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パーキン ~ バーバー/ピアノ作品全集
最近、ローレム、リーバーマンのピアノコンチェルトやソロを聴いてから、どうもアメリカの現代音楽とは相性が悪くはなさそうなので、少し範囲を広げて聴くようにしている。
コープランドやアイブズはちょっと相性が悪く(殺伐とした乾いた都会的な雰囲気やジャジーなところが合わないようで)、クラムは曲によりけり。

その中では、《弦楽のためのアダージョ》で有名なバーバーのピアノ協奏曲が、好みにわりと合っていた。
バーバーは、実はピアノの名手だったというので、それならピアノ作品もあるに違いないと思って探すと、ピアノ協奏曲以外に、ピアノ・ソナタ、組曲形式の作品や小曲がいくつか。作品数自体は多くはないが、印象的な曲が多い。

バーバーの出版されたピアノ独奏曲のうち、最初の作品は《Three Sketches》 (1923-24年) 。アメリカ人ピアニストでカーティス音楽院で同窓だったJeanne Behrendに献呈されている。
有名なのは、唯一のピアノ・ソナタ。それに《Excursions》と《Souvenirs》。《Souvenirs》はバレエ用に管弦楽版とピアノ連弾版にも編曲されていて、連弾のコンサートでは良く演奏されている。

バーバーのピアノ作品は、数が少ないのアルバム1枚で収まってしまうせいか、意外と録音がいろいろある。
ホロヴィッツはピアノ・ソナタを初演していたので有名だが、ホロヴィッツは全く聴かないピアニストなので、ここはCHANDOS盤のエリック・パーキンが録音した全集にした。パーキンは、音が綺麗で、演奏も洗練されたスマートな感じがするので。

Barber: Complete Works for Solo PianoBarber: Complete Works for Solo Piano
(1994/07/26)
Eric Parkin (Piano)

試聴する(米国amazon)


Excursions(遠足)Op. 20(1942-1944年)
出版楽譜のなかで、バーバーは"この曲集は、ローカルなアメリカ的語法の中に小規模な古典的様式を流し込んだスタイル。フォークソングや伝統楽器の痕跡がすぐに聴き取れる。”という趣旨の解説を書いている。
この曲はBehrendの強い勧めで書かれた小品。Behrendが第2曲のみ初演、ホロヴィッツが残りの3曲を初演。結局、1948年にBehrendが全4曲の完全版を初演した。

Ⅰ Un poco allegro
ブギウギ(boogie-woogie)スタイル。”ブギ”はもともとは20世紀初めに始まったピアノの演奏スタイルで、スウィングやシャッフルのリズムを繰り返すもの。(woogieの意味は?)
旋律自体は、メカニカルなモチーフがいろいろ組み合わさって展開していく。
どこかブリテンのピアノ曲のような雰囲気がする現代的な和声と透明感のある曲で、左手の伴奏がミニマル的に同音型を反復しているせいか、少し不可思議な雰囲気が漂う。

Ⅱ In slow blues tempo
和声的でメロディアスな旋律が美しく、洗練されたブルースのようなリズムが物憂げ。
なぜかドビュッシーの《月の光》を思い出してしまったのは、ところどころ和声や旋律の断片が似ているような気がしたせい。

Ⅲ Allegretto
解説によるとラテンアメリカのポピュラー音楽を変奏したという。
たしかにこの旋律はどこかで聴いたことがある。調べてみると、古いカウボーイ・ソングの”Streets of Laredo”という曲だった。でも、原曲の歌よりも、このバーバーの曲の方がずっと美しい。
この開放的で明るくて、とても懐かしい雰囲気がするメロディは、この曲集中一番美しくて印象的。ピアノの音に透明感と煌くような輝きがあって響きがとても綺麗。

Ⅳ Allegro molto
これもとても明るく陽気な舞曲風。
アメリカ人が聴くと、”barn-dances”(農業地帯の収穫祭りとかフェスティバルとかで踊るダンスらしい)や、地元民が弾くローカル色豊かなヴァイオリンの演奏(よく映画でみかける)を思い出させるらしい。


ノクターン (ジョン・フィールドを讃えて) Op. 33 (1959年)
フィールドのノクターンを聴いたことがある人なら、サブタイトルの”ジョン・フィールドを讃えて”という言葉がぴったりだとわかる曲。初演はジョン・ブラウニング。
フィールドのノクターンは左手の単音のシンプルなアルペジオの伴奏の上に、右手の綺麗で、これまたシンプルな旋律のノクターン。
ショパンのノクターンを聴きなれていると、フィールドはかなり単調で平板に聴こえる。弾いていても、面白いとは思った記憶が全くない。
このバーバーのノクターンは、ネオ・クラシカルなモダンで美しい和声で、右手の旋律部分は装飾的に凝ったパッセージなので、フィールドのノクターンよりははるかに夢想的でピアニスティック。
この幻想的な雰囲気は、グラナドスの《星々の歌》のピアノ独奏にちょっと似ている気がする。


ピアノ・ソナタ Op. 26(1948年)[<ハインの好きなクラシック>のとても詳しい解説]
アメリカ作曲家連盟の創立25周年を記念した委嘱作品。初演はホロヴィッツ。
不協和音や調性が拡大されたり、12音技法が応用されるなど、現代的な作曲技法が使われているわりには、コープランドやアイブズのピアノ・ソナタと比べると、旋律と和声がとても美しく、聴きやすい。

第1楽章 Allegro energico (速く、力強く) - Un poco meno mosso - Tempo 1
冒頭の符点のリズムの主題が少し厳しい感じがするけれど、旋律や和声はやや不協和的ではあっても響きは綺麗。
中間部では、《Excursions》の第1曲のようなミニマル的でメカニカルな旋律も聴こえてくる。
旋律自体に歌謡性はあまりなくて、幻想的な響きの和声がいろいろ組み合わされたやや印象主義的な感じがする曲。

第2楽章 Allegro vivace e leggiero(速く、軽く)
高音域主体の軽やかなスケルツォ。これもメカニカルなパッセージがモザイクのように組み合わされて流暢に流れるとりとめのないところがある。
左手の伴奏がワルツのようになるところが少しあって、ここは雰囲気が一瞬変わってどこかカントリー風。

第3楽章 Adagio mesto(遅く、悲しげに)
緩徐楽章なのでやや暗く憂いに満ちた穏やかな曲で、ここも和声の響きが幻想的。

第4楽章 Allegro con spirito(速く、活気をもって)
現代的な和声とリズムの4声(実は3声だけのパートが多い)のとっても難解なフーガ。
冒頭はブリテンのピアノ曲のようなシンプルでモダンな感じがしたが、徐々に壮麗な雰囲気に変わっていく。
旋律自体はそれほどロマンティックなものではないわりには、叙情感も強くてとても美しいフーガ。一転して、ラストはかなり力強く厳粛な感じの旋律で終っている。

Ballade Op. 46(1977年)
長らくピアノ曲の作曲から離れていたので、完成させるまでにかなり苦労したらしい。
この頃、NYの住まいをCapricornから広いアパートメントへと引越ししたせいか、落ち着かず沈滞していた精神状態を反映していると言われるバラード。
たしかに、バラードにしては、華やかでもロマンティックでもなくて、冒頭はかなり暗い雰囲気。中間部になると、技巧的なパッセージが現れるが、相変わらず厳しいトーン。最後は冒頭主題が再び現れ、ミステリアスなピアニッシモで終っている。


Souvenirs(思い出) Op. 28 (ピアノ編)
原曲は4手用のピアノ曲。さらに、ピアノ独奏版とバレエ用の管弦楽版に編曲。(2台のピアノ用編曲版があるが、これはバーバーの作品ではない)
連弾曲としては結局人気がある曲らしく、良くコンサートで演奏されているようだ。

戦前の米国のダンスホールで流れていたような音楽(映画のなかで聴いたことがある)が、不協和音が混ざって聴こえてくる。
子供時代に母親と旅したニューヨークの思い出にまつわる曲といわれているが、シニカルさが隠されているという批評家もいる。3曲目以降のサブタイトルは、曲想とオーバーラップさせると、ちょっと意味ありげな感じ。

Ⅰ ワルツ(ホテルのロビーにて)
    サティ風の軽やかで美しいワルツ。
Ⅱ ショッティッシェ[Schottische](3階の廊下)
    19世紀中頃にヨーロッパで流行した舞曲。
    どこかで聴いたことがあるようなワルツ。
Ⅲ パ・ドゥ・ドゥ(ダンス・ホールの片隅)
    パ・ドゥ・ドゥとはバレエの”2人の踊り”。
    これはスローテンポで憂いを帯びた和声がとても美しい曲。
Ⅳ ツー・ステップ(パームコートでのティータイム)
    Two-Stepとは、アメリカ発祥の社交ダンス。
    軽快でとても楽しげで、明るい陽射しが差し込んでいるような雰囲気。
Ⅴ ためらい~タンゴ(ベッドルームで)
    不協和音でちょっと歪んだようなタンゴで始まる。
    続いては、わりと響きがまともになった美しいタンゴ。
    少しだけ華やかに盛り上がり響きが不協和的に。
Ⅵ ギャロップ(翌日の昼下がり、浜辺にて)
    左手の和音による規則的な伴奏に乗って、右手の旋律は
    明るく楽しげな雰囲気。中間部は気だるい感じもするが、最後は元に戻って快活に。

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Author:yoshimi
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クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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