、ガーシュウィンなど)のピアノ協奏曲だと、ジャズとかフランス音楽の影響を感じさせるところがよくあるが、バーバーはそういうところはない。
ロシア風のロマンティックでピアニスティックなところとバルトーク(というよりプロコフィエフ?)のピアノ協奏曲のような荒々しいところを融合させて、現代的に洗練したような感じがする。

Ⅰ Allegro appassionato
全楽章とも短調が支配的で、第1楽章冒頭はピアノ独奏で和音による力強いフォルテの主題。
旋律はシンプルだがリズムと和声が独特で、予期しない不吉なものがやってくるような劇的で、不安に満ちた響き。
この主題がピアノとオケにより次々と変形されて演奏されて、しつこいくらいに繰り返し現れる。
旋律に歌謡性はあまりないが、テンポが速く、鋭いリズムと細かなパッセージが多いので、強く訴えかけるような急迫感がある。
かなりピアニスティックな曲で、音の詰まった高速のパッセージに加えアルペジオと和音を多用した流麗で華やかなピアノの響きが、とても綺麗。
緩徐部がときどき挿入されて、頻繁に緩急・静動が入れ代わっていく。前後がやたらに急迫感があるので、一転して静寂で呟くようなピアノの響きは、ちょっと幻想的。
ヒンデミットのような即物的なメカニカルさや乾いた叙情感とは違い、また、リーバーマンのような厳つく物騒な響きとも違う。やや水気を含んだ冷たく研ぎ澄まされた叙情感がとても美しい楽章。

Ⅱ Canzone: Moderato
Canzoneなので、やや不協和的な響きの混ざってはいるが、やや暗めのトーンの叙情的な旋律。
中間を過ぎると、ピアノの左手アルペジオと右手で弾く旋律がややロマンティック。パタパタと羽音を立てながら蝶が待っているようなトリルがよく使われている。ヒンデミットが多用するトリルに似ている感じ。
全体的にピアノ独奏が多くて目立っているが、時々、弦楽や管楽によるソロが入ったりする。

Ⅲ Allegro molto
短調のかなり勇壮な曲想で、冒頭はブラスによるファンファーレが耳に突き刺さるよう。
すぐにピアノが速いテンポでシャープな打鍵で、鍵盤上を目いっぱい使って動き回っている。
第1楽章にも増してピアニスティックで、打楽器的奏法が多用されている。ドラムがオスティナート的に低音を連打しているのが、とてもリズミカルで、疾走感も充分。
曲想が曲想だけに、ドラムと管楽がとても目立っている。時々休憩するように挿入される静かな緩徐部は別として、ピアノがメインの旋律を弾くというよりも、同じ主題をピアノとオケで受け渡していき、ピアノがオケの背後でリズムセクションのように伴奏しているので、ピアノはオケパートの一つのように聴こえる。
第1楽章と第3楽章は緊迫感と勢いがあるので、これをライブで聴くとかなり高揚感を感じるに違いない。批評家も絶賛したというのも、なぜか納得してしまった。

リーバーマンのピアノ協奏曲第2番は、このバーバーのピアノ協奏曲とちょっと曲想や構成が似ているので、並べて評されたのも良くわかる。
《弦楽のためのアダージョ》を書いた同じ作曲家とは思えないような作風なのは、ピアノ協奏曲がかなり後年の作品なので作風も変遷していったため。
《弦楽のためのアダージョ》と同じ頃に書かれた最初の協奏曲であるヴァイオリン協奏曲は、とってもロマンティックで聴きやすい。現代のヴァイオリン協奏曲の中では、よく演奏されている曲らしい。
スリリングでインパクトの強いピアノ協奏曲も同じくらい(かそれ以上)に面白いと思うのに、あまり演奏も録音も見かけない。やはりとっつきにくいところのある曲想と、技巧的に難度が高いせいだろうか。

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好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
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