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スティーヴン・ハフ ~ リーバーマン/ガーゴイル、子供のためのアルバム
スティーヴン・ハフがチャイコフスキーのコンチェルトのアルバムをリリースするというので、そういえばリーバーマンの曲の録音について何も書いていなかったのを思い出した。
ローウェル・リーバーマンはニューヨーク出身のアメリカ人作曲家。1961年生まれでハフと同い年。
ハフが昔ニューヨークに住んでいたせいか親交があるらしく、ピアノ協奏曲第2番はハフに献呈されている。
ハフもリーバーマンの曲は得意にしているようで、ピアノソロとコンチェルトでそれぞれ2曲づつ録音している。


《ガーゴイル/Gargoyles Op.29》

リーバーマンの作品のなかで特に有名なのは、ピアノのための《ガーゴイル/Gargoyles Op.29》(1989)
ガーゴイルって何?と思って調べると、日本語ではいう樋嘴(ひばし)にあたるらしく、Wikipediaでは「怪物をかたどった彫刻、またはその怪物である。ほとんどが背中に翼をもったグロテスクな姿である。本来の意味である彫刻としてのガーゴイルは主として西洋建築の屋根に設置され、雨樋から流れてくる水の排出口としての機能を持つ。」
日本の建築物でいう<鬼瓦>のような魔除けの意味も、ガーゴイルにはあるらしい。
アメリカのTVアニメシリーズにも《Gargoyles》という番組があって、子供の頃よくTVで見てたデビルマンのような翼のあるキャラクター。

リーバーマンの曲集は、吐水口兼厄除け彫刻の方よりも、怪物ガーゴイルをイメージしたのではないかと思うけれど、全4曲で構成。録音を少し調べるとハフの他には2種類しかないみたい。

<Ⅰ Presto><Ⅳ Presto feroce>は、リーバーマンらしいミリタリー調の行進曲風。
まさにリーバーマンのトレードマークのような旋律とリズムで、ピアノ協奏曲や他の室内楽曲でもたびたび出てくる。
リズミカルで威圧感があるので、STAR TREKとかのバトルシーンにぴったりだと聴くたびに思ってしまう。欧州やロシアやイギリスの音楽ではなくて、現代のアメリカ音楽のテイスト(だと私には思える)がたっぷり。
かなりピアニスティックで力技もいる感じがする曲ながら、ハフの針のようにシャープで精密な打鍵が冴えて、テンポの速さや和音移動でも軽快。寸分の狂いもない精巧な細工のように緻密で隙がない鮮やかさ。

<Ⅱ Adagio semplice,ma con molto rubato>は、打って変わってとても叙情的な曲。リーバーマンの和声は、不協和的なところはあっても歪みが響きがとても綺麗。

<Ⅲ Allegro moderato>はとてもファンタスティック。雪の結晶が舞い、オーロラが輝いているような、冷たい氷の世界にいるようなイメージ。ハフの濁りのないクリアで冷ややかさのある響きがこの曲にぴったり。

Stephen Hough : The Piano AlbumStephen Hough : The Piano Album
(1998/08/27)
Stephen Hough

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このアルバムは、超絶技巧が要求される曲や稀少曲が多く、ハフの演奏を初めて聴くなら、ピアノソロはこれがベストだと思います。この内容が廉価盤で聴けるというのはかなり贅沢。
コンチェルトなら、ラフマニノフのピアノ協奏曲集がベスト。他には、リストのピアノ独奏曲集(古いVirgin盤の方)やサン=サーンスのピアノ協奏曲全集も、超絶技巧と凛として透明感のある叙情感が美しいハフのピアニズムが楽しめます。


《子供のためのアルバム/Album for the Young, Op. 43》

リーバーマンのピアノ協奏曲集の付録のように余白部分に収録されているのが、《子供のためのアルバム/Album for the Young, Op. 43》(1993)。ピアニストのアンドリュー・ワイルドの2人の子供たちに献呈。
同名の曲集はシューマンとチャイコフスキーにもあり(私は聴いたことがないけれど)。
この曲集は比較的調性が安定した旋律と和声が美しい18曲の曲集。6曲だけしか録音されていないのが残念。
曲想の変化を出すためか、曲順を変えて収録している。この曲集の編曲版としてフルート&ピアノのための《Five Pieces from Album for the Young Op. 79》もあり。
この曲も録音が少なく、ハフの録音の他には、David Korevaarが弾く『Lowell Liebermann: Piano Works』(Koch盤)に収録されている演奏のみ。

<No.6 Ostinatono>は、コリリアーノのようなファンタスティックなオスティナートの曲ではなくて、左手が穏やかにしとしとと降る雨音のような視覚的なイメージがする。
変拍子なのかもしれない5音の音型パターンを音を変えながらオスティナートしていき、右手は物思いにふけっているような旋律。

フォーレへのオマージュである<No.12 Hommage a Faure>。軽やかで夢見るような美しさとエレガントな曲。フォーレの曲の雰囲気に似ているのかもしれないけれど、フォーレはほとんど聴かないのでそこのところはよくわかりません。

この曲集中一番有名な<No.11 Starry Night>。確かに、シサスク風の神秘的で宇宙をイメージさせるような旋律と響きが綺麗で、空に瞬く星のようにクール。

リーバーマンが子供の時に作曲した<No.8 Rainy Day>。確かに雨がしとしと降っているように同音(型)がオスティナートされていく曲。ドビュッシーの《雪が踊っている》に少し似ている?

<No.14 Hommage a Alkan>は、まるでワルツを踊っているように軽やかで、柔らかく優しい旋律と響きの曲。この曲の中で一番楽しそうな雰囲気。
Alkanというと、《ピアノ独奏のための協奏曲》で有名なあのアルカン。アルカンというと超絶技巧でスピーディな曲というイメージが一般的なので、この曲とはオーバーラップしない。
でも、アルカンの前奏曲集やスケッチ集は、バロック風の古典的な典雅さと抑制の効いた叙情が美しい世界。この曲は、アルカンの曲が連想させる古き良き時代へのオマージュなのかも。


ゆったりとしたテンポでまどろむような雰囲気の<No.10 Lullaby>。眠りに誘うように、やや不安定な和声が混ざった旋律が徐々に下降していくので、ちょっと力が抜けていくような浮遊感。

協奏曲とは打って変わって、落ち着いた雰囲気と澄み切った叙情感がとても綺麗で、一つ一つが夢見る宝石のようにキラキラ。
クリアなのに霞がかかったような柔らかい響きと色彩感のあるハフのピアノの音色がよく映えている。


Liebermann: Concerto for piano No2; Album Op43Liebermann: Concerto for piano No2; Album Op43
(1997/06/10)
Stephen Hough (Piano),Lowell Liebermann(Conductor),Glasgow BBC Scottish Symphony Orchestra

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tag : リーバーマン スティーヴン・ハフ

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クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
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