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フライシャー ~ ヒンデミット/左手のためのピアノ協奏曲
レオン・フライシャーが今ちょうど来日していて、サントリーホールで1/10-1/16までワークショップを開催しているのをたまたま朝日新聞のネット記事で発見。<朝日新聞のネット記事> <サントリーホールのニュースリリース>
  
それにちなんでというわけでもないけれど、今日はフライシャーの最新録音でとても珍しいヒンデミットの《左手のためのピアノ協奏曲》。
フライシャーのディスクは1960年前後のセル&クリーブランド管との録音と、それ以降左手だけで演奏活動していた時期、両手のピアニストとしてカムバックして以降の録音といろいろ出ている。
なかでも珍しい曲が、昨年リリースしたヒンデミットの左手のためのピアノ協奏曲《管弦楽つきピアノ音楽 Op.29》。
フライシャーが今まで録音した左手だけで弾くピアノ協奏曲には、ラヴェルの左手のためのピアノ協奏曲、ブリテンの《ディヴァージョンズ》、プロコフィエフのピアノ協奏曲第4番があるので、これで主要な左手のためのピアノ協奏曲をほとんど録音したことになる。

ヒンデミットの《管弦楽つきピアノ音楽 Op.29》は、戦争で右手を失ったピアニストのパウル・ヴィトゲンシュタインによる委嘱曲。
 ヴィトゲンシュタインの委嘱曲のリスト

ヴィトゲンシュタインは、この曲が気に入らなかったのかどうかはわらかないが、初演もしなかったらしく、楽譜も公開されていなかったので、聴く機会が全くなかった。
ようやく楽譜を入手したフライシャーが2004年に初演。世界初録音も昨年リリースされた。(伴奏はエッシェンバッハ指揮のカーティス響)
2004年の初演の時には右手も故障から回復していた頃なので、左手だけのピアノ曲は今でも彼の重要なレパートリーになっている。

Hindemith: Klaviermusik mit Orchester; Dvorák: Symphony No. 9 Hindemith: Klaviermusik mit Orchester; Dvorák: Symphony No. 9 "From the New World"
(2009/04/28)
Leon Fleisher (Piano) ,Christoph Eschenbach (Conductor), Symphony Orchestra of the Curtis Institute of Music

試聴する(米国amazon)


《管弦楽つきピアノ音楽 Klaviermusik mit Orchester/左手のためのピアノ協奏曲 Op.29》

第1楽章 Einleitung: Massige schnelle Halbe -
ヒンデミットらしくとても管楽が賑やかな曲で、どこか調子はずれのおとぼけたような雰囲気。
和声も旋律もピアノとオケの掛け合いも全てがなぜか可笑しい。
ちょうど《室内音楽》を作曲し始めた時期の少し前に書いた曲なので、この曲も《室内音楽》のように都会の喧騒のようなちょっと落ち着きのなさを感じるものがある。

第2楽章 Sehr lebhafte Halbe -
第1楽章からアタッカで演奏される。さっきのちょっと抜けたような雰囲気がすっかり消えているので、楽章の切れ目はわかりやすい。
テンポが速くリズミカルになって、喧騒がさらに増して慌しい。リズムは面白いけれど騒然とした雰囲気がちょっといかめしい感じ。

第3楽章 Trio: Basso ostinato - Langsame Viertel, nur sehr wenig Ausdruck -
ここは曲想が明確に変わり、ピアノと管楽が弾く憂鬱げでネットリとまとわりつくような旋律が妖艶。
オケは控えめでほんのわずかな奏者しか演奏していない。管楽器が独奏で静かにホロホロと鳴り、弦もポロンポロンと遠くで微かに鳴っているので、ピアノの弾く旋律がかなり目立っている。
他の楽章がいずれも騒々しいせいか、この楽章の異様な静けさとヒンデミット独特の叙情感がとても美しい。

第4楽章 Finale: Bewegte Halbe -
ここもリズムが変則的で、単純な音型とリズムをベースに展開していくような曲。
どの楽章も、左手だけで弾くピアノの旋律は単線的で音の厚みがないけれど、オケに埋もれることなく、くっきりと明瞭に浮かぶようになっている。
どちらかというと、旋律や和声の響きの美しさを追うよりも、オケとピアノの線的な旋律の絡み方を注意して聴くと、これはこれでヒンデミットらしい職人芸のような入り組んだところが面白く思える。


ヴィトゲンシュタインは、数ある委嘱曲のうち、ブリテンの《ディヴァージョンズ》が一番良いと思っていたらしい。ラヴェルのピアノ協奏曲は難しすぎて(?)気に入らなかったようだし、詩的でピアニスティックな《ディヴァージョンズ》を好んだのなら、初演もしなかったヒンデミットのこのピアノ協奏曲は、あまりお気に召さなかったのかも。

ラヴェルやブリテンの曲に比べると、ピアノの旋律がかなりシンプルで響きの厚みも少なく、両手で弾いているかのような錯覚を与えるピアニスティックなところはなく、かといって第3楽章以外は旋律が綺麗というわけでもない。
対位法によるオケとピアノの線的な旋律の動きを追っていくといろいろ面白いけれど、初めて聴くならあまりとっつきのよろしい曲ではないので、ヒンデミットのピアノ協奏曲なら、やはり一番有名な《主題と変奏<四気質>》の方が和声も叙情感もそこそこ美しく聴きやすいのでおすすめ。

 フライシャー『TWO HANDS ~ ピアノ作品集』の記事

 《主題の変奏<四気質>》の記事

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クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
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