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ペンティネンのクリスマスアルバム 『EVENING BELLS』 
この時期になるとクリスマス向きの音楽を聴きたくなるのはいつものこと。
今までに記事に書いたのは
  バッハの《主よ、人の望みよ喜びよ》
  ジョン・ラターの『Fancies』
  アンネ=ゾフィー・フォン・オッターのクリスマス・アルバム『Home for Christmas』


今年のクリスマスはピアノ・ソロで聴きたいので、ちょっと珍しいクリスマスアルバム『Evening Bells』から、リストの《クリスマス・ツリー》をメインに、レーガーの《マリアの子守歌》(これは原曲の歌曲が有名)、ブゾーニの《クリスマスの夜》などを。
このアルバムには、最初と最後にケンプ編曲のバッハのコラール、メシアンとステファン・ペンティネンの曲も収録されている。メシアンとペンティネンは現代音楽なので他の曲とはちょっと趣きが違う。
オーソドックスなクリスマス的雰囲気の旋律や響きの曲も良いけれど、そればかり聴いていると、たまには毛色の全然違うクリスマスの音楽を聴きたくなる。そういう点では、このアルバムはリストの珍しいクリスマス曲や滅多に見かけない現代ものも入っていて、バリエーションが豊か。
選曲が面白いし演奏も申し分なく、今まで聴いたクリスマス曲集の中では出色の出来。個人的にはとても満足。

ピアニストはBIS盤で良く見かけるローランド・ペンティネン。
いつもシュニトケの曲で聴いていたけれど、ペンティネンはロマン派~現代のドイツ、フランス、東欧、ロシアものなども弾くので、レパートリーがとても広い。このアルバムでも、バッハに始まり、ロマン派から現代ものまでカバー。
すっきりとしたスマートな表現と色彩感のあるとても綺麗な響きのピアノで、クリスマスらしい静謐さや清らかさといった雰囲気がとてもよく出ている。

このアルバムは、大勢の人が集まるパーティで流す曲ではなくて、クリスマスの静かな夜に巣篭もりして紅茶とクリスマスケーキでもいただきながら(私はお酒は飲まないので)、じっくり聴くのにぴったり。

Evening BellsEvening Bells
(2000/11/21)
Roland Pöntinen (Piano)

試聴する(BIS)


リスト《クリスマス・ツリー Weihnachtsbaum-Arbre de Noël S.186》(1866年/1876年改訂)
  [ピティナの楽曲解説][楽譜ダウンロード(IMSLP)]

リストは、ピアニスティクでデモニーッシュなイメージが強いので(晩年は静謐で宗教的な曲になっていくけれど)、この曲集はリストにしては、とても清々しくシンプルな旋律が多くてとっても新鮮。和声も綺麗だし、クリスマスらしい楽しさや静けさとかが良く出ている。
クリスマス・キャロルからの編曲が何曲かあるので、聴いたことのあるメロディが出てきてクリスマスの雰囲気がちゃんとする。
楽譜を見ると、リストにしてはそれほどあちこち飛び跳ねたり入り組んではいないが(曲にもよる)、やっぱり重音・和音移動がかなり多い。
1つの曲は数分の小さな曲だけれど、12曲あるので全部で40分以上かかるという結構な大作。

第1曲 <古いクリスマスの歌> Altes Weihnachtslied
解説によると中世の作曲家プレトリウスのコラール主題がモチーフ。
クリスマス曲集でよく出てくるとても晴れやかで喜びに満ちた旋律。
冒頭の主題は低音の響きが堂々と力強い和音。次に高音域に移るととても可愛らしい響きに変わり、最後は再び力強く輝かしい主題で終る。低音も高音も鐘の音のような煌めきがあって、オープニングに相応しい曲。

第2曲 <おお聖なる夜> O heilige Nacht!
原曲の”O heilige Nacht!”は結構有名な賛美歌らしいが、聴いた記憶があまりない。Lentoで清々しい感じの旋律。

第3曲 <飼葉桶のそばの羊飼たち> Die Hirten an der Krippe
原曲はクリスマス・キャロル。”もろびとこぞりて”(だと思う)のラストのフレーズが少しだけ出てくる。
左手の符点付きのリズムの伴奏が軽やか。
この曲も鐘の音が鳴っているような柔らかて清々しい響きがとても綺麗。

第4曲 <誠実な人々よ来たれ> Adeste fideles
原曲はとっても有名なクリスマス・キャロル。タイトルを知らなくても、聴いたことがある人は多いはず。
冒頭は珍しく暗い短調で始まり、すぐに長調に転調しておなじみの旋律に。その後も短調と長調が頻繁に入れ代わって、最後は輝かしい長調で終る。

第5曲 <スケルツォーソ> Scherzoso: Man zundet die Kerzen des Baumes an
サブタイトルは”ツリーに点火するとき”。
とっても楽しげな雰囲気。灯りが次々に点って、明るくきらきら輝きが膨らんでいくイメージ。
ピアノがちょこまかと飛び跳ねるようなリズムで、和音・重音・オクターブを軽やかに速いテンポで弾かないといけない。

第6曲 <カリヨン> Carillon
実際にカリヨンの鐘の音を聴いたことがあれば、イメージが良くわかりそうな曲。
主に右手はトリル・トレモロ風の重音、左手は三連符の分散和音の伴奏で、クロスリズムになっている。

第7曲 <子守歌> Schlummerlied
タイトルどおり、まったりと眠くなりそうな柔らかく優しい雰囲気の旋律。
ゆったりとしたトリル・トレモロの響きが規則的で眠りを誘う。

第8曲 <古いプロヴァンスの歌> Altes Provenzalisches Weihnachtslied
舞曲のように軽快なリズムの短調と長調の旋律。この曲集のなかでは一番躍動感がある曲。

第9曲 <夕べの鐘>  Abendglocken
アルバムタイトルの”Evening Bells”がこの曲の名前。
細かい動きで軽快な<カリヨン>と違って、こちらは、一日の終わりを告げる鐘の音らしく、穏やかで疲れを癒すようなタッチ。音の響きも柔らかくてとても心地よい。
終盤になるとテンポが急に落ちて、日がとっぷり暮れて夕闇が広がっていくように、やや暗く沈んだような雰囲気の和声に変わり、重たく静かに終る。

第10曲 <昔々> Ehemals
ちょっとファンタスティックで憂いに満ちた響きが美しい回想風。
短調と長調が交錯して徐々に感情が昂ぶっていくような感じで、他の曲と比べてこの曲だけとても叙情感が強い。

第11曲 <ハンガリー風> Ungarisch
タイトルどおりハンガリー風で、ちょっといかつい行進曲風。クリスマスとはあまり関係ないような...。

第12曲 <ポーランド風> Polnisch
ポーランド風のマズルカ。冒頭は調性がはっきりしないような曖昧な雰囲気。
すぐにマズルカのリズムに変わり、ショパンのマズルカらしき旋律(たぶん)も出てくる。
全体的に短調でちょっと暗い雰囲気だけれど、時々フォルテで華やかな曲想に変わり、最後は堂々とした力強いフィナーレ。

ステファン・ペンティネン 《カリヨン》(2000年)
2000年の作品だけあって、頭から終わりまで現代音楽的。鐘を模したような不協和的で音がキンキンと耳につくところが、面白くはある。
リストの<カリヨン>とは全く違ったカリヨン。やや金属的な響きがするところが、似ているといえば似ている。
どちらかというと、こっちの方がカリヨンの響きに近いんじゃないかという感じがする。

レーガー 《マリアの子守歌 ~<素朴な歌>Op. 76より第52番》(ピアノ編曲版)
やはり有名な曲だけあって、旋律が清々しくて綺麗。ピアノ版への編曲、ペンティネンの演奏ともとっても良い感じ。変奏曲のずっしり重いレーガーとは違っていて、やはりピアノ小品の世界のレーガーはとてもシンプルで美しい。
ピアノ1台で弾いているにしては、色彩感のある響きが美しく、まるで2人で弾いているような印象。
ペンティネンの現代音楽的《カリヨン》の響きを聴いた後なので、もともと綺麗なこの曲がよけいに美しく聴こえる。

ブゾーニ 《クリスマスの夜 Nuit de Noël》(1908年) [楽譜ダウンロード(IMSLP)]
1900年代の作品なので、初期のロマンティックな《シャコンヌ》の頃とは作風がかなり変わっている。
最初はとても清らかな響きの旋律で静かに始まり、徐々に調性が曖昧になっていき、不協和的な和声が強くなっていく。その不協和的な響きが、ちょっとユーモラスな感じで楽しげ。
右手のトリルのオスティナートの上を、クリスマス的な雰囲気の調和的な旋律と不協和的な旋律が何度か入れ代わり流れていくところが面白い。
トリルの響きは、月明かりに照らされながら、深々と静かに降りつもっていく雪のイメージのような感じ。
ドビュッシーの《子供の領分》にある<雪が踊っている>でも、オスティナートで雪の降る様子が表現されているけれど、ブゾーニよりもずっと描写的に聴こえる。

メシアン《幼な子イエスにそそぐ20の眼差し》(1944年)<ノエル>、<イエスの口づけ>
<ノエル>は冒頭から、一体に何が始まったんだろうと思うような騒々しさ。最後まで聴くとちょっとファンタスティックなところもある。<ノエル>というタイトルのわりには、お決まりのクリスマスらしい雰囲気はしないけれど、こういう曲があるのも、ありふれたクリスマスアルバムとは違って面白い。

<イエスの口づけ>はとても静謐さと神聖な雰囲気に満ちた曲。
メシアンのピアノ独奏曲は、微細な変化をしながらわりと長い曲が多い。これはまだマシな方(だと思う)。
同じ旋律が多少変形されながら、終盤近くでかなり盛り上がって、12分くらい続く。
ゆったりとしたテンポの旋律と、やや現代風だけれどかなり調和的な和声の響きが透明感があってとても美しい。
中盤以降は変化が大きく、クライマックス的な盛り上がりもしっかりあるので、途中で挫折した《鳥のカタログ》よりはずっと聴きやすい。

<「みどり児イエスに注ぐ二十のまなざし」の解析>(専門的なとても詳しい解説)を読むと、イエスにまつわる象徴的な意味がいろいろ込められているようで、仏教徒の私には理解不能。

最初と最後の曲は バッハ=ケンプ編曲版の《甘き喜びのうちに》(BWV 608)《いざ来たれ、異教徒の救い主よ》(BWV 659)
鐘が鳴り響いているようなピアノの響きがとっても美しいバッハ。やっぱりクリスマスアルバムは、バッハで始まり、バッハで締めくくり。
特に、最後の《いざ来たれ、異教徒の救い主よ》の厳粛な雰囲気と静かに切々と祈るような旋律がなんともいえません。

tag : ペンティネン バッハ ブゾーニ メシアン レーガー フランツ・リスト

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Yoshimiさん、こんにちわ。

クリスマス・アルバムですか、ポピュラー音楽系のDVDですが、

(1)Celtic Woman/ A Chrismas Celebration
(2)Charlotte Church/ In Jerusalem
(3)Tony Bennett, Placido Domingo, Vanessa Williams, Charlotte Church/ Our Favorite Things

の当たりは大好きです。

この頃のケルティック・ウーマンやシャーロット・チャーチの声や歌は素晴らしかったと思います。
クリスマスソング
matsumo様、こんにちは。コメントありがとうございます。

クリスマスアルバムだとやっぱり歌ものが多いでしょうね。
ずっと昔、歌曲に凝っていた頃に買った3大テノール&ダイアナ・ロス、ノーマン、ヘンドリックスなどのクリスマス曲集を持っています。わりと選曲が似ていますね。
今年はピアノの曲集をいろいろ見つけて、知らない曲もたくさんあるので、そっちを聴いています。
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yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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