コリリアーノ/オスティナートによる幻想曲 

2010, 02. 13 (Sat) 18:00

コリリアーノのピアノ独奏曲のなかで、有名なのは《エチュード・ファンタジー》と《オスティナートによる幻想曲》の2曲。
コリリアーノは、米国では人気のある現代音楽の作曲家なので、数少ないピアノ作品といえど、アメリカ人ピアニストの録音がいろいろある。
《エチュード・ファンタジー》は、ハフ、トッコ、ジャルバート、シルマーなど。
ハフの演奏はいつもながらシャープで冴えていたが、《オスティナートによる幻想曲》の方は録音していない。(この曲はハフが弾くタイプの曲ではない感じがする。)
好みから言えば、《エチュード・ファンタジー》は難度の高いピアニスティックな練習曲であり、変奏形式の幻想的な組曲でもあるという2つの性格が相まって、オスティナートによる幻想曲》よりもずっと面白い。

《オスティナートによる幻想曲》(1985年)は、10分少しの短い曲でテクニック的にはそれほど厄介でもなさそうな感じはするけれど、逆にピアニストのイマジネーションの方がかなり試される。

録音しているピアニストは、グリモー、トッコ(コリリアーノ作品の演奏には定評のあるピアニスト)、ジャルベール(録音にはコリリアーノも協力したらしい)、シルマー(演奏時間が14分と長い)と、アックス(カップリングにトッコの《エチュード・ファンタジー》、ヨーヨー・マーのソロ曲もあり選曲がユニーク)など、選択肢はいろいろ。演奏時間はピアニストによってかなり幅があり、10分~14分くらい。

NAXOS盤は、コリリアーノの有名な《レッド・ヴァイオリン》がらみの曲も収録されている。
ニーナ・ティクマンは10分くらいとかなり短い時間で弾いている。テンポが遅くて音がまばらな曲はあまり得意ではないので、これはわりと集中して最後まで聴ける。
音に透明感と色彩感があって綺麗な響きで、ファンタスティックな感じはかなりする。後半の盛り上がり方がかなりドラマティック。(個人的にはシルマーの演奏よりも好み。)

Corigliano: Music for Violin & PianoCorigliano: Music for Violin & Piano
(2008/12/16)
Ida Bieler (violin), Nina Tichman (piano)

試聴する(米国amazon)




コリリアーノの記したプログラムノートによると、この幻想曲はベートーヴェンの交響曲第7番第2楽章で4分以上に渡って繰り返し演奏される有名なパッセージが元になっている。
ベートーヴェンのこのミニマリスティックに近い素材の扱い方と、コリリアーノが書きたかった曲~演奏者自身がリピートするパターンの持続時間を決める~とが結びついて、このミニマリスト的テクニックの実験的な作品につながったという。

”Fantasia”という名の通り、和声の響きがとても幻想的で美しい曲。
前半は起伏の乏しい曲なので、あまりトロトロ弾かれると単調な感じがしてくるけれど、何回が聴くとそれにも慣れてしまった。

前半は、オスティナートの音型が雨音のバリエーションみたいにいろいろ変化するので、和声の響きの移り変わりが美しく聴こえる。(ミニマル的といっても、グラスよりはずっと飽きずに聴ける。)
第7交響曲の第2楽章のモチーフの断片が、時々挿入されているのはちょっと面白い。

後半の初めあたりで、交響曲のモチーフがかなりまとまった旋律として演奏されるので、デジャヴのような懐かしい感じがする。
このモチーフの一部を素材にして、鐘の音がエコーするようなオスティナートがとても幻想的。
クレッシェンドしながら、オスティナートの音型が複雑化し、さらに交響曲の旋律が断片的にかぶさって、クライマックス的に盛り上がる。
最後は弱音に戻って、静かなオスティナートを背景に、再び交響曲の旋律が回想のように演奏される。

コリリアーノによると、色彩感・多様性・想像力がこの曲の演奏には不可欠であり、ピアニストはそれに気づかないといけない。
ピアニストのセンスとリピートするパターンをどれくらいの時間続けるのかを演奏者自身が決めることによって、この曲の最終的な形が変わる...など、作曲者から演奏者にいろいろ注文がついている。
聴いてみれば、ピアニストの感性と想像力が試される曲だというのはよくわかる。ミニマル的な曲に抵抗がなくこの曲が気に入ったなら、いろんなピアニストで聴き比べてみると面白いかもしれない。

タグ:コリリアーノ

※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。

0 Comments

Leave a comment