ラツィック ~ ショパン/ピアノ協奏曲第1番(ライブ放送) 

2010, 02. 23 (Tue) 18:00

ショパンのピアノ協奏曲を聴くのは久しぶり。ここ10年くらいは聴いていなかったけれど、最近聴いたアラウとクレンペラーのピアノ協奏曲第1番のライブ録音は、ベートーヴェンかブラームスの雰囲気が漂い、ショパンらしくない変わったところがとっても面白かった。

夜中にウェブラジオでライブ中継していたのは、デヤン・ラツィックが弾くピアノ協奏曲第1番。伴奏はアヌ・タリ指揮中部ドイツ放送交響楽団。ライプチヒ・ゲヴァントハウスにて。
ラツィックがブラームスのヴァイオリン協奏曲を編曲したピアノ協奏曲(第3番)はかなり良かったので、ショパンのピアノ協奏曲ならどういう風に弾くだろうかと興味があったし、彼の演奏を聴いているとショパンやシューマンに向いているのかなという気がしたので。

第1楽章は、ショパンらしく華やかさはあるけれど感傷的な憂愁といった雰囲気は薄い。
元々音質はやや軽めで線が細いので、響きはシャープでクリア。ルバートやディナーミクを微妙に細かくつけているにしては、軽やかで爽やかな感じのするショパン。
スタッカートやスタッカートに近いタッチを多用している。そのスタッカートのタッチが面白くて、短く切って飛び跳ねるようなところは、ムストネンとよく似ている。ところどころ、ムストネンの弾き方をもっとマイルドにしたような感じのアーティキュレーションが顔を出す。
このスタッカートがあちこちに入っているおかげで、流麗なショパンの曲なのに、急に別の曲が割り込んできたようで、なんかショパンのようでショパンじゃないちょっと変わった弾き方(に私には思える)。
世評高いショパンらしい演奏よりも、こういう一風変わった弾き方の方が面白い。ラツィックのピアノと相性がわりと良いのは、ムストネンにちょっと似ているところがあるからかも。

第2楽章はさすがにとってもロマンティック。
もともと音が澄んでいて綺麗な響きのピアノを弾く人なので、こういうゆったりしたテンポで、柔らかいタッチの弱音を弾くと、本当にまろやかで微妙なニュアンスのある繊細な響きがする。
ここはスタッカートもほとんど使わず、滑らかなレガートで弾いていてショパンらしいのだろうけれど、感傷的なところは少なく、柔らかい羽毛でくるむ様な優しい雰囲気。
かなり独特の弱音の表現で、細波のようにとても細かな起伏をつけテンポを微妙に揺らしていくので、これ以上やりすぎると”微に入り細を穿ちすぎ”になりそうなくらい。

第3楽章は、舞曲風でもとから軽やかなタッチで弾くところが多いので、ラツィック独特のスタッカートの出番が多い。
曲想と相まって、とても面白いタッチと響きなので、どこか悪戯っ子が遊んでいるようなスタッカートに聴こえる。
とても流麗で華麗なレガートのパッセージの間に、このスタッカートが入ると、なんかアンバランスな気もするけれど、軽快な舞曲風なリズム感があると言えなくもない。
なぜかスタッカートがやたら気になってしまった。
演奏自体は目立ったミスタッチはほとんどなく、速いテンポでも指も良く回り、一音一音明瞭で弱音でもしっかりした響きが美しく、切れ良く鮮やかで安心して聴ける。
ブラームスのコンチェルトを聴いた時と同じように、隅ずみまでどういうタッチでどう表現するか良く考えられている感じがする。

演奏が終ると、ブラボーと叫んでいる人はほんの少し。拍手が長く続いているなかに、ざわつきがかなりあるので、この演奏に対する聴衆の反応は複雑だったのかも。ブラームスの編曲版ピアノ協奏曲よりも、ラツィックの個性的な奏法が強く出ていたので、好みが分かれるでしょう。
ラツィックの演奏は、華麗さとどこかしら軽妙な面白さがブレンドされているので、ショパンらしくないところがとても面白くて、久しぶりにこのコンチェルトを聴いて良かったと思えるほどに、とっても気に入りました。


3回くらい拍手で舞台に呼び戻されたので、ラツィックはショパンのワルツ(14番ホ短調(遺作)だと思う、多分)をアンコールで弾いている。(この曲はスタジオ録音済み。試聴ファイルはこちら
針の尖ったようなシャープなタッチの冒頭、軽やかなスタッカートや柔らかな弱音とタッチをいろいろ変えて、ルバートのかけ方も独特。これも変わったところのある演奏だと思うけれど、速いテンポで勢いがあり、切れ味よく華やか。中間部は弱音の響きが柔らかくて綺麗でロマンティック。コンチェルトよりもこっちの方が聴衆のウケは良かったみたい。

 ブラームス=ラツィック編曲《ピアノ協奏曲第3番》(ヴァイオリン協奏曲の編曲版)の記事

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