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吉松隆/ピアノ協奏曲《メモ・フローラ》
吉松隆の唯一のピアノ協奏曲は《メモ・フローラ》
ピアニストの田部京子を想定して作曲したはずなので、彼女の硬質で透明感のある品の良い音色がとてもよく映えている。
田部京子が弾いている吉松の録音は《プレイアデス舞曲集》が2種類。
音も旋律も綺麗なので、リリースされた当時はよく聴いていたけれど、似たような曲想の曲が多いのでずっと聴き続けるとちょっと飽きてしまう。集中して聴くよりは、環境音楽のようにぼ~っとして音の流れを聴くのが良い気はする。

このピアノ協奏曲はとにかく音と和声がとても繊細で美しく、ぼ~っとしながら聴いていると、とても心地よい。
第1楽章と第2楽章の旋律に歌謡性はないので、これはほとんど思い出せない。そういう旋律の動きを追わずとも、音の響きの世界に浸るのに向いている。

第1楽章は”Flower”。音のタペストリーの織り成す響きがとても美しく、主題のモチーフが波のように揺れ動きながら、あてどなく流れていき、波間に消えたと思ったら、再び現われたりしているような浮遊感。

第2楽章”petals”。花びらという意味。
蕾がゆっくりと開花するところをマクロレンズで凝視して、まるで静止しているかのようにゆっくりと微細な動きから、徐々に加速して花びらが大きく開いていくようなイメージ。
始めは静かに緩いテンポで単音主体のピアノの旋律が、徐々にテンポを上げ和音主体でカスケードのように重なっていき、最後はまたゆっくりと静かに。

一番好きな第3楽章”Bloom”は、軽快なテンポで、センスの良い洒落た雰囲気。
前2楽章はわりと緩々としていたので、最後は開花した”Bloom”のように、ぱっと目が醒めるように鮮やか。
洗練されたモダン・ジャズのような現代性と、英国風(というのか)のやや醒めた知性とが融合したような気がする。
軽快で明るい色調なのに、なぜか黄昏に差し掛かったようなイメージを連想してしまうのは、この曲に乾いた感性を感じるものがあるから。
ピアノが弾くアルペジオは華やかに聴こえるけれど、それにしてはあまり目立たず、逆に、オーケストラの響きと融合したような、どちらかというと伴奏的でオケパートの一部のように聴こえる。

Yoshimatsu: Piano ConcertoYoshimatsu: Piano Concerto
(1998/10/20)
Sachio Fujioka (Conductor), Manchester Camerata, John Barrow (Flute), Kyoko Tabe (Piano)

試聴する(米国amazon)


カップリングは4曲。どれも似たようなタッチで書かれている。

《鳥は静かに..》Op.72は、その和声と旋律が《朱鷺に寄せる哀歌》を彷彿させる曲。
違うところは、緊迫感と悲愴感がないところ。
《朱鷺に寄せる哀歌》は滅亡する朱鷺を歌ったものなので、滅びの美学のように研ぎ澄まされた美しさがある曲。
この《鳥は静かに..》は、人間にジャマされずに、平和的に暮らしている鳥のイメージ。

《天使はまどろみながら》Op.73
本当にまどろんでいるような雰囲気の曲。
ヴァイオリンの音が鳴ってはすぐに減衰していくところが、意識と無意識の間を彷徨っているような浮遊感。
ピアノが同じ旋律を弾いても、硬質の響きと残響が、弦楽器で弾く旋律とはかなり違った雰囲気。
ピアノと弦楽器という異質な響きが、徐々に重なりあっていくところの感覚が、ちょっと面白い感じ。

《夢色モビールII》Op.58aは、オーボエとハープのソロがとても綺麗な曲。
オーボエ独特のやや物哀しい音色とハープの波間に漂うような響きが溶け合って、とても夢想的な雰囲気。

《白い風景》Op.47a
雪景色を表現したとてもファンタスティックな曲。フルートは舞い落ちる雪の結晶、ハープは幻想的な雪景色、チェロは自然や大地のようなイメージがする。

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Author:yoshimi
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クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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