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カッチェン《ブラームス:ピアノ作品全集》より (18)ハンガリーの歌による変奏曲
カッチェンのブラームス/ピアノ作品全集で、何も書いていない曲が一曲だけ残っていたのを思い出した。
ブラームスが書いたピアノソロの変奏曲のうち、最も知られていないし、全集以外で演奏・録音されることはほとんどないに違いない《ハンガリーの歌による変奏曲 Op.21-2》(1853年)

 ピティナの楽曲解説

 楽譜ダウンロード(IMSLP:国際無料楽譜図書館プロジェクト)


この曲は13の変奏とコーダから構成されたハンガリー舞曲風の変奏曲。わずか6~7分あまりの短い曲。

”ハンガリーの歌”からとった主題はファンファーレ風の明るい旋律。私にはクリスマスのオープニングの曲みたいに聴こえる。
3/4拍子と4/4拍子が1小節ごとに交代するという独特なリズム。第8変奏までこの変拍子がずっと続く。

変奏に入ると、短調だけれど力強い変奏が続く。第1変奏は短調に変わるが、より動きの速いフォルテの和音移動。第2変奏と第4変奏は何かが始まりそうな予感に満ちた旋律。

第5変奏と第6変奏はクロスリズムのハンガリー舞曲風。独特の憂愁感が漂っている。

第7~11変奏は長調に変わり、パストラル風というか子守歌風というか、穏やかで柔らかい旋律と響きがとても優雅。

第12~13変奏は、急に目が醒めたように、速いテンポのクロスリズムで弾く跳躍の激しいパッセージ。フィナーレの序章のようでとても華やか。
Allegroのコーダに入ると、ベートーヴェン風(とでも言えばよいのでしょうか)のロンドで明るくリズミカル。その後に、緩急のコントラストがきいた旋律が何度か交代し、エンディングは主題が再現され、堂々と力強いフィナーレ。

《ハンガリーの歌》を主題にしているにしては、主題自体がハンガリー民謡風な感じはそれほどしないし、変奏もハンガリー舞曲のような民謡調はあまり多くはない。
音の構成はブラームスらしく、重音・和音移動と幅広い跳躍が多用されているので、速いテンポで弾くにはかなりの力技と運動神経の良さが必須のような曲。カッチェンは水泳、野球、卓球が得意なスポーツマンだったので運動神経が良いせいか、そういうところはスイスイ弾けている。

ヴィルトオーゾらしい華やかさとハンガリー風のほの暗い情熱的な雰囲気を堪能したければ、《ハンガリー舞曲》、それもよくある連弾版ではなくて、ピアノ独奏版(第1~10番のみ)の方を。
ピアノソロで良いと思った録音は、カッチェンのほかにキーシンの録音(これは抜粋版)があり、いずれも素晴らしく鮮やか。

全集に収録されている曲の記事はこの曲で全て完成。今まで知らなかった曲やしっかり聴いていなかった曲を何度も聴いたのは、この全集のおかげ。
全集以外では録音されることも少ない《自作主題による変奏曲》や《ピアノ・ソナタ第1番》はとても気に入ったし、ヘンデルバリエーションや後期ピアノ曲集の演奏は素晴らしく、そもそも好きではない曲の方がすぐには浮かんでこない。
少し残念なのは、もともと録音が少ない《主題と変奏》が入っていないこと。でも、同じように録音が珍しいピアノソロの《ハンガリー舞曲集》の方はちゃんと入っていて、そちらが聴けるだけでも十分。

Brahms: Works for Solo PianoBrahms: Works for Solo Piano
(1997/11/11)
Julius Katchen

試聴ファイル


 《ハンガリー舞曲集(ピアノ独奏版)》の記事

 『ジュリアス・カッチェンにまつわるお話』

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Author:yoshimi
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クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
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