マルティヌー/フルート、ヴァイオリンとピアノのための室内楽曲 

2010, 05. 22 (Sat) 09:00

マルティヌーの室内楽曲は、楽器構成のバリエーションがかなり豊富。
ざっと見ただけでも、ソナタ(ヴィオラ、ヴァイオリン、チェロ、フルート&ピアノ)、二重奏(ヴァイオリン&チェロでかなり有名な曲)、三重奏、四重奏、五重奏、六重奏、九重奏。詳しく探せばこれ以外のフォーマットの曲もあるに違いない。
六重奏、九重奏も含めて、ほとんどの室内楽曲でピアノが入っていて、ヴァイオリン奏者だったわりには、ピアノ曲を書くのが得意だったらしい。
知られているピアノ独奏曲はあまり多くないけれど、ピアノ協奏曲の方は室内協奏曲的なものも含めれば、10曲以上はあり、ピアノ協奏曲第4番《呪文》は結構有名。
どちらかというと、(ピアノ作品は曲想の好みもあって)独奏曲はさほど印象に残る曲が多くはなかったし、ピアノ協奏曲や室内楽曲という協奏的な作品の方が良い曲が多いような感じはする。

マルティヌーの室内楽曲は、管楽器を多用したカラフルな色彩感と、軽やかな明るい色調で、フランス風の軽妙で洒落たタッチの曲が多い。不協和的な響きは多少入っているけれど、難解な前衛性とは無縁のとても聴きやすい曲ばかり。
プーランクとヒンデミットを足して2で割ったようなというか、愛嬌のあるヒンデミット風というか、そういう現代的なところに、チェコ音楽らしき民俗風の濃厚さがブレンドされたようなコクがある。

室内楽曲で有名な曲はいくつかあって、わりとよく演奏される曲の一つが、《フルート, チェロとピアノのための三重奏曲 H. 300》。
これはちょっと前に聴いたことがあり、”日曜日の朝には、プーランク”....ではなくて、”日曜日の朝には、マルティヌー”と言いたくなるような、軽やかで陽光のように明るく楽しげな曲。

《フルート、チェロとピアノのための三重奏曲 》の記事


マルティヌーは有名な多作家だったせいか、似たような曲想の曲も多く、友人のピアニスト、フィルクスニーは作品の質にばらつきがある(つまり玉石混交?)と言っていた。
どれが玉でどれが石かはともかく、フルートの入った曲は、フルートの軽やかな音色を生かした明るい色調の曲が多い。
お日様の陽射しが入る窓辺でとる紅茶とトーストのブランチには、とっても良く似合う。

マルティヌーの室内楽曲のアルバムはいろいろ出ているので、曲目も多少オーバーラップしているが、なにせ多作家なので全部聴くとなるとこれはかなり大変。
このアルバムは、なぜかあの超絶技巧のアムランがピアノパートを弾いているというのが、とっても珍しい。昨年のマルティヌーイヤーではなく、1995年に録音しているので、記念アルバムというわけでもなさそう。
アムランは、さすがに切れの良いタッチでどこでもスラスラ弾いているので、フルートやヴァイオリンをジャマすることなく軽快な動きにぴったり合っている。

ヴァイオリンはアンジェル・デュボー、フルートはアラン・アリオン。
Martinú: Sonatas, Promenades, Madrigal StanzasMartinú: Sonatas, Promenades, Madrigal Stanzas
(1995/12/12)
Alain Marion (Flute), Marc-André Hamelin (Piano), Angèle Dubeau (Violin)

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フルート、ヴァイオリンとピアノのためのソナタ, H.245
このアルバムのなかではかっちりとした構成で、楽章ごとの曲想も違いも明瞭で、聴いていて一番楽しい曲。

第1楽章 Allegro poco moderato
いろんな鳥達が賑やかにおしゃべりしているようなタッチ。楽器の音色の違いが声音の違いにように聴こえてきて、楽器の掛け合いがとっても面白い。

第2楽章 Adagio
短調と長調の中間のような調性感がやや曖昧な感じのアダージョで、やや憂いを帯びた明るさ。

第3楽章 Allegretto
再び軽快な曲想に戻るが、冒頭はちょっと運動会風でとてもせわしなく動きまわり、ピアノが特に快活。
中間部はほんのすこし落ち着いて、やや東洋風な感じのする旋律が挿入されてから、再現部へ。

第4楽章 Moderato poco allegro
不協和的な和声が多くなって、軽やかではあるるけれど、ちょっとおっかなびっくりといった押さえ気味のところがあって、やや風刺風な可笑しげな曲。ここも中間部は、お正月に花鳥風月を愛でるような日本風の旋律が入ったり、他の作品の旋律を転用したり。
第3楽章と第4楽章の中間部は主題部とは全く流れが変わって、どこか他所から拝借してきたような、独立したような部分に聴こえる。

フルート、ヴァイオリンとハープシコードのためのプロムナード,H.274
珍しくもアムランがハープシコードを弾いている。ハープシコードの音が高音域中心でヴァイオリンの音と重なる上に、音量も小さいので、バックでちょこまかと鳴っているといった印象のところが多い。
全体的に調性感が曖昧なところはあっても、明るい色調で軽やか。
第3楽章は冒頭のヴァイオリンのピッチカートの響きが、第4楽章はこれも追いかけっこをしているようなせわしなくせかせかしたところが面白い。

フルート・ソナタ H.308
三重奏のピアノパートとは違って、第1楽章や第3楽章の冒頭や中間で出てくるピアノソロがとても華やかでロマンティック。フルートとピアノが速いテンポで掛け合っていくところがとても気持ちよく響く。

5つのマドリガル・スタンツァ~ヴァイオリンとピアノのための, H.297
ヴァイオリン&ピアノのフォーマットの曲では、ヴァイオリンソナタよりもこの曲の方が知られているかもしれない。
アレグロやスケルツァンドでも、ややゆったりとしたテンポ。
フルートが入っていないせいか、三重奏曲やフルートソナタのような賑やかで飛び回っているようなタッチの曲は少なくて、ちょっと品良く優雅な雰囲気。

フルートとピアノのためのスケルツォ, H.174A
これは速いテンポで、フルートが上行下降を繰り返し、ピアノが合いの手を入れるように弾く和音のリズムが、目まぐるしく変わっていく。

フルート, ヴァイオリンとピアノのためのマドリガル・ソナタ H 291
”マドリガル”とは、16世紀以降のイタリアで作られた多声世俗歌曲のことらしい。他の三重奏曲と、楽章構成以外にどういうところが違うのかは良くわからないけれど、旋律の流れはずっと滑らか。
第1楽章はPoco allegroといっても慌しさはなく、ちょっと控えめな軽妙さ。
第2楽章の冒頭のフルートがとても穏やかに始まって、しばらくは3つの楽器が問いかけるような曖昧な雰囲気でしばらく対話していく。
中間部はテンポが上がって、音がつまった細かいスケールや、飛び跳ねる和音の掛け合いが続き、再び元のゆるゆるとした雰囲気に。最後は中間部のラストが再現されて弾けるように元気よいエンディング。

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