グリュミオー&アラウ ~ ベートーヴェン/ヴァイオリンソナタ集 

2010, 04. 07 (Wed) 23:00

グリュミオーのベートーヴェンのヴァイオリンソナタといえば、ハスキルとのモノラル録音が有名で、後年にアラウとステレオ録音した方はそれほど聴かれていないに違いない。
録音したのは、第1, 2, 4, 5, 7, 8番の6曲のみ。クロイチェル・ソナタも未録音で、なぜか全集は未完。

Beethoven: Sonatas for Violin & Piano Nos. 1, 2, 4, 5, 7, 8Beethoven: Sonatas for Violin & Piano Nos. 1, 2, 4, 5, 7, 8
(2007/10/23)
Ludwig van Beethoven、

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私の持っているのは、ずっと昔に手に入れたCD1枚組の盤なので、第1番と第7番が入っていない。


グリュミオーはモノラル盤よりも落ち着いた感じはするけれど、音はやはり艶やかで明るくてとても綺麗。
アラウのピアノはヴァイオリンよりもちょっと穏やかなタッチで、ソロではなく伴奏に回っているせいか、タッチもフレージングもわりとあっさり。
アラウが晩年に録音したベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集は、80歳代の録音も入っているので、独特のアーティキュレーションによるクセが強くなって、曲によっては粘っこい感じもする。

それに比べて、少し若い頃(といっても72歳頃)に録音したこのヴァイオリンソナタのピアノ伴奏は、同じベートーヴェンの曲でもソロとは全然違っているのが面白い。
録音条件のせいか、それとも、タッチやペダリングで調整しているせいか、アラウの独特の深い響きではなく、コロコロと丸みを帯びた硬質の響き。ちょっとノンレガート気味な響きが可愛らしい。
アラウの室内楽の録音はほとんど残っていないので、これは結構貴重。

短調の第4番第1楽章は、ピアノのタッチが柔らかめで、悲愴感はそれほど強くなく、穏やかな中にそこはかとなく漂う哀感がなんとも良い感じ。このアルバムの中では一番好きな録音。
アラウのピアノは、ヴァイオリンに比べて少し起伏が緩くて、ちょっとリズム感が鈍い気はする。(他の曲でもそういうところはあるけれど)
30小節から出てくる旋律をつぶやくように歌うピアノの響きがなんとも言えない情感があって、ここをこういう風に弾くのは他の録音ではちょっと聴けないかも。
第3楽章も第1楽章と同じようなタッチなので、冒頭の短調の主題のところはもう少し切迫感や悲愴感が欲しい気はするけれど、中間部の長調になるとアラウのピアノの響きがモーツァルトを弾いている時のように可愛らしくなるので、これはこれで聴くのは楽しい。

リファレンス用に聴いたクレーメル&アルゲリッチの第4番は、シャープなタッチと速いテンポでやたら騒々しくせわしないので、この極端な違いが面白い。

第8番もヴァイオリンに比べてやっぱりアラウのピアノは少し穏やかで、スタッカートはそれほどシャープにアクセントを利かせていない。
元々ソロでベートーヴェンを弾くときでも、フォルテをガンガンと強打するような奏法はしないし(アラウは身体の重みを利用して打鍵する”重量奏法”を使っていた)、わりとマルカート気味のタッチなので、そこは伴奏でも変わらず。
それに加えて柔らかなタッチと響きが優しくまろやかなので、ちょっと穏やかで優雅なベートーヴェンに聴こえてくる。

優雅なベートーヴェンを聴くなら、グリュミオー&アラウ以外だったら、シェリング&ヘブラー。
シェリングの線の引き締まった格調高いヴァイオリンと、ヘブラーのモーツァルト風にコロコロと転がるようなノンレガート気味のタッチと丸みのある柔らかい音色が良く似合っている。

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