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スーク&パネンカ ~ ベートーヴェン/ヴァイオリンソナタ第4番
ベートーヴェンのヴァイオリンソナタの第6番をカヴァコス&パーチェの演奏で聴いてから、スーク&パネンカとグリュミオー&アラウのCDで、このところベートーヴェンばかり聴いている。

ずっと昔アルゲリッチとクレーメルの録音を聴いたせいで変なイメージがついてしまってあまり聴かなかったのに、別の録音で聴くと素敵な曲が山ほどあるのに気がついてから、少しずつCDを集めている。
このヴァイオリンソナタは音が綺麗なピアニストで聴きたいので、パールマン&アシュケーナージの4・6・8番のカップリング盤と、シェリング&ヘブラーの全集録音のVol.2(6~10番)のCDを新たにオーダー。海外発送なのであと1週間くらいで届くはず。

ヴァイオリンソナタで聴く回数が多い順に並べると、4,6>9,7,8>5,10。1,2,3番はまず聴かない。
あまり人気がある方ではない(と思う)第4番と第6番が一番好きなので、10回のうちの半分くらいはこの2曲を聴いている気がする。ちょっと苦手だった9番と7番も聴き直してみるとどちらもかなり好きになったのは、やっぱり年をとると音楽の好みもだんだん変わっていくせいだろうか...。

ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ全集ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ全集
(2005/04/27)
ヨゼフ・スーク、ヤン・パネンカ

試聴する(amazon)

この全集はDENON盤なのでブックレットが日本語だけでよいせいか、作品解説がやたらに詳しいのが良いところ。
輸入盤だと2~3ヶ国語対応が多いので、頁数の制約のために解説が貧弱になりがち。アメリカのマイナーレーベルで英文だけにして解説を充実させているのがあったけど。
CDごとのカバーが真っ白な不織布なので、ディスクナンバーがわからないのはちょっと不親切。(自分でカバーにディスクナンバーのシールを貼らないといけない)


スーク&パネンカの全集のなかでは、この第4番の演奏が、テンポ、強弱、ヴァイオリンとピアノのバランスとも、一番しっくりとくる。
第1楽章だけなら、ちょっと緩々としたグリュミオー&アラウの演奏も同じくらい好きで、ピアノ伴奏を弾きたくて早速楽譜を探した。
第4・5・9番の3曲は、Louis Winkler (1820–1886)という人がピアノ独奏用に編曲している楽譜がある。
第9番だけは、ゴドフスキーのピアノ編曲版の楽譜まである。ただし、教育用なのでかなり易しい編曲になっている。Winklerの9番の編曲は速いテンポで弾くのはちょっと大変そう。

第4番の第1楽章は、同じ短調の第7番や第9番に比べれば、旋律も構成もシンプルなので、ピアノソロで弾いても、ヴァイオリンのパートの音が足されて和音が増えてはいるけれど、見た目にはそう難しくない。それにリピートなしで6ページ分と短い。
試しに弾いてみると、右手側はヴァイオリンとピアノの旋律の2つを合体させているので、親指を押さえたまま他の指で旋律を弾くところがいくつかあって、重音の移動も回りにくい指使いで、弾きにくい感じはする。

ピアノ独奏版の録音を探してみたけれど録音がすぐには見つからず。
あまり編曲の妙が味わえない気がしないでもないピアノ独奏でわざわざ聴かずとも、幾多の名盤がある原曲を聴けば良いので、たぶん誰も録音していないんでしょう。

 ヴァイオリンソナタ第4番の楽譜ダウンロード(IMSLP)

 ヴァイオリンソナタ第4番[ピアノ独奏用編曲版]の楽譜ダウンロード(IMSLP)


ヴァイオリンソナタ第4番イ短調 Op.23(1801年)

曲想が優しげな長調の曲だと、やや控えめで起伏が緩いような気がするパネンカのピアノも、テンポの速い短調の曲になると比較的フォルテも強く、ピアノがわりと前に出てきている。
スークの方が表現が力強く明快で、音に躍動感と推進力があって生き生きとした表情。
パネンカの方も表現の強さを合わせてはいるのでピアノが控えめで弱いという感じではないけれど、どこかしら抑えたようなところ(解説では”ポーカーフェイス”と評していたが)を感じるので、この微妙な温度差がちょっと面白い。

パネンカが弾いているピアノは、たぶんペトロフ。《大公》のCDジャケットに写っているピアノの写真にもペトロフのロゴが大書きされている。
この曲の録音でアシュケーナージが弾いているピアノはたぶんスタインウェイだろうから、音がきらきらと輝いているが、パネンカのピアノの音はややマイルド。ピアニストのタッチや表現の差が大きいのだろうけれど、ピアノ自体の違いもかなり影響して、音の印象としていくぶん控えめに聴こえるのかもしれない。


第1楽章 Presto
冒頭からフォルテのアクセントが聴いた主題で始まるけれど、すぐに柔らかいけれど哀しげな旋律をヴァイオリンとピアノが対話するように弾きながら、徐々に力強さと翳りを増して、もとの主題へとリピート。
フォルテとピアノが目まぐるしく入れ代わり、ピアノとヴァイオリンも力強く訴えかけたり、囁いたりと起伏の大きな楽章。
力強い悲愴感と柔らかで甘美な憂いとが入り混じって、第1~第3番とは全く違ったベートーヴェンらしい雰囲気が濃厚。
特に、30小節目以降のヴァイオリンとピアノが単音で弾く旋律がとても印象的。ピアノソロで弾くと高音の響きがとても綺麗なので、すっかりこの旋律が頭の中に刷り込まれてしまった。

第2楽章 Andante Scherzoso, Piu Allegretto
第1楽章とは曲想が大きく変わり、女の子がすまして大人びたダンスをしているようなとても可愛らしい曲。
ヴァイオリンとピアノが、2音のシンコペーションのリズムを掛け合っていき、中間部ではカノンのように、旋律をカスケードして弾いていくところが楽しげ。
ピアノは高音部で弾くところが多くて、パネンカの甘くて可愛らしい高音の響きがとても綺麗で、柔らかで優雅なタッチの弾きぶりがこの曲にぴったり。パネンカの高音の甘い響きは、フィルクスニーのピアノと似ている気がする。

第3楽章 Allegro Molto
この楽章もイ短調で、雰囲気的にも第1楽章に回帰したような急迫感。
ところどころ緊張を緩めて一息入れたような静かな旋律に変わり、緩急のコントラストが明快。走ったり立ち止まったりと忙しい。
中間部はコロッと180度変わって、三連符のアルペジオがとても優雅で穏やか。
最後は主題に戻ってそのまま力強く終るかとおもったら、三連符をピアニッシモでつないで静かに終る。ここを聴いていたらピアノ・ソナタの<テンペスト>の第3楽章の終り方が似ているのを思い出した。

tag : ベートーヴェン スーク パネンカ

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ヴァイオリンソナタ第4番は…
20年前に、クレーメル/アルゲリッチの演奏(4、5、9)を、大阪のシンフォニーホールで聴きましたが、特にアルゲリッチとベートーヴェンは、初期の一部の作品を除くと、相性がいまいちのように感じたものでした。
パールマン/アシュケナージ盤は、私は好きですね。
クレーメル/アルゲリッチ盤
さすらい人様、こんにちは。
コメントありがとうございます。

クレーメル/アルゲリッチ盤は、個性的なのでわりと評判が良いようですが、曲によって相性に落差があるような気はします。
せっかく買った全集なので久しぶりに(10年ぶり以上?)聴きましたが、4番は騒々しくてせわしなくてちょっと...という感じでしたが、6番は意外と良かったです。特に第3楽章のアルゲリッチはタッチもわりと穏やかですが、演奏は冴えてました。
アルゲリッチはどちらかというと、プロコフィエフやショスタコーヴィチのコンチェルトなどは相性がぴったりですね。

パールマン/アシュケナージ盤は、クロイツェルが良かったと思ったので他の曲のCDも追加でオーダーしました。アシュケナージはあまり聴かないピアニストなのですが、ピアノの音色が多彩で綺麗なところがとても魅力的です。
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yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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