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ムローヴァ&カニーノ ~ バッハ/ヴァイオリンソナタ集
バッハのヴァイオリンソナタをピアノ伴奏で録音したCDは、昔も今も相変わらず珍しい。
F.P.ツィンマーマン&パーチェの録音が、今のところ最新録音のはず。それ以外の録音で新しい方なのは、1992年録音のムローヴァ&カニーノのアルバム。

カニーノは1993年には、《ゴルトベルク変奏曲》を録音している。「Grate Pianist」(Document)のBOXセットに収録)
テクニカルに際立った鮮やかさはないけれど、明るく綺麗な音色と声部の引き分けが明瞭で、装飾音がとても表情豊か。明晰で瑞々しさのあるゴルトベルクで、人懐っこさを感じさせるところがとっても魅力的。

バッハのヴァイオリンソナタで、ムローヴァの伴奏をしているカニーノのピアノは、ツィンマーマンのピアノ伴奏をしているパーチェとは違った趣き。少し聴いただけでも、全く違うのが良くわかる。
ピアニストの個性は当然のことながら、ヴァイオリニストの演奏にそれぞれ合った(合わせた)弾き方なので、ピアノ伴奏者を入れ替えた演奏を頭のなかでイメージしてみると、ヴァイオリンの演奏のスタイルとピアノの伴奏とがずれてしまいそう。

Bach: Violin SonatasBach: Violin Sonatas
(1993/08/10)
Bruno Canino (Piano), Viktoria Mullova (Violin)

試聴する(米国amazon)

このCDはすでに廃盤。ダウンロード販売もしていないようだった。
収録曲はバッハのヴァイオリンソナタの第1番(BWV1014)、第2番(BWV1015)、第6番(BWV1019)と、C.P.E.Bachのヴァイオリンソナタ(H.514,Wq.78)。C.P.E.Bachの曲は初めて聴くので、ちょっとだけ得したような気分。
このカニーノとムローヴァの写真、お互いソッポを向いているようなショットに見えてしまうのは気のせい? 昔のムローヴァは、かなり気難しい人だったらしいので、そのせいかも...。

いつもはツィンマーマンの芯が1本通ってきりっと引き締まった演奏ばかり聴いているので、ムローヴァのバッハを聴くと、線が少し細くて優美で繊細でしなしな。
テンポがやや遅めで急速楽章では躍動感が薄い(第2番第4楽章や第6番第5楽章とか)し、緩徐楽章と急速楽章とのコントラストが弱いと思うけれど、その分しとやかではある。
好みとは違うけれど、これはこれで悪いというわけではないし、そもそもヴァイオリンを聴くのが目的で手に入れたディスクではないので、カニーノのピアノがとても良いだけで充分満足。

ムローヴァのヴァイオリンの弾き方に合わしているようで、カニーノのタッチは軽めで音量を抑えぎみ。柔らかく軽やかなタッチで、そよそよと風にそよぐように優しげ。これがとても良く似合っている。
残響がとても少ないので音がとてもクリア。艶やかなきらめきのある音色で、特に高音の響きは甘い感じでとても可愛らしい。
左手の旋律はかなり明瞭に弾いているので、テンポは遅いわりにリズム感は結構良い。
両手の旋律ともフレージングが工夫され、装飾音もいろいろ凝っていて(リピートの時は一層凝っている)、聴きなれたパーチェの伴奏とは全然違って聴こえるところが結構あったりする。
全体的にテンポはやや遅めなのでタッチも響きもとても綺麗だが、テンポが速くなると(第1番第1楽章や第6番第3楽章など)、ちょっと無造作な感じのタッチに聴こえる。
ゴルトベルクを聴いている時もそういう感じがしたし、もとからこういう弾き方なんでしょう。


第6番第3楽章は珍しいピアノ(チェンバロ)独奏だけの楽章。
この曲はこのところ毎日弾いているので、カニーノの演奏の面白さが細かなところまで良くわかる。
伴奏しているときとは違ってこのソロではかなり速いテンポで、タッチが軽やかで歯切れ良く、とてもリズミカル。
ゴルトベルクと同じように、とても明るさのある明晰で躍動的な弾き方。ヴァイオリンの伴奏ではかなり抑え気味のピアノを弾いていた反動かと思ってしまった。

カニーノの弾き方は、伴奏の時以上に、チェンバロで弾く時のように装飾音があれこれつき、リピート時はさらに凝っている。
カニーノはバッハ弾きといわれる人ではないだろうけれど、チェンバロも弾く人。いろいろ工夫することができるせいか、この懲りようはかなりのもの。でも自然に湧き出るように音楽が流れるので、不思議と作為性は全然感じない。
第3楽章のチェンバロ独奏をいくつか聴くと、装飾音が多彩なのはダントーネ(カニーノはダントーネと同じくらい凝っている)。ピノックやルセはそれほど装飾音をつけずに弾いている。

前半、後半とそれぞれリピートすることになっているが、カニーノは初回とは弾き方をいろいろ変えている。
リピートしたときは装飾音が初回よりもずっとたくさんついているし、フレージングを変えたり、レガート的に弾いたりと、とにかくいろいろ仕掛けがあって、これがとても面白い。
フレーズによっては、特に低音部や内声部を浮き上がらせているところがあり、いままで埋もれていたような旋律やリズムが明瞭に聴こえるところが新鮮。
かなり速いテンポで弾いているせいか、タッチがさばさばしていてもう少し丁寧に弾いてほしい気もしないではないけれど、4分ほどの短い曲でもコロコロと変わっていく表情には、とても愛嬌があって飽きない。

カップリングのC.P.E.Bachのヴァイオリンソナタも、父バッハのソナタに劣らずとても美しい曲。
父バッハと違い、4楽章ではなく、3楽章構成。
特に第2楽章のピアノ伴奏がとても印象的。バロックにしてはかなり自由に動き回る旋律で、バロックというより、モーツァルトのヴァイオリンソナタのピアノ伴奏をシンプルした曲を聴いている感じがする。

tag : カニーノ バッハ

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コメントありがとうございました。
Yoshimiさん、こんばんは
以前の記事のシャコンヌ聞き比べしてきました。シェリングがいませんでしたが、色々なシャコンヌが聞けて楽しかったです。Julia Fischerが気に入ったので早速購入しようとしたらSACDしかないんですね><
(あっピアノの話ぜんぜんしなかった。)まだぴよぴよですが、よろしくお願いします。
また遊びにきますね。

SACDはハイブリッドです
のん様、こんにちは。
コメントありがとうございます。

あの「シャコンヌ」の聴き比べは、なかなか良いアイデアのコンテンツだと思います。
Julia Fischerの演奏は、強いクセがなくて自然な感じが良いですね。
私はスークの演奏が一番好きですが、フィッシャーの演奏も印象がとてもよかったです。

FischerのディスクはSACDですが、普通のCDプレーヤーで聴けないことを気にされているのでしょうか?
HMVのディスク情報だとハイブリッドなので、普通のCDプレーヤーでも聴けるはずです。
SACDプレーヤーで聴くよりは音質は落ちるでしょうが、ナクソスのストリーミング配信で聴いてみたところ、音はとても鮮明で音像がしっかりしています。
(ちなみにナクソスの会員なら、FischerのPentaTone盤はオンラインで全曲聴けます。)

記事はピアノ中心に書いてますが、最近はヴァイオリンや室内楽曲も大分聴くようになりました。ピアノのことだけでなく、何でも気軽にコメントしてくださいね。
これからもよろしくお願いします。
yoshimi さん、おはようございます。
ヴァイオリンのカテゴリをみてたので、過去記事にコメントしてしまってすいません。SACDは、普通のCDプレーヤーで聞けるのですね。情報ありがとうございます。明日HMVでお買い物しますv-343
私もヴァイオリン好きなので色々参考にさせていただきますね。
ハイブリッドは便利です
のん様、こんにちは。

いえいえ、過去記事にコメントいただいても全然かまいませんよ。
ヴァイオリンは全く弾けないので技術的なことは全然わからないのですが、好きな曲や演奏家の録音で良いと思ったものは記事に書いてます。

SACDは、ハイブリッドでなければ普通のCDプレーヤーでは聴けないのですが、今はハイブリッドが多いようです。SACDを買うときは、念のため”ハイブリッド”かどうか、フォーマット情報を確認してから買ってます。
今度SACDプレーヤーに買い換えれば、良い音質で聴けるようになるので、ハイブリッドは便利ですね。
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yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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