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ルトスワフスキ/パガニーニの主題による変奏曲
新年早々は何を聴こうかと思ったけれど、たまたま見つけたヴィトルド・ルトスワフスキの2台のピアノのための《パガニーニの主題による変奏曲》(1941年)が素晴らしかったので、最初はこの曲で。

《パガニーニの主題による変奏曲》といえば、有名なのは、ラフマニノフのピアノ&管弦楽曲版やブラームスのピアノ独奏曲。
ラフマニノフの方は、タイトルが”変奏曲”ではなくて”狂詩曲”になっているけれど、曲は主題と24の変奏で構成されている。
タイトルに”パガニーニ”とあるだけあって、両方とも難曲。
ブラームスの方はピアノソロなので、録音しているピアニストは結構多いけれど、テクニックの良し悪しがはっきりとわかってしまうし、下手に弾くと指を痛めると言われたりする。

ルトスワフスキの作品はツィメルマンがピアノ協奏曲を弾いているのは有名だし、歌曲集や交響曲も聴いてはきたけれど、どうも相性が悪い。
でも、この《パガニーニの主題による変奏曲》は、初期のわかりやすい作風らしく、不協和音が入り混じった変奏がとっても面白くて、続けて何度でも聴けるくらいに好みにぴったり。偶然とはいえ、この曲を見つけたのはとっても運が良い。

ルトスワフスキは、1941年に2台のピアノ版を作曲、1978年にピアノ&管弦楽用の編曲版を書いている。
2台のピアノ版の方は、ピアノデュオのレパートリーとしてとても人気があり、ルトスワフスキの曲のなかでも最も演奏機会が多い曲の一つだそう。
解説をいろいろ調べてみると、パガニーニのカプリースの原曲をピアノ2台用に編曲したような曲で、12の変奏とコーダで構成。1941年の作品なので、ルトスワフスキの初期の特徴である新古典的様式で書かれている、という曲。

聴いていて面白いのは、2台のピアノ版の方。
5分くらいの小品だけれど、もっと長い曲を聴いたような気がするほど、速いテンポで変奏が次から次へと繰り出されて目まぐるしく展開し、内容がぎゅっと凝縮された密度の濃い曲。
2台のピアノが、テクニックとスピードを競いながら、攻撃的になったり、ぴったり寄り添うようになったりと、複雑なリズムのなかで掛け合っていくところがとってもスリリング。
2台のピアノ曲のレパートリーとして、ピアニストに人気があるのも納得。これは演奏効果が抜群でとても弾き映えがする。

2台のピアノ版の録音を探すと何種類かあるし、Youtubeにもライブ映像がいくつか登録されている。
スタジオ録音は女性デュオが3種類。力技がいるせいか高速のフォルテではついバンバンと強打しがち。
ペキネル姉妹の演奏は他の録音やライブとは違っていて、打鍵が軽やかでスラスラと滑らかなフレージングで華やかだけれど、不協和音がやたら綺麗に聴こえてくるし、すっかり毒気が抜けて、リストか何かロマンティックなロマン派の曲を聴いているような気がする。
ペキネル姉妹は、随分昔、日本のお酒会社のCMにラベック姉妹が登場した同じ頃に、見聞きしたデュオ。おぼろげな記憶では、ピアノの腕はペキネル姉妹の方が上だとかいう評判だった。


 ルトスワフスキ/パガニーニの主題による変奏曲(2台のピアノ版)[Piano:パーチェ&ローマ](Youtubeのライブ映像へのリンク)

このライブ映像は、オランダのテレビ局VPRO TVの番組”Vrije Geluiden (Free Sounds)”で演奏されたもの。
ピアニストは、イタリア人のエンリコ・パーチェとイゴール・ローマ。
パーチェは1989年、ローマは1996年のリストコンクール(オランダ)の優勝者。その縁かどうかは知らないが、5年くらい前のライブでバルトークの《2台のピアノと管弦楽のための協奏曲》を2人がソリストで弾いていた。
この演奏は、聴いた録音の中では飛びぬけて素晴らしい出来。
さすがにフォルテの打鍵は力強く、速いテンポでも音が明瞭でナイフのように切れ味鋭く、1つ1つの音に張りがあって音が煌いている。表現も一本調子になることなく、山あり谷ありとアップダウンが激しく多彩。
突き刺すように強烈なアクセントとシャープなリズム感が冴え、ハーモニーがぴったり揃っているので、不協和音も威嚇的な強い響きでも響きが綺麗だし、パガニーニっぽいデモーニッシュで幻惑的な雰囲気もたっぷり。
変奏のうち緩徐的なものがいくつかあり、音がとても艶かしく響いて小悪魔が誘惑しているような雰囲気。終盤近くの変奏ではジャズのようなちょっと崩れたリズムが入っていたりと、曲自体もとっても面白い。

TV番組の公開演奏なので、指の動きをTVカメラがしっかり撮影している。
2台のピアノで弾くときは、連弾と違って距離が離れているので、ピアノ越しにアイコンタクトしながら呼吸を合わせている。
音を聴いているだけでも技巧的に難しい曲なのはわかるが、映像でみると本当に厄介ですね~。
楽譜をみた人によると、見た目はわりと整然として弾きやすそうに見えるらしいが、実際に弾くとなるとかなり複雑で見た目ほどにそうスラスラと弾けるものではないらしい。
パーチェとロ-マは、いつもながら指回りがすこぶる良く、高速の和音を飛び跳ねながら弾いているがミスタッチもほとんどないようで、高速で両手を交差させて弾くところが多いがこれも滑らか。
2人ともリストが得意なだけあって、まだ余裕のある弾きぶり(に見える)。これだけのスピード感と起伏の激しい演奏でも、2人のピアノがぴったり揃っているところが凄い。
これを聴いてしまうと、他のはかなり物足りなくなってしまう。この曲は耳で聴くだけよりも、映像で見た方がインパクトが強くて、結構感動ものでした。


 ルトスワフスキ/パガニーニの主題による変奏曲(ピアノと管弦楽用編曲版)[Piano:グレムザー]

ピアノ&管弦楽曲版の方は、ラフマニノフの曲があまりに有名なせいか、録音がほとんどなくて、ピアニストがグレムザーのNAXOS盤くらい。探せば他にもあるかもしれないが、それでもあまり多くはないと思う。
この曲の初演では、ポーランド出身のフェリシア・ブルメンタールがピアノを弾いていたという。

テンポは2台のピアノ版に比べてかなり遅くて、オケとピアノの掛け合いもそれほどテンションが高くない。
不協和音の鋭い響きもあまり目立たず、テンポが遅いので演奏時間が10分と原曲の倍くらいになって、攻撃的なところが薄め。2台のピアノ版を聴いてしまうといろいろと物足りない。
終盤になると、結構盛り上がってオケも壮大に鳴っているので、2台のピアノ版を脇に置いて聴けば、これはこれで面白い曲かなあと思い直しはした。
ピアノ&オケ版だと、やっぱりラフマニノフの《パガニーニの主題による狂詩曲》の方が曲想の変化もドラマティックで華やかな。テクニカルな難易度がそう変わらないのであれば、同じ弾くならラフマニノフを弾くんじゃないかと思う。

Lutoslawski: Symphony No. 3; Paganini Variations; Paroles Tissées; Les Espaces du SommeilLutoslawski: Symphony No. 3; Paganini Variations; Paroles Tissées; Les Espaces du Sommeil
(1997/04/22)
Antoni Wit, Bernd Glemser, Witold Lutoslawski, Adam Kruszewski, Piotr Kusiewicz, Polish National Radio Symphony Orchestra

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 ルトスワフスキ/パガニーニの主題による変奏曲(2台のピアノと打楽器用編曲版)[Percussion:Safri Duo,Piano:Slovak Piano Duo]

これは2台のピアノに打楽器を加えた珍しい編成の編曲。
打楽器は、タンバリン、ティンパニー、トライアングル、マリンバ、ドラムなど、いろいろ使っているので音色がとてもカラフル。打楽器のリズミカルな響きと色彩感がとっても面白い。
ピアノパート自体がかなり込み入っているので、そこに打楽器の音が重なると、ピアノと絡み合ってしまうので、ピアノが弾いている旋律や和声がわかりにくいし、ピアノパートの凄さが薄れているような...。ピアノをしっかり聴きたいなら、オリジナルの2台のピアノ版のパーチェ&ローマの演奏を聴く方が良いでしょう。
パーカッションはサフリ・デュオ。かなり有名な2人組らしく、クラシックオンリーではなく、クロスオーバー的なアルバムがいくつか出ている。

Safri Duo Performs Lutoslawski, Bartók, HelwegSafri Duo Performs Lutoslawski, Bartók, Helweg
(1995/11/14)
Safri Duo,Slovak Piano Duo

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tag : ルトスワフスキ パガニーニの主題による変奏曲 パーチェ ローマ グレムザー

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Author:yoshimi
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クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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