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ダッラピッコラ/パガニーニの奇想曲によるソナティナ・カノニカ、アンナリベラの音楽帳
現代イタリアの作曲家ルイージ・ダッラピッコラはオペラが有名なので、オペラは聴かないせいで彼の作品は聴いたことがない。ただし、名前だけはなぜか記憶に残っている。
この人の名前を聴くと、幼少期のみぎりによく食べていた某製菓のお菓子の商品名(今でも売っている?)がつい頭の中に浮かんできて、頭の中に定着してしまったからに違いない。

たまたまナクソスのライブラリーの推薦タイトルにダッラピッコラの室内楽・器楽曲のアルバムがあるのを見つけたので、今回はダラピッコラの珍しいピアノ作品。
ダッラピッコラの弟子だったベリオの室内楽や器楽曲は、聴くのにかなり苦労する。お師匠さんのダッラピッコラはイタリアで初めて十二音技法を導入した(と事典に書いていた)人なので、さてどんな音楽になっているでしょう。

ダッラピッコラ:ソナティナ・カノニカ/タルティニアーナ第2番(プロッセダ)ダッラピッコラ:ソナティナ・カノニカ/タルティニアーナ第2番(プロッセダ)
(2005/11/01)
Roberto Prosseda (Piano), Duccio Ceccanti (violin)

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 パガニーニの奇想曲によるソナティナ・カノニカ/Sonatina canonica
この曲はイタリアのアーリー・ミュージックと、ダラピッコラが取り入れたバロック・ルネサンス時代の対位法の両方に対するオマージュの意味合いがあるらしい。
パガニーニの曲は、奇想曲に限らずまともに聴いたことがないので、知っているのはパガニーニのカプリースの主題を使ったピアノの変奏曲(ブラームス、ルトスワフスキ)と狂詩曲(ラフマニノフ)くらい。
多少聴いたような気もする旋律は入っているけれど、原曲のイメージが頭の中に全然ない状態なので、逆にいろいろ連想できて、この曲は聴いていると結構楽しい。

I. Allegro comodo
ソナティナ・カノニカは十二音技法で書かれた曲ではないので、冒頭から不協和音とは反対の調和で綺麗な、でも調律が狂った調子はずれのピアノが出すような音が混じった和声が、どことなくファンタジー風。
遠い昔の子供時代か、幸福な思い出を追憶するような旋律と響きは、オルゴールのような甘い感じ。
中間部は、子供やおもちゃの人形たちが遊んでいるような、ユーモアがあって楽しげな旋律。
再び主題に戻って、ここは最初よりもずっとテンポがゆっくり。高音の響きも密やかが頼りなげ。ちょっと遊び疲れてお昼寝タイムに入ったように、リタルダンドして静かに終る。

II. Largo - Vivacissimo - Tempo I
徐々に上昇していくトリルの旋律がちょっと不思議な雰囲気で、何か悪い予兆のイメージのような...。
と思ったら楽しそうな夢を見ているように軽快で可愛らしい旋律が一瞬登場して、再び冒頭の変な旋律。

III. Andante sostenuto
冒頭は結構眠たげなムードの旋律。幸せな夢を見ている子供の寝顔を表現するとこんな感じかも。

IV. Alla marcia: Moderato
”Alla marcia”なので、おもちゃの兵隊さんの行進曲風。
和音がリズミカルに連打するところはちょっと勇ましいように聴こえるけれど、少しメンデルスゾーンの結構行進曲風な旋律(だと私には思える)が聴こえてくるし、タッチが軽やかで柔らかく、行進曲風の旋律の間に挿入されているレガートの旋律がとても可愛らしい。


 アンナリベラの音楽帳/Quaderno musicale di Annalibera
《アンナリベラの音楽帳》というタイトルですぐに連想するのは、バッハの《アンナ・マグダレーナ・バッハの音楽帳》。
娘の18歳の誕生日を記念して作曲したもので、”アンナリベラ”という名前は、第2次大戦末期にドイツ軍占領からフィレンツェがレジスタンスによって解放されたことにちなんでいるらしい。
十二音技法のセリエル流の思考とバッハへのオマージュの両方が埋め込まれた曲で、シェーンベルクのピアノ小品にもよく出てくるような音の塊とリズムがちらほら登場する。これは十二音技法の曲だと思えるところはあるけれど、シェーンベルクの曲よりははるかに叙情感がこもっている。
歌謡性のある旋律ではないけれど、旋律も和声も不協和的な歪みの聴きづらさは感じさせない程度に綺麗な響き。


No.1”Simbolo”には、バッハのイニシャルが冒頭部分のモチーフに埋めこまれている。
序奏部分は、音が飛び飛びして(ちょっと象の行進風?)、これは変わった曲かもという予感。
続く旋律は、後期ブゾーニに近いような調性感が曖昧な、やや不安感の漂う幻想的な響き。
最後は、再び冒頭の主題が現われてリタルダンドして中途半端に終る。

対位法が使われているNo.3”Contrapuntus primus”は音が少なくて、ポツポツと音が鳴っている綺麗な響きのカノン。
No.5”Contrapunctus secundus”は、音があちこち飛び跳ねて、ちょっとおしゃべりしているような感じで、シェーンベルクの曲を聴いている気分。
No.7”Andantino amoroso e contrapunctus tertius”は、前の2曲よりはメロディアス。

リズムが面白いのは、No.2”Accenti”No.8”Ritmi”
”Accenti”はタイトル通り、いたるところでアクセントを効かせたリズムだけで構成したような曲。
”Ritmi”の方は、リズムがとても面白く、和声がもう少し調和的な感じだったら、前衛的なモダン・ジャズのピアノソロに聴こえるかも。この曲集のなかでは一番躍動的で、生き生きとした表情らしきものがイメージできる。

わりと叙情性を感じさせる旋律が入っているのは、No.4.”Linee”No.6”Fregi”No.9”Colore”と最後のNo.11”Quartina”
どれも似たような音の動きと雰囲気なので、一度聴いただけでは判別不能。No.9”Colore”の旋律が一番叙情性が強くて、響きも綺麗かもしれない。
No.11”Quartina”はモノローグのように音が静かに呟くような曲。

唯一厳しい雰囲気だったのは、No.10”Ombre”。重たく厳つい感じの和音で始まり、中間部は水面に落ちた水滴の波紋が徐々に広がっていくような静寂さ。


《アンナリベラの音楽帳》は十二音技法の曲集にしては、旋律と和声が綺麗で叙情感もあり、曲順どおりに聴けば曲想が前後で転換していくので、それなりに変化もあってわりと聴きやすい。といっても、繰り返し聴きたい曲といえば、リズムも旋律も面白い”Ritmi”くらいかなという感じ。


《ソナティナ・カノニカ》と《アンナリベラの音楽帳》がピアノ曲の代表作。
他に収録されているのは、ピアノソロで《3つのエピソード》、《3台のピアノのための音楽》。《2つの練習曲》と《タルティニアーナ第2》はヴァイオリン&ピアノ。

3台のピアノのための音楽
曲自体は聴きやすいけれど、さすがに3つのパートを多重録音するのは、(想像しても)かなり難しそう。
微妙に拍子が揃っていないように聴こえるし、一拍目は音を置きにいっているような切れの悪さを感じるところがあり、曲の中身よりもそっちの方に気をとられてしまう。
タッチが違ってもやはり3人のピアニストでお互いの呼吸をとりながら、一斉に弾いた方が良いんじゃないかと思ったけれど、これも良く考えると、2人ならまだしも、3人だとちょっと合わせにくいかも、という気がする。
3台のピアノの曲(鍵盤楽器の曲)というのは、バッハのチェンバロ協奏曲にはあるけれど(4台で弾く協奏曲もあるし)、ピアノならモーツァルトの協奏曲が有名らしいが、これは聴いたことがない。


2つの練習曲
No. 1. Sarabanda

ヴァイオリンの旋律は少し妖艶なネットリした響きと研ぎ澄まされたような叙情感が混ざっているような雰囲気。
ピアノの伴奏は高音域中心に透明感とクールな響きが美しく、ほとんどを弱音でヴァイオリンと対話していて、全体的にはちょっと不可思議な感じがする。それでも叙情感のある綺麗な曲です。

No. 2. Fanfara e Fuga
一転して、フォルテの鋭いタッチで弾くフーガ。フーガとしては面白い曲なのかもしれないけれど、ギーギーと叫び続けるような尖ったヴァイオリンの音の連続に、ちょっと耳が拒否反応気味。


最後に収録されている《タルティニアーナ第2》は、管弦楽版の《タルティニアーナ》とまとめて、後で何か書く予定。

tag : パガニーニ

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タルティニアーナは楽しい
こんにちは。
「同じ協奏曲を600回書いた」発言で
ヴィヴァルディ・ファンには評判の悪いダッラピッコラですが、
面白い曲いろいろ書いてますね。
このCDはたまたま持っていますが、あまり聴きこんでいません。
こうして解説していただけると「聴いてみよう」という気になりますね。
ありがとうございます。
タルティニアーナは管弦楽版が面白かったです
木曽のあばら屋様、こんにちは。
コメントありがとうございます。

ダッラピッコラさんは、そんな(面白い)発言をしていたんですね。確かにファンには顰蹙を買いますね。
ヴィヴァルディは「四季」(という曲?)くらいしか聴いたことがない私には、なんとも申せません。

ピアノ曲は現代音楽にしてはわかりやすいので聴けない曲ではないですが、《タルティニアーナ》の方が好きですね。
ヴァイオリン&ピアノ版は叙情的にまとまっていて綺麗な曲ですが、管弦楽版の方がずっと面白かったです。
ピアノが入っていない曲はあまりとっつきが良くないのですが、この曲は全然大丈夫でした。

頭から終わりまで面白いCDというのは、現代音楽の分野だと難しいことが多いですね。それでも面白い曲があったときは、後で聴き直すこともあるので、メモを残しておくようにしています。備忘録のようなものなのですが、何かのお役には立っているようで嬉しいです。
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Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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