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ビェルケ ~ ニールセン/ピアノ作品全集
ニールセンといえば交響曲第4番《不滅》。第5番も有名らしく、他にはクラリネット協奏曲と木管五重奏曲が代表作。
ニールセンがピアノを見たのが10代半ばで、その音色の多彩さと表現力の幅広さにいたく感動したらしい。
ピアノが得意というわけではなかったせいか、ピアノ作品はあまり多くなく、コンチェルトは残さず。
独奏曲もCD2枚分くらいの数しか書いていない。
それにしては作風は多彩で、旋律や和声も美しく、数は少なくても内容的にはかなり充実している(と思う)。

ニールセンはノルウェーあたりの作曲家だと思っていたらデンマークの人。グリーグやシベリウスのピアノ曲のような北欧の薫りがする。
《シャコンヌ》以前の作品は、グリーグよりもひんやりさっぱりした叙情感のなかにもほのかな暖かみがあり、旋律や和声は綺麗だけれど、短調の曲は厳しくストイックな雰囲気が漂っている。
こういうタイプの曲は温暖な気候の土地でなく、冬の寒さの厳しい北方でしか生まれないような気もする。
わかりやすく言えば、ベートーヴェンの面影を残しながら、ブラームスとシューマンをブレンドしたとでも言えば良いのか...。
《シャコンヌ》以降、作風が変わったようで、徐々に調性感が曖昧なところが増えて、旋律もかなり自由なフレーズが増えて、音をオスティナートすることも多くなって、ドビュッシーとプロコフィエフを連想させるような、現代的なタッチ。

なぜかニールセンのピアノ作品全集の録音は結構多く、ミナ・ミラー(Danacord)、クリスティーナ・ビェルケ(CPO)、エリザベト・ウェステンホルツ(BIS)と女性ピアニストに人気がある。
他には、ピーター・セイヴェライト(Naxos)、マーティン・ロスコー(Hyperion)とアンスネス(これは5曲のみ)など。
ロスコー、アンスネス以外の録音はNMLにあるのであれこれ聴いてみると、ミラーとビェルケは叙情性が強く、反対にウェステンホルツはかなり筋肉質的な力強いタッチ。
ミラーはLP時代からニールセンの録音では定評があるらしい。
録音が新しいビェルケとウェステンホルツは音が良い。
結局、《交響的組曲》を聴き比べてみて、叙情的で色彩感のある音が綺麗なニールセンと同国人のビェルケ盤で。

Carl Nielsen: Complete Piano WorksCarl Nielsen: Complete Piano Works
(2008/11/18)
Christina Bjørkøe

試聴する(米国amazon)


ニールセンのピアノ作品の代表作とされるのは、《シャコンヌ》と《主題と変奏》。《不滅》と同じ年に書かれて曲で、静と動が交錯して結構ドラマティック。
聴きやすくて人気がある(らしい)のは《5つの小品》。
《クリスマスの夢》も短いながらも、”きよしこの夜”の旋律をモチーフにしたとても清々しく美しい、ちょっとモダンな曲。
《交響的組曲》は力強いシンフォニックな曲。こっちの方がニールセンのイメージに合っているような...。
ほのかな暖かさと透明感のある叙情はあるけれど、背後にストイックな厳しさも感じさせるところが、叙情性の強いグリーグや、ちょっと無愛想なシベリウスのピアノ曲と違っていて、これはとっても好みに合っている。
ピアノ協奏曲を書いていなかったのが残念。

《5つの小品/5 Piano Pieces》Op.3(1890)
1. 民謡 "Folketone"
   やや陰鬱で悲愴な雰囲気の旋律で始まり、一瞬長調に転調するがすぐに元の短調にもどってしまう。
2. ユモレスク "Humoreske"
   どことなく哀感の漂う短調のワルツ。中間部はとても優雅で明るいワルツに変わる。
   この冒頭の旋律はとても印象的で、どこかで聴いたことがある曲。
   もしかしてとても有名な曲なのかも。
3. アラベスク "Arabeske"
   これも短調の曲で、ちょっとおっかなびっくりという感じの変わったリズム。
4. ミニョン "Mignon"
   アラベスクと左手のリズムが似ている。冒頭は静かで、途中と最後で感情がいきなり噴出したようなフォルテの和音。
5. 妖精の踊り "Alfedans"
   この曲も短調の密やかなワルツ。この小品集は短調ばかりだった。

《交響的組曲/Symphonic Suite》Op.8(1894)
タイトルどおり、シンフォニックな響きが荘重でストイックな雰囲気。この曲集中、一番好きな曲。
静と動、緩と急、短調と長調が交錯して、起伏が激しく立体感がある。
和音が多いので下手なペダリングだと響きが混濁しそうだけれど、ビェルケのピアノは響きが厚くても音は綺麗。

第1曲 Intonation
冒頭は叩きつけるように力強い和音で始まり、主題の旋律は悲愴で厳粛な面持ち。重音を多用して響きがちょっとブラームス風かも。シューマンの《交響的練習曲》か何かにも似ているような...。
ブラームスとシューマンをブレンドしたような曲にも聴こえてくるし、ゴドフスキーが編曲したバッハの《無伴奏ヴァイオリンのパルティータとソナタ》の響きにも似ていて、バロックとロマン派が融合したような感覚。

第2曲 Quasi Allegretto
まどろむような穏やかでゆったりとした旋律で始まり、中間部はアレグレットの変奏で和音の響きが華やか。

第3曲 Andante
静かな旋律はブラームス風の夢見心地のような美しさ。
徐々にテンポが上がり和音の厚みが増して短調に変わり、荘重な雰囲気に。
最後は徐々に明るく開放感が強くなって、調和したように長調の和音で終る。

第4曲 Finale: Allegro
Finaleらしく、冒頭はテンポが速くて軽快で明るい雰囲気旋律。
しばらくすると、和音主体の旋律に変わって響きの厚みで重々しくなり、次にコラールのような静謐な旋律に。
最後はフィナーレに向かって加速し、清々しく明るい輝きと開放感のある旋律で締めくくり。

《6つのユモレスク・バガテル/6 Humoresque-Bagatelles》op.11(1894-97)
ほのぼのした暖かさと楽しさのある小品。1分くらいの短い曲が6曲で、曲想もリズムもそれぞれ違っていて、とても表情豊か。
 タイトルは、”Good Day, Good Day”,”The Top”,”A Little Slow Waltz”,”Jumping Jack”,”Doll March”,”Musical Box”。

《祝祭前奏曲「世紀の変わり目にて」/Fest-praeludium (Festival Prelude) "Ved Aarhundredskiftet" (Turn of the Century)》(1900)
 堂々とした晴れやかなファンファーレのような曲。

《クリスマスの夢/Drommen om Glade Jul (The Dream of Silent Night)》(1905)
この曲は何回聴いても綺麗でクリスマスにぴったり。
最初と最後に”きよしこの夜~”の旋律が出てくるけれど、途中は短調がかった翳りのあるノクターン風の旋律が流れて、クリスマス特有の静謐な雰囲気が強くなっている。

《シャコンヌ/Chaconne》(1916)
ニールセンが51歳の時に作曲した初めての変奏曲。主題と19の変奏で構成。ほとんどが3/4拍子の8小節フレーズの組み合わせ。
対位法を使った透明感のある静謐な曲。変奏曲にしてはかなり自由な変奏で、ちょっと幻想的な雰囲気がする。
右手と左手の旋律が、単音で構成されている部分が多く、重音でも厚みがそれほどないので、とてもシンプルで綺麗。
フォルテの部分では、バッハのシャコンヌのように静謐・厳粛な雰囲気が漂っているし、全体的に氷のような冷んやりとした音色と透明感のある響きが美しい。終盤ではコーラル風の旋律とアルペジオやスケールの重なる響きがとても澄み切って清々しい。
たまにプロコフィエフの《束の間の幻想》に出てくるような下降調の旋律が聴こえてきたり、和声的にも似ているところがある感じがする。
ベートーヴェンやブラームスの構造堅牢な変奏曲を聴き慣れていると、少しつかみどころがない感じがするけれど、下手に変奏パターンを聴き分けようとしなければ、曲自体は旋律も和声も現代風で美しくて聴きやすい。

《主題と変奏/Tema med variationer (Theme with Variations)》Op.40(1917)
《シャコンヌ》よりも、形式的にかっちりした感じは強くなっていて、シャコンヌよりは変奏のパターンが多様。
変奏はかなり自由に書かれていると感じるけれど、何回か聴いていると、変奏の移る変わりがよくわかってきて、結構面白く聴ける。
楽譜を見ながら聴けば、構成がはっきり把握できて、もっとわかりやすくなりそう。
前半と後半は、高音域中心で音があちこち飛び跳ねて動的な変奏が多い。和音の連打が入った行進曲風になったり、対位法が使われたり、旋律が散文的で時々幻想風。
間に挟まれた変奏は、急にテンポが落ちて、ゆったりとした和音でつないでいく旋律。左手は低音域中心なので、かなり落ち着いた内省的な雰囲気。
《シャコンヌ》も《主題と変奏》も、旋律も和声も美しいけれど、全編短調を基調として静謐で緊張感が漂っていて、音が躍動的に動き回っている部分でも、どこかしら堅苦しさのあるとても生真面目な雰囲気がする。(ニールセンの性格が出ているような気がする)

《組曲「ルシフェリアン(堕天使)」 Op. 45, FS 91」/Suite "Den Luciferiske" (The Luciferan)》op.45(1919-20)
6曲構成の組曲なので、これが一番長大なピアノ作品になる。
こっちは6曲がはっきり分かれていて、曲想がそれぞれ違っているので、前2作の変奏曲よりも構成的にずっとわかりやすい。
《シャコンヌ》以降、作風が明確に変わっていて、これも同じタッチ。

第1楽章 Allegretto un pochettino
プロコフィエフの《束の間の幻影》のような幻想的な雰囲気と、ドビュッシーの前奏曲風の断片的な旋律が飛び交うような、かなり現代風なタッチ。
《束の間の幻影》に出てくる下降調の旋律や和声が出てくるところが、《シャコンヌ》に似ている。

第2楽章 Poco moderato
この曲はドビュッシー風。左右両手が高音域主体で、オスティナートやトレモロ、半音階などが多用されていて、ドビュッシーの雪シリーズ(《雪は踊っている》とか《雪の上の足跡》)を連想させるところがある。

第3楽章 Molto adagio e patetico
一転して和音を多用して、力強く決然とした雰囲気で始まる。中間部は内省的な雰囲気。
旋律らしきものはあるけれど、歌謡性があまり強くなくて、いろんなフレーズが散文的に登場して、構成的にわかりにくい感じ。

第4楽章 Allegretto innocente,第5楽章 Allegretto vivo
第4楽章は明るく優しい感じ、第5楽章は短調で密やかな雰囲気。
両方とも比較的メロディアスな旋律が出てきて、和声的にもかなり調和的で綺麗な旋律。

第6楽章 Allegro non troppo ma vigoroso
同音連打や同一パターンの音型のオスティナートを多用して、断片的なフレーズのパッチワーク的な曲。
中間部はややメロディアスに旋律がつながっていく。
音の動きや和声、それに諧謔的な雰囲気が、ドビュッシーとプロコフィエフによく似ている感じで、面白い曲。

《3つの小品/3 Piano Pieces》Op.59(1928)
全体的にプロコフィエフ風な旋律と和声で、第1曲は諧謔、第2曲は穏やかで内省的(ちょっと暗いかも)、第3曲は音があちこち重音が飛び跳ねて軽快で躍動的。

《子供と大人のためのピアノ音楽/Klavermusik for smaa og store》op.53(1930)
タイトルどおり、子供にも理解しやすいそうなメロディアスな旋律と和声の曲集。
《シャコンヌ》以降の作品では、この作品が一番とっつきやすい。(でも、さほど変哲がない曲が多くて、あまり面白くないけれど)

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Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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