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ヘンツェ/ピアノ作品集 ~《トリスタン》への前奏曲,ルーシー・エスコット・ヴァリエーション,ほか
ハンス・ヴェルナー・ヘンツェはオペラや管弦楽曲の作品が多く、ピアノ協奏曲や独奏曲は数も多くはないし、録音もかなり少ない。
これは、その珍しいヘンツェのピアノ独奏曲を、それも初期~最近の作品まで収録しているとても珍しいアルバム。世界初録音の曲が半分くらいある。
ピアニストは、初めて聴くヤン・フィリップ・シュルツェ。

Hans Werner Henze: Piano WorksHans Werner Henze: Piano Works
(2007/03/27)
Jan Philip Schulze

試聴する(米国amazon)


ピアノ協奏曲ともども、ヘンツェのピアノ曲はあまり知られていないし、演奏機会も多いとはいえないものばかり。
典型的な現代音楽的な曲が多いが、意外と聴きやすいのは、和声の美しい響きと、旋律に叙情的なものを感じられるせい。
シェーンベルクのピアノ小品のような音の動きに、ベルクのような和声の響きと叙情性とが混在しているような感じがする。
シェーンベルクとベルクのピアノ曲を聴きなれた人なら、ヘンツェはとても聴きやすいと思う。

ルーシー・エスコット・ヴァリエーション(1963)
オペラ歌手のルーシー・エスコットを追憶した曲。彼女が得意だったベッリーニの《夢遊病の女》第1幕のアリア"Come per mc sereno,"に基づいていて、この頃ヘンツェが好んだ南欧の文化や生活への嗜好も反映されている。
フランス印象派のような浮遊感のある旋律が流れ、やがてその上にショパンのノクターン風のロマンティックな甘い旋律がかぶさるようにオーバーラップし、今度はベルク風のやや不協和的な冷たくシャープな旋律と和声が徐々に混ざって広がっていくという、さまざまな様式の美しい音楽が錯綜した幻想的な曲。
その響きの美しさと幻想性が素晴らしく、この曲集で最も印象に残る曲。

ピアノのための変奏曲(1948)
シェーンベルクのピアノ曲に叙情感を加えたような曲。
ルーシー・エスコット・ヴァリエーションよりもずっと音の密度は薄いし、旋律に歌謡性はほとんどないけれど、なぜか叙情感を感じさせる音の配列。
変奏曲といっても、聴いただけではどこがどう変形されているのかピンとこないけれど、物思いにふけるようにポツポツと音が断続的につながっていったり、途中でベルク風の緊迫感のある変奏や、音があちこち跳躍したり、おしゃべりしているような饒舌な音の動きのある変奏とか、強弱・緩急・リズムの変化で盛り上がったり沈んだり。
全体的に和声が美しく響くこともあって、十二音技法の曲を聴き慣れていると、この曲はとても聴きやすい。

ひとつの小さなフレーズ-映画《白鳥の愛》より(1984)
和声は綺麗だけれど、映画用の曲にしてはメロディアスでもなく、内省的でちょっと小難しそうな曲。
欧州のアート系の映画にでも使われていたのかも。

《トリスタン》への前奏曲(2003) ※世界初録音
ヘンツェの《トリスタン》といえば、テープ録音とピアノが入った管弦楽曲が有名。
この独奏曲の方は、コンチェルトのソロパートを抜き出してきたような曲で、和声や響きが綺麗。リズミカルなところもあって、かなりまともな曲。
叙情感を薄くしたベルクと饒舌なシェーンベルクをブレンドしたような感じ感じだろうか。
第1曲は冷たく静かな水面と、その上をいろんな波紋が広がっていくようなダイナミックな動きが共存するような曲。鋭く冷たい硬質な美しさ。
第2曲は一定のリズムで、あちこち飛び跳ねる音がいろいろ組み合わさっていくところが意外と綺麗。
第3曲はやや神秘的な雰囲気のLento。第4曲はかなり饒舌。くぐもった響きが重なりあうところが美しいが、途中で不協和的な和音のフォルテや激しいアルペジオのパッセージが現われたり、思い出したように言葉を発するかのような右手の旋律が結構賑やか。

ケルビーノ-ピアノのための3つの細密画(1980/1981)
他の収録曲と比べて、特に”No.1:Andante cantabile”がタイトル通り旋律がメロディアス。”No.2:Sostenuto”は音がまばらで静かで内省的、”No.3:Con allegrezza”は音の動きが激しくなり、緩急が交代し、最後は和音を多用したファンファーレのような旋律(なにかをもじっているのかも)が出てきて、ちょっと変わった雰囲気。

トッカータ・ミスティカ(1994) ※世界初録音
プロコフィエフとジャズの影響があると言われる曲。タイトル通り神秘的な雰囲気があり、少しベルク風なところも。
トッカータなので、音が激しく動き回り、低音部の強めの和音も多く、いかめしい雰囲気。

ソナチネ1947(1947) ※世界初録音
多少不協和的な響きが入っているけれど、調性的な安定感がわりとあって、少し調子はずれのドビュッシーといった感じ。この作品集のなかでは一番聴きやすい曲。
子供やおもちゃの人形が遊んでいるような軽妙で可笑しげな第1曲(Allegro con brio)、密やかな第2曲(Andantino)、過去の思い出を回想するようなレトロな感覚がする第3曲(Pastorale:Modere-Doux et triste)。

ピアノ・ソナタ(1959)
《ピアノのための変奏曲》によく似た作風で、もっと抽象性が強い感じ。

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クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
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