ハートマン/ピアノ協奏曲 

2010, 02. 18 (Thu) 20:00

デンマークの作曲家エミル・ハートマン(エミール・ハルトマンという表記もある)(1836年-1898年)のとても珍しい協奏曲集。
NAXOSのライブラリで新着タイトルをチェックしているときに、”ピアノ協奏曲”が入っているので目に留まったディスク。

ハートマンの一族は音楽家の家系で、有名なのが彼の父ヨハン・ペーター・エミリウス・ハートマン。
デンマークの音楽界では有名な作曲家らしい。息子のエミルは、年代から言ってブラームスと同世代。
私は父子とも初めて知りました。デンマークの作曲家のうち、多少なりとも聴いたことがあってすぐに思い浮かぶのはニールセンくらいなので。

このピアノ協奏曲は1890年の作。勇壮なパッセージで始まる冒頭から、わりと波長が合いそうな感じがしたせいか、最後まで聴いてとても気に入った曲。
録音しているピアニストはとても少なく、比較的新しいのは、ピアノがペア・サロ、伴奏はハンヌ・リントゥ指揮のヘルシングボリ交響楽団という、全く知らない顔ぶれの録音。
この珍しいCDのレビューは、"NORDIC FOREST -北欧のクラシック音楽-"ハートマン家の作曲家のページにあります。
このサイトは、北欧の作曲家やCDについて詳しくて、北欧関係ならまずここで情報を探してみると、いろいろ見つかります。
Emil Hartmann: Concertos [Hybrid SACD]Emil Hartmann: Concertos [Hybrid SACD]
(2005/07/19)
Per Salo (piano),Helsingborg Symphony Orchestra,Hannu Lintu (conductor)

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このコンチェルトには、マルシェフの録音もあり。マティアス・エッシュバッハ指揮デンマーク・フィルハーモニー管の伴奏。デンマークのレーベル・Danacordらしく、ニールセン前後期の作曲家のピアノ協奏曲を2曲。
ハートマンのピアノ協奏曲は、ピアノ・オケともかなり力感が強く、第3楽章のピアノなどはヴィルトオーゾさながらにバリバリ弾いている。録音の音も鮮明で煌びやかな響きがとても華やか。
サロの演奏と続けて聴くと、オケの伴奏もそれぞれのピアニストの演奏に合わせたタッチなので、曲の雰囲気が全然違って、別の曲を聴いているみたいに思えるほど。

サロの柔らかなタッチの優美な演奏の方が好きなので、この文章はSaloのピアノで聴いた曲のイメージ。
マルシェフ盤に比べて、Salo盤の方はピアノとオケの両方ともかなり緩い感じはするので、テンポが速くてダイナミックな演奏が好きな人なら、音も華やかなマルシェフ盤の方を。
曲自体が良いので、どちらの演奏でも楽しめます。

Danish Piano Concertos Vol. 2Danish Piano Concertos Vol. 2
(1 Dec 2001)
Oleg Marshev (piano),Danish Philharmonic Orchestra,Matthias Aeschbacher (conductor)

試聴する(NAXOS)



第1楽章 Allegro
ショパンの憂愁を取り除いて、メンデルスゾーンと足して2で割ったような...と言えば良いのでしょうか。
時々ショパン、時々メンデルスゾーンのピアノ協奏曲で聴いたような和声の響きがする。それに、ベートーヴェンのような(と感じる)シンプルで力強い旋律が、時々急に割り込んでくるし。
旋律自体はさほど強い印象の残るものではないけれど、力強さと流麗さと繊細さが交錯し、明暗のコントラストもそこそこあって、単調さはなく、流れも滑らかなので、努力せずとも音が自然耳に入ってくる。
とてもロマンティックな曲なのに、感傷的になりすぎないさらっとした叙情感がとても爽やか。

第2楽章 Canzonetta: Andante
ロマン派の緩徐楽章にしては、この楽章もベタベタと感情の思い入れ深いという感じはなく、夢見るようにメルヘンチックで繊細な情感とと、パストラル風の牧歌的な穏やかさとが、とても心地よい曲。
この楽章はこの曲の中でもとりわけリリカル。ハルトマンらしい個性が出ている一番良く出ている曲なのかもしれない。

第3楽章 Finale: Allegro
この楽章は、冒頭は少しメンデルスゾーンの交響曲風、序奏が終ってピアノソロの弾くところは、全くメンデルスゾーンのピアノ協奏曲風。
途中でギャロップのようにリズミカルなスタッカートで弾くところが出てくると、メンデルスゾーンのピアノ協奏曲第1番の第3楽章を聴いている気分。他にもピアニスティックなパッセージがちょこちょこ出てきて、そこはメンデルスゾーン風。
全体的には、メンデルスゾーンほどには技巧的な煌びやかさがないところが、どこかしら控えめというか奥ゆかしい。メンデルスゾーンが華やかなバラの花だとすれば、ハルトマンは清楚で奥ゆかしい百合の花のよう。
北欧圏の音楽を聴いているときに感じる清々しさが、やっぱりこのハルトマンのピアノ協奏曲にもある。

個性的で強い印象が残るといった曲ではないとは思うけれども、各楽章の性格の違いはわりとはっきりしているので退屈することもなく、ロマン派のピアノ協奏曲らしいリリカルな旋律がとてもロマンティック。
そのわりに、ロマン派的な感情移入の強さは希薄で押し付けがましいところがなく、さらりとした叙情感が美しい。メンデルスゾーン的な落ち着きと品のよさを感じさせるところもあり、これは思いのほか好みのタイプ。結局3回も続けて聴いてしまった。
地味なところはあるけれど、メンデルスゾーンのピアノ協奏曲が好きな人なら、気に入るかも知れません。

ただし、マルシェフのピアニスティックな演奏で聴くと、第3楽章などは速いテンポで勢い良く、ちょっと落ち着きのない感じはするけれど、メンデルスゾーンとは違った品種のバラの花のように華やかで堂々としたコンチェルトになっている。

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