ムストネン ~ チャイコフスキー/ピアノ協奏曲第1番(ライブ放送) 

2010, 02. 27 (Sat) 18:00

今週は、私の好きなピアニストのライブ放送がウェブラジオで立て続けに流れているので、睡眠不足気味。
今度もまたチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番。ソリストはムストネン、クリストフ・ポッペン指揮ドイツ放送フィルの伴奏で、ザールブリュッケンからライブ中継。
数日前に聴いたハフのチャイコフスキーのピアノ協奏曲は、どういう演奏か想像がついていたので期待通りだったけれど、ムストネンが弾くチャイコフスキーのコンチェルトとなると???
タッチや奏法から考えても、なんとなく合わないような...。でも、恐いもの見たさで、明け方からの放送だったけれど、最後までちゃんと聴きました。

第1楽章冒頭のピアノは、柔らかいタッチのしなやかなフォルテ。最初の見せ場でもあるので、ここを派手にバンバン弾く人も多いような...。力任せに弾かないところはムストネンらしい。
いつものように、跳ねるようなタッチのスタッカートを入れながらも、さすがに重音移動が続くので、ここではあまり多用していない。
ペダルを踏んだアルペジオもそれほど濁らずに綺麗に響き、音が少なめの重音移動になると、スタッカートのタッチが軽やか。
ピアノの力感はそれほど強くなく、オケもピアノにあわせて、柔らかく滑らかな流れの伴奏。

中間部は、ムストネンのスタッカートの飛び跳ねるように軽やかで、ちょっと何かが起こりそうな不思議な雰囲気もあって、自然のなかの昆虫たちや草木が目に見えないところで蠢いているような....。
緩徐部分は、柔らかいレガートと、やや線の細いタッチの響きに透明感があって、清々しく爽やか。

終盤は少しテンポを上げて、音量も上げていくけれど、もとから線が細く軽めの音質なので、迫力には欠けるところはある。
全体的に、音がそれほど重ならずに単線的に移動していく場合は、スタッカートのタッチと強弱の付け方がかなり面白いけれど、テンポの速く音が詰まった重音移動で結構ミスタッチがあり、聴いていてもちょっとヒヤヒヤ。
大音量の迫力とロシア的憂愁の濃い重たさとは無縁で、それと逆方向の優美で透明感のあるとても爽やかなチャイコフスキー。ムストネンの音質やタッチから考えて、普通にイメージするようなチャイコフスキーは弾けないだろうとは思うけど。

第2楽章は、第1楽章とは違ってピアノに安定感があり、強弱もコントラストを明確で、強弱の変化するスピードも速く、見違えるように鮮やか。
ムストネンらしいタッチの打鍵が冴えて、蝶が舞うような軽やかさでいろいろな生き物が飛び跳ねていくような躍動感。
濁りのない澄んだ響きが曲想に似合っていて、初夏のような瑞々しさのあるピアノがとても綺麗。この楽章の演奏が一番良かったと思います。

第3楽章は、第1楽章よりも音の詰まった重音移動が減っているせいもあってか、テンポが速くても打鍵がシャープで安定しているし、重音のタッチの切れが随分良くなっている。目立ったミスタッチもなく、どうも第1楽章だけがやや不調だったらしい。
スタッカートが尖った針のようにシャープになって、とてもムストネンらしい奏法。終盤のフォルテのところは、しっかりした打鍵で弾いているのでそこそこ力感も出て、フィナーレらしく華やかに。

演奏が終るとブラボーの声が結構多くて、拍手もそこそこ盛大。
第1楽章はどうなることかと思ったけれど、あの柔らかくて優雅な雰囲気でまとめていたし、第2楽章のムストネンらしい軽やかで躍動感のある爽やかさ。第3楽章の尖った切れの良い一風変わったタッチはかなり個性的だった。
ムストネンの奏法は有名なので、聴衆も普通のチャイコフスキーのコンチェルトが聴けるなんて、全然思っていないに違いない。そういう意味では、期待通りの演奏だったんでしょう。私も結構満足しました。
ムストネンのピアノでこの曲を聴いていると、チャイコフスキーとは違うコンチェルトを聴いている気分になるので、スタジオ録音してくれれば買ってしまうかも。

ライブ中継なので、ムストネンのピアノソロによるアンコールも聴けました。
アンコール曲はチャイコフスキーの小品なのかもしれないけれど、チャイコフスキーは聴かないのでよくわからない。彼は自分で作曲もするので、もしかしてムストネンのオリジナルかも。
旋律、和声と曲の雰囲気から言えば、バルトークの《シク地方の3つのハンガリー民謡》に良く似たところがある曲。静かでしっとりとしてやや憂いのある旋律がとても美しく、どこかしら東欧風のエキゾチックな雰囲気。
ムストネンの線の細い澄んだピアノの響きがとても良く似合う曲でした。

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