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カピュソン&ブラレイ ~ ベートーヴェン/ヴァイオリンソナタ全集
フランス人ピアニストのフランク・ブラレイは、数年前に読んだ『クラシックは死なない!』というCDガイドブックで紹介されていて知ったピアニスト。
あまり有名ではないけれど、「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン」で演奏していたので、コンサートを聴いたことがある人もいるはず。
録音はソロアルバムが数枚(ベートーヴェン・シューベルト・ガーシュウィン・シュトラウス・ドビュッシー・ラヴェルなど)、エリック・ル=サージュとのピアノデュオやカピュソン兄弟との室内楽のCDも出ている。

かなり古い年代物のスタインウェイで録音したベートーヴェンのピアノ・ソナタ集や、ル=サージュとの2台のピアノのモーツァルトの録音が結構良くて、ずっと気にはなっていたけれど、なかなかソロで聴きたくなる曲の新譜が出てこない。
たまたま見つけた<hkawaharaさんのブログ<クラシックCD感想メモ>で、ブラレイ&カピュソンのベートーヴェンのヴァイオリンソナタ全集が秋にリリースされていたのを発見。
ベートーヴェンのヴァイオリンソナタならピアノパートがソロ並に充実していて、とても好きな曲集。
試聴してみると、ブラレイのピアノの美しいこと!音の繊細さといい品の良さといい、若いフランス人デュオらしさのある、ドイツ風のちょっと重たいベートーヴェンとは違って、優美で爽やか。
直観的にピタっとくるものがあったので、これは迷わずすぐにオーダー。

ヴァイオリンソナタとかの室内楽は、ヴァイオリンの音がよほど好みに合わない限り、だいたいピアニストで選んでいるし、もっぱらピアノ伴奏の方に耳が集中する。
ヴァイオリンは初めて聴くカピュソン。ブラレイと初めて出会って以来、14年間に渡ってベートーヴェンのを一緒に演奏してきたので、気心が通じたもの同士らしい。
HMVの紹介文には、2009年~2010年のシーズン中、ヴァイオリンソナタの全曲演奏(約3時間半)のコンサートを欧州で50回も開催。このアルバムの録音はそのシーズンの最中の2009年9月~10月。
カピュソンのヴァイオリンは、まろやかで色彩感のあるニュアンスの多彩な音。ふんわりとした少し軽めの音とタッチなので、ツィンマーマンやスークのようなもっと線のしっかりした引き締まった音の方が好きだけれど、ブラレイのピアノの音質も軽やかなのでよく似合っているし、音楽の方向性がぴったり。

ベートーヴェンのヴァイオリンソナタは全集と抜粋盤を数種類持っていて、全集を聴くときはスーク&パネンカ。
抜粋盤ならだいたいパールマン&アシュケナージ。6番だけはカヴァコス&パーチェのライブ録音。
ピアノ伴奏は美音のパネンカも良いけれどちょっと控え目なところがあって、曲によっては物足りない感じがする。
他の曲ではあまり魅かれることがないアシュケナージのピアノが、珍しくも申し分なく素晴らしく思えて、ピアノ伴奏だけ聴きたいなら、今まではこれが一番。
ブラレイのピアノは、音の美しさと表現の繊細さはパネンカやアシュケナージを上回るくらい。あまりに良かったので、ドビュッシーとラヴェルのアルバムも聴きたくなって、これもすぐに買いました。

Complete SonatasComplete Sonatas
(2010/09/06)
Renaud Capucon (Violin), Franck Braley (Piano)

試聴する(米amazon)
このアルバムは、なぜかリスナーレビューやブログ記事がほとんどない。
リリースされた間もないからか、あまり演奏者がそれほど一般的にメジャーではないからか、それとも演奏スタイルが受けないのか、よくわからない。
海外のamazonのレビューも少なく、クレーメル&アルゲリッチが好みのリスナーが低い評価をつけていた。あの2人の演奏に比べれば、正反対に優美で弱音の柔らかさが美しいややマイルドなタッチなので、ああいうハイテンションなのが好きな人には受けないらしい。

                                

試聴するときは、好きな第4番の第1楽章と第6番の第3楽章でいつもチェックする。この2曲の演奏でピタっとくれば、他の曲でも、あまり波長が外れることがないので。
実際CDで全曲聞いてみても、全体的に速めのテンポで軽快なタッチがとても爽やか。旋律の流れがしなやかで、細かい起伏をつけてコロコロと移り変わる表情が多彩。
特に、ピアノの弱音のタッチが柔らかくてふんわりと羽毛のような質感、高音の弱音はとっても甘い響きで、口のなかでとろける砂糖菓子のよう。
打鍵して減衰していく音のなかに微妙なニュアンスがあるようで、ブラレイはベートーヴェンやシューベルトを年代物のスタインウェイで弾いていただけあって、ソノリティに対して強いこだわりを感じる。
フォルテも強打することなくとも、中味のつまったしっかりした響きでとても品が良く。
音質が軽めで響きが柔らかく、全体的に弱音域側によっている感じで、その弱音もかなり小さいので、フォルテは相対的に大きく聴こえて、ダイナミックレンジが(実際よりも)わりと広い感じがする。
この曲はもっと音が強くて線のしっかりピアノが好きなはずだったけれど、ブラレイのピアノの音の美しさとニュアンス豊かな繊細さが素晴らしくて、それだけで聴く価値は充分。

第4番の第1楽章は、ちょっと甘美で優しげな曲想。ブラレイのピアノは高音がとても甘くて愛らしくて、この曲にぴったり。儚げに響に響く弱音は羽毛のように軽やかなので、フォルテの強さが引き立って、強弱のコントラストが鋭く明瞭。
第6番の第3楽章の変奏の弾き分け方は、ピアニストによって結構違いが出てくるので、聴き比べると好みに合うかどうかはっきりわかる曲。ブラレイのタッチはかなり軽やかだけれど、アーティキュレーションは好みにぴったり。
滅多に聴かない初期の3曲(第1番から第3番)は、ニュアンスの満ちた美音と繊細な感情が軽やかに交錯するような表情豊かな演奏なので、珍しくも耳が引き寄せられてしまい、おかげで第1番と第3番の面白さを発見。
好きではないスプリング・ソナタも、冒頭のピアノの音があまりに美しいので、珍しくもそのまま最後まで聴いてしまった(相変わらず曲は好きではないけれど)。

第9番の第1楽章は、高速で弾くピアノパートが厄介なので、指回りが悪いとヴァイオリンに遅れがちになるところがあって、時々ひやひやさせられる曲。最初からテンポを落として弾いている人もいるけれど、これだとスピード感と迫力に欠けてしまう。
ブラレイはかなり速めのテンポでももたつくことなく、ヴァイオリンにピタッと合わせて、タッチと音質が軽めなので力感は緩いけれど、軽快なスピード感。
途中で時々挿入される緩徐部分の弱音の静けさと繊細なニュアンスのせいで、前後の急速部分とのコントラストが鮮やかに聴こえる。
ただし、息詰まるような急迫感..といったものは稀薄。ハイテンションで暑苦しい演奏はたぶんこの2人には似合わないだろうし。
このピアノの音は、スタインウェイにしては、落ち着いた輝きがあって、圧迫感のない軽やかな音に聴こえる。これはスタインウェイなんだろうか?ブックレットにピアノのモデルの記載がないので確かめられないけれど。

最初試聴した時はベートーヴェンにしては、ちょっと柔らかくて優しい感じに思えたけれど、CDで全曲聴いていると、強奏部分はむやみにバンバン、ギーギー弾くことなく、軽やかで切れの良さがあってほどよい力強さ。
明るくまろやかな音色で聴き疲れすることがなく、素直で若々しさのある開放感としなやかで優美な品の良さがあって、とても爽やか。
ブラレイのピアノが素晴らしく魅力的なので、今までほとんど聴いていなかった初期の曲や第10番までじっくり聴くことができたのが、とっても良かったところ。
ヴァイオリンはやっぱりスークの方が好きだけど、録音を選ぶときはピアニスト優先なので、全集盤ならスーク&パネンカと並ぶ(かそれ以上)の定番になりそう。

tag : ベートーヴェン ブラレイ

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わ、偶然!
yoshimiさん、こんにちは。
偶然!とは言っても、ブラレイの方ではないんですが
カプソン兄弟が、実は私の中では今一番気になる存在で!
こちらの記事に登場してるのを見てびっくりです。
私は今まであんまりヴァイオリンには興味がなかったんですが
バッハのコンチェルトを弾いてる映像に心を奪われてしまったんです。
http://www.youtube.com/watch?v=SDDNlpRHKXM

で、ベートーヴェンのCDは結構あるみたいなのに
バッハの録音は全然だなあと思ってたところなんですよー。
(弟のチェロと一緒に入れてるのぐらいかな)

せっかくヴァイオリンにも興味が出てきたところだから
ベートーヴェンも聴いてみようかな。
ブラレイのピアノは今までノーチェックだったんですが、
試聴してみたらとても軽やかで素敵な音ですね。
いいかも!
カピュソンのヴァイオリン、若々しく爽やかですね
アリアさん、こんにちは。

ほんとに偶然ですね!ペライアのエチュードの時といい、興味が重なることが多いですね~。

カピュソンのバッハ、聴いてみました。躍動的で弾いている姿も踊るような感じだし、やっぱり若々しくて爽やか。
私は昔ながらの落ち着いたタッチのスークや、古楽ヴァイオリンで聴くことが多いので、かなり雰囲気が違います。
カピュソンのような軽やかでしなやかなスタイルが、現代的で今は人気がありそう。
バッハのヴァイオリン曲ならヴァイオリンソナタが一番好きなので、これをブラレイと録音してくれたら嬉しいですね~。

ベートーヴェンのヴァイオリンソナタは、スプリングやクロイチェルは有名ですが、他の曲もそれぞれ個性があって面白く聴けます。
このカピュソン盤は全集の新盤にしては価格も手ごろでとっても薦め。
この曲集には名盤がたくさんあるし、こちらは優美で軽やかで風通しが良いベートーヴェンなので、普通はファーストチョイスにはならないでしょうが、初めて聴くなら好きなヴァイオリニストで聴く方が馴染みやすくて良いと思います。

ブラレイの音、なかなか良いでしょう。ベートーヴェンを弾いている時のブラレイの音は、とても好きな音なんです。
繊細だけど神経質さがなくて、明るく暖かい音色でとっても聴きやすいし、第4番の第1楽章の高音の甘い響きを聴いて、すっかり虜状態。
ドビュッシー&ラヴェルの方は、ベートーヴェンとはまた違ったタッチで、かなり個性的。これはなかなか面白いです。
もう記事に書いたので、次回もブラレイです。
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yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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