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シューマン/ドビュッシー編曲 ~ カノン形式による6つの練習曲(独奏版&2台のピアノ用編曲版)
シューマンは、なぜかオルガンのような足元鍵盤のついた”ペダル・ピアノ”という楽器が好きだった。
そのせいか、ペダル・ピアノ用の曲をいくつか書いているが、たぶん一番有名(といっても一般にはほとんど知られていない)なのが、《カノン形式による6つの練習曲》

この曲の録音は、オルガンで弾いたものが多いが、ピアノ独奏や2台のピアノによる演奏、さらにはピアノトリオなどの室内楽曲編曲版など、なぜかバリエーションが多い。
独奏版以外の編曲版は、シューマンではなくほかの作曲家が書いたもの。
オルガンで弾くと、ちょっとぼやけた響きになるのが個人的にはあまり好きではないので、オルガンではまず聴かない。

珍しいのは、フォルテ・ピアノ(1852年ピエール・エラール製)で弾いたトビアス・コッホの録音
6曲中4曲だけ抜粋しているが(第1番と第3番が未録音)、フォルテ・ピアノの独特の長い残響とレトロな響きがとても美しい。
フォルテ・ピアノは音がひび割れて濁ったような響きがするのが好きではないので、ほとんど聴かないけれど、このコッホの弾いているフォルテ・ピアノの音は柔らかくて、心地よい響きなので、全く抵抗なく聴ける。
今簡単に入手できる録音のなかでは、下手にモダン・ピアノで聴くよりも、こっちの方が良さそう。

Piano Works From Dresden 1845-1849Piano Works From Dresden 1845-1849
(2010/02/23)
Tobias Koch(フォルテピアノ)

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モダン・ピアノによる独奏だと、タッチやフレージングはもちろん、ペダリングをかなり工夫しないと、オルガンやピアノ・フォルテで弾いた時のような重層的な響きの美しさが出ないようなので、あまり良い録音が見つからない。
有名なピアニストならイェルク・デームスの『シューマン:ピアノ独奏曲全集』に録音があるけれど、優雅な雰囲気はあるが、響きはそれほど綺麗ではないように感じる。

私が聴いたアンデルジェフスキのライブ放送では、とても柔らかいタッチで、透き通るように清楚な感じの響きがとても綺麗で、その響きが幾重にも重なってカスケードのように流麗だった。
ピアノの音が特に美しく、フォルテ・ピアノとモダン・ピアノの中間くらいの響きで、クリアさとレトロ感が上手く溶け合った音。
これはピアノのモデルの違いか、調律の工夫か、それともアンデルジェフスキのタッチとペダリングの上手さか、どうしてこういう音で弾けるのかかなり不思議。
モダン・ピアノのソロなら、この曲のベストかそれに近い演奏だと思えるほど。

ピアノ・ソロで良いものが見つからなければ、ドビュッシー編曲による2台のピアノ版の方を聴くという手もある。
さすがに音が増えて響きに厚みが出るので、響きが薄めのピアノソロで聴くよりも、原曲のもつ重層的な響きの美しさを味わえる。
ただし、2台のピアノ盤だと、せかせか速いテンポで弾いて騒々しかったり、第1ピアノと第2ピアノが微妙にずれてたりしている演奏があるので、弾くのが結構難しい曲なのかもしれない。

ダニエル・ブルメンタールとロベール・グロロの2台のピアノ盤(MarcoPolo)は、テンポは少しゆったりめのところが程よく、ピアノ同士がずれることもほとんどないのが良いところ。
欲を言えば、せっかく2台で弾いているのだから、もう少し音の重なりの美しさを出して欲しい気もする。2台だとソロよりも響きが混濁しそうなので、ペダリングがかなり難しいのかも。

Debussy: Arrangements for 2 PianosDebussy: Arrangements for 2 Pianos
(1994/07/14)
Daniel Blumenthal(piano),Robert Groslot(piano)

試聴する(米国amazon)


全曲聴くことのできる音源なら、ピティナのサイトにあるシューマンの原曲頁に登録されている音源(2台のピアノ盤)は、ピアノがさほどずれずに揃っている。(ちょっとテンポが速めで音が強すぎる気がするけど)


ペダル・ピアノのための練習曲(6つのカノン風小品)Op.56  (ピティナの作品解説)

作曲した年の1845年は、シューマンが対位法の研究にかなり力を入れていた頃。
オルガンにもぴったりのこのペダル・ピアノ用練習曲を作曲するというので、自分のピアノに足鍵盤(pedal-board)をつけたという。
ペダル・ピアノ用の練習曲は全部で3種類の曲集を作曲している。この曲集は作品番号が一番若い曲集。
第1曲と第6曲ではカノンらしい様式が明瞭。その間に挟まれた4曲はそれに比べてそれがすぐにはわからない。
解説によると、第1曲と第6曲のような厳かな雰囲気の曲想は、《詩人の恋》や、交響曲ラインでケルン大聖堂を想起させる部分で使われている。

No. 1 in C major,Pas trop vite
6曲中、最も響きが美しく重なり、まるでコラールのような清らかな曲。
カスケードが折り重なっていくようなカノンがとても美しいけれど、モダン・ピアノのソロならペダリングをかなり工夫しないと、響きがかなり短くなるか、音が重なり過ぎて混濁した響きになってしまうような曲。

No. 2 in A minor,Avec beaucoup d'expression
光と影が交錯するような愁いを帯びたとてもロマンティックな曲。レトロなフォルテ・ピアノの響きがとっても良く似合う。

No. 3 in E major,Andantino
メンデルスゾーンの無言歌のように、優しく楽しげな雰囲気で、とても調和のとれた安定感のある曲。

No. 4 in A flat major,Espressivo
歌曲のような旋律がとても伸びやか。初めは明るさのある穏やかな旋律。
中間部で感情が高揚していくところが特に美しい。
やがて、元通り落ち着いた柔らかな雰囲気で静かに終える。

No. 5 in B minor,Pas trop vite
スタッカート主体の行進曲風とはいえ、騒々しくなくて、軽快でちょっと優雅な雰囲気。

No. 6 in B major,Adagio
終曲らしくゆったりと静かで、敬虔さを感じさせる旋律がとても綺麗。
様式が古典的なのかもしれないせいか、どこかしらベートーヴェンの最後のバガテルを連想させるような穏やかさと安定感がある。

tag : シューマン ドビュッシー

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フォルテピアノ
Yoshimiさん、こんにちは。
あれから検索していくつか試聴してみたんですけど
聴けたのはドビュッシーの編曲ばかりで…
(ピティナのサイトのも含めて)
でも原曲を知らないで編曲を先に聴いてしまうというのは
違うイメージがついてしまいそうで、ちょっと抵抗もあったんですよね。
フォルテピアノの演奏、すごく美しいですね!
確かにこれは下手にモダンピアノで聴くよりもいいかも。
この響き、実際にCDで聴いてみたいです。
しかも丁度クララ・シューマンの曲も聴きたいと思ってたところだったんですよ。
なんていいタイミング。
素敵なCDのご紹介ありがとうございます♪

アンデルジェフスキのも、いつかぜひ聴いてみたいです~。
このフォルテピアノは響きが綺麗ですね
アリア様、こんにちは。

ドビュッシーの編曲版の演奏、なぜか多いですね~。あまりに美しい曲なので、2台のピアノのレパートリーとして、有名なのでしょう。

フォルテピアノは、ピアノのモデルとピアニストによって、かなり響きが違ってくるんですが、コッホは音がとても綺麗で、下手にモダンピアノで聴くよりの、この曲の良さがよくわかりますね。
この曲集は第1番の響きが一番綺麗な曲なのですが、これが抜けているのがとっても残念。

アンデルジェフスキの演奏は、フォルテピアノの音を少しクリアにしたような響きが素敵です。この珍しい曲を選んだのは、シューマンイヤーにちなんだのでしょうが、とても良い選曲センスだと思います。

今年はシューマンイヤーなので、クララ・シューマンの曲もかなり録音が増えそうです。
グリモーがクララの歌曲をオッターと録音したCDを持ってますが、中身はすっかり忘れているので、聴き直してみるのもよいかなという気がしてきました。
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喜んでいただけてよかったです。
くまさん、こんにちは。

無事再生できて何よりです。
ピアノの音が綺麗なので、いつもうっとりとして聴いています。
楽しんでくださいね!

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クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
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