カヴァコス&デメンガ&パーチェ ~ メンデルスゾーン/ピアノ三重奏曲第2番
2009-12-21(Mon)
メンデルスゾーンの2曲あるピアノ三重奏曲のうち、人気があるのが第1番。
どちらか1曲を録音する場合は、必ずといっていいほど第1番だけが録音されて、ブラームスやシューマンとかのピアノトリオとカップリングされている。
初めて第1番と第2番を聴くと、第1番の方が旋律がメロディアスでわかりやすいので、記憶に残りやすい。
第2番は、初めて聴いた時は、旋律の美しさが第1番に比べて弱い感じがして、構成がちょっとわかりにくい印象。
繰り返し聴くと、ストレートにメロディアスになりすぎない品の良さがあり、陰翳が濃く、明暗のコントラストも強くて、ドラマティックな感じがする。
第1楽章の明暗が交錯する流麗さと力強さはベートーヴェン的な雰囲気がするし、第4楽章は格調高く、広がりと清々しさを感じさせるエンディングが素晴らしく良い。
第2番は、主題とその展開が凝っていて、構成もずっと入り組んでいるので、聴けば聴くほど第2番の方が内容的に充実している気がする。
それもそうで、第2番はメンデルスゾーンの生前に出版された最後の室内楽曲なので、構成が緻密で各パートの演奏効果も高く、円熟した作曲技法で書かれた曲だという。
ピアノパートは、もともと華麗な技巧が詰め込まれていた第1番に、さらに輪をかけて技巧的でピアニスティックになっている。
ピアノ三重奏曲第2番 ハ短調 Op.66
第1楽章 Allegro energico con fuoco
密やかに始まる短調の主題は、第1楽章とは違ってほの暗い情熱的な雰囲気が漂っている。
長調の第2主題は伸びやかで開放感があり、この2つの主題が、光と影、緊張と弛緩のコントラストのように、何度も交代する。
展開するにつれ、第1主題に決然とした力強さのある旋律がつけ加わり、第2主題は短調に転調したりと、段々テンションが上がっていく。
主題の展開がわりと凝っていて、聴こえていく旋律のバリエーションが多く、シンプルに展開していく第1番の第1楽章よりもずっと変化に満ちた曲。
ピアノパートは聴くからにアルペジオがとても多く、流麗な流れのなかにも感情が浮き沈んでいくようなうねりを感じさせる。明暗が交錯しながら緊迫感が高まっていくので、メンデルスゾーンにしては彫りの深い曲。
第2楽章 Andante espressivo
第1番ほどにメロディアスな”無言歌”風の旋律ではなく、とても穏やかで柔らかな雰囲気の旋律。
たびたび短調に転調した旋律が挟まれるので、明るい色調のなかにもさらりとした哀感が漂うとても美しい楽章。
第3楽章 Scherzo. Molto allegro quasi presto e vivace
冒頭から小刻みな動きのヴァイオリンとチェロの疾走感のある旋律が小気味良い。この楽章は、弦楽オケのミニチュア版を聴いているような旋律で、第1番よりも疾走感が強い。
メンデルスゾーンの交響曲(たぶん”イタリア”?。長い間聴いていないので記憶が曖昧)にも、こういう無窮動的な旋律があったような気もする。(CDの解説では、≪真夏の夜の夢 序曲≫を連想するようなスケルツォだという。)
この主題は弾むようなリズム感が印象的。25小節目以降は、パーチェのピアノのアクセントを効かせたリズムが、弾力があってとても躍動的。
第1番と同じく、とにかくテンポが速いので、ピアニストの指回りの良さがものをいう。(イストミンの弾き方だと少しゆっくりめで、雰囲気が違っていて面白い。)
ピアノに限らず、ヴァイオリンとチェロのパートもすこぶる難しいらしい。
再び冒頭主題が再現されて、ピアノがD音を3つ続けてタタタッと弾く短いフレーズが2ヶ所追加されている。音色が全く違う高音なので、とても耳に残る響き。オケのどこかのパートを模したような感じがする。
第2主題は舞曲風(とでもいうのか)でちょっと優雅。テンポがやや落ちてレガートな旋律なので、ほっと一息。再び主題にもどりまた第2主題が現れて、最後は第1番と同じく弦のピッツィカートで、軽やかなトリオで終る。
第4楽章 Finale. Allegro appassionato
冒頭は優雅だけれどやや憂いのある短調の主題。第2主題は、大らかで開放感のある明るい色調の旋律。
第1主題がいろいろ変形しながら、第2主題と交代で頻繁に現れ、第2主題を展開していくところでは第1主題の旋律が並行して現れたり、この楽章は展開がかなり面白い。
この第2主題はどこかで聴いたような気がする。CDの解説によると、直接的には引用してはいないが、良く知られた多くのコラールに似た旋律。(”引用している”と書いている解説が他にもいろいろあるが、引用されているとされるコラールとは旋律が微妙に異なるらしい。)
このコラール風の旋律がクライマックスで鳴り響いていると、メンデルスゾーンの交響曲”宗教改革”やオラトリオ、それにブラームスの宗教音楽を思い起こさせるらしい。
たしかに、第2主題には喜びにきらめくような明るさと清々しさがあって、終盤で盛り上がっていくところを聴いていると、優雅で格調高く、霧が晴れて澄み渡った空のようなイメージ。
この爽やかな高揚感のあるエンディングは聴けば聴くほど素晴らしく、この第4楽章に限らず、他の楽章も第1番とは違った奥深さがあって格調の高い名曲だと思います。
メンデルスゾーン/ピアノ三重奏曲第1番の記事
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どちらか1曲を録音する場合は、必ずといっていいほど第1番だけが録音されて、ブラームスやシューマンとかのピアノトリオとカップリングされている。
初めて第1番と第2番を聴くと、第1番の方が旋律がメロディアスでわかりやすいので、記憶に残りやすい。
第2番は、初めて聴いた時は、旋律の美しさが第1番に比べて弱い感じがして、構成がちょっとわかりにくい印象。
繰り返し聴くと、ストレートにメロディアスになりすぎない品の良さがあり、陰翳が濃く、明暗のコントラストも強くて、ドラマティックな感じがする。
第1楽章の明暗が交錯する流麗さと力強さはベートーヴェン的な雰囲気がするし、第4楽章は格調高く、広がりと清々しさを感じさせるエンディングが素晴らしく良い。
第2番は、主題とその展開が凝っていて、構成もずっと入り組んでいるので、聴けば聴くほど第2番の方が内容的に充実している気がする。
それもそうで、第2番はメンデルスゾーンの生前に出版された最後の室内楽曲なので、構成が緻密で各パートの演奏効果も高く、円熟した作曲技法で書かれた曲だという。
ピアノパートは、もともと華麗な技巧が詰め込まれていた第1番に、さらに輪をかけて技巧的でピアニスティックになっている。
![]() | Mendelssohn: Violin Concerto in E minor; Piano Trios Nos. 1 & 2 (2009/02/16) Leonidas Kavakos (violin), Patrick Demenga (cello), Enrico Pace (piano) 試聴する(米国amazon) |

第1楽章 Allegro energico con fuoco
密やかに始まる短調の主題は、第1楽章とは違ってほの暗い情熱的な雰囲気が漂っている。
長調の第2主題は伸びやかで開放感があり、この2つの主題が、光と影、緊張と弛緩のコントラストのように、何度も交代する。
展開するにつれ、第1主題に決然とした力強さのある旋律がつけ加わり、第2主題は短調に転調したりと、段々テンションが上がっていく。
主題の展開がわりと凝っていて、聴こえていく旋律のバリエーションが多く、シンプルに展開していく第1番の第1楽章よりもずっと変化に満ちた曲。
ピアノパートは聴くからにアルペジオがとても多く、流麗な流れのなかにも感情が浮き沈んでいくようなうねりを感じさせる。明暗が交錯しながら緊迫感が高まっていくので、メンデルスゾーンにしては彫りの深い曲。
第2楽章 Andante espressivo
第1番ほどにメロディアスな”無言歌”風の旋律ではなく、とても穏やかで柔らかな雰囲気の旋律。
たびたび短調に転調した旋律が挟まれるので、明るい色調のなかにもさらりとした哀感が漂うとても美しい楽章。
第3楽章 Scherzo. Molto allegro quasi presto e vivace
冒頭から小刻みな動きのヴァイオリンとチェロの疾走感のある旋律が小気味良い。この楽章は、弦楽オケのミニチュア版を聴いているような旋律で、第1番よりも疾走感が強い。
メンデルスゾーンの交響曲(たぶん”イタリア”?。長い間聴いていないので記憶が曖昧)にも、こういう無窮動的な旋律があったような気もする。(CDの解説では、≪真夏の夜の夢 序曲≫を連想するようなスケルツォだという。)
この主題は弾むようなリズム感が印象的。25小節目以降は、パーチェのピアノのアクセントを効かせたリズムが、弾力があってとても躍動的。
第1番と同じく、とにかくテンポが速いので、ピアニストの指回りの良さがものをいう。(イストミンの弾き方だと少しゆっくりめで、雰囲気が違っていて面白い。)
ピアノに限らず、ヴァイオリンとチェロのパートもすこぶる難しいらしい。
再び冒頭主題が再現されて、ピアノがD音を3つ続けてタタタッと弾く短いフレーズが2ヶ所追加されている。音色が全く違う高音なので、とても耳に残る響き。オケのどこかのパートを模したような感じがする。
第2主題は舞曲風(とでもいうのか)でちょっと優雅。テンポがやや落ちてレガートな旋律なので、ほっと一息。再び主題にもどりまた第2主題が現れて、最後は第1番と同じく弦のピッツィカートで、軽やかなトリオで終る。
第4楽章 Finale. Allegro appassionato
冒頭は優雅だけれどやや憂いのある短調の主題。第2主題は、大らかで開放感のある明るい色調の旋律。
第1主題がいろいろ変形しながら、第2主題と交代で頻繁に現れ、第2主題を展開していくところでは第1主題の旋律が並行して現れたり、この楽章は展開がかなり面白い。
この第2主題はどこかで聴いたような気がする。CDの解説によると、直接的には引用してはいないが、良く知られた多くのコラールに似た旋律。(”引用している”と書いている解説が他にもいろいろあるが、引用されているとされるコラールとは旋律が微妙に異なるらしい。)
このコラール風の旋律がクライマックスで鳴り響いていると、メンデルスゾーンの交響曲”宗教改革”やオラトリオ、それにブラームスの宗教音楽を思い起こさせるらしい。
たしかに、第2主題には喜びにきらめくような明るさと清々しさがあって、終盤で盛り上がっていくところを聴いていると、優雅で格調高く、霧が晴れて澄み渡った空のようなイメージ。
この爽やかな高揚感のあるエンディングは聴けば聴くほど素晴らしく、この第4楽章に限らず、他の楽章も第1番とは違った奥深さがあって格調の高い名曲だと思います。

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