ソコロフ ~ バッハ/ゴルトベルク変奏曲
2010.07.11 18:00| ♪ グレゴリー・ソコロフ|
今日はグレゴリー・ソコロフのとても珍しいゴルトベルク変奏曲のライブ録音。
ソコロフは、基本的にスタジオ録音はしない。随分昔に録音したスタジオ録音がいくつか残っている程度。
もっぱらライブ録音だけ、それもソコロフがなかなかリリース許諾しないので数が限られている。
仏NAIVEレーベルは、それにも懲りずに毎年何十回ものコンサートを録音し続けている。
ソコロフも毎年同じようにリリースはNG。「私が亡くなったら、リリースするのは自由だよ」なんて言っているらしい。
そのせいで、時々海賊版(?)らしきCD-R盤が数種類出回ったりしている。まるで昔のチェリビダッケみたい。海賊盤とはいえ結構音は良いので、ニーズはかなりあるらしい。
《ゴルトベルク変奏曲》は1982年2月レニングラードでのリサイタルのライブ録音で、LPでMelodijaから出ていたが、なぜかCD化されていない。
ベートーヴェンの後期ソナタの録音テープもお蔵入りなので、ソコロフが存命中に気が変わってリリース許諾してくれないかなあと、かすかに期待しているんだけれど。
ソコロフのディスコグラフィ
Sokolov - Bach Goldberg Variations BWV.988.wmv
Leningrad, Feb 27th 1982, Grand Hall of the Leningrad Philarmonic Society (Melodiya)
ライブ録音なので音はそれほど良くはないけれど、芯のしっかりした比較的クリアな音なので、ソコロフのしっとりと潤いのある美しい音色と色彩感は結構聴き取れる。
この音質でこれだけ綺麗な音なら、まともな音質なら素晴らしく綺麗な音に違いない。
ソコロフの音はクリアな響きで深みと煌きがあり、カラフルな色彩感も加わってとても美しい音。
急速系と緩徐系ではタッチが全く変わって響きが全然違うので、それだけでもかなり違った色彩感が出る。緩徐系でも響きのバリエーションがかなり多い。
さらに声部ごとに響きが違い、それも旋律によって変化させていくので、色彩感の違いでとても立体的に聴こえる。
変奏ごとのテンポはかなり幅があり、緩急の落差も大きいので、メリハリはよく効いている。
急速系の変奏は、弾力とリズム感、スピード感が素晴らしく、揺らぎなく堅牢な構造。コロリオフのような縦と横の線が組み合わさったような構成感はあるが、ずっと動的でがっちりとした骨太さと弾力のある力強い推進力がある。
緩徐系の変奏は、柔らかい弱音の響きと微妙な強弱の揺らぎのある表情が繊細で、表情の奥行きが深い。
そういう弱音の繊細さに耽溺したり、感情移入したようなしつこさはなく、表現の幅の広さと繊細さはあっても感情が自然にわきでているような叙情感を感じる。
装飾音はそれほど多くはなく、使っている場合も凝ったものではなくあっさり。
ソコロフの場合は、元々音が綺麗で、微妙な響きの変化が多彩で表情が細やかなので、下手に装飾音を入れない方がすっきりしている。
トリルだけはかなり特徴があって、旋律から浮き出るように立ちあがって、鳥がさえずっているように表情が豊か。
色彩感の豊かさと表現の幅の広さ・深さは、今まで聴いた録音の中でもとりわけ素晴らしく、音自体の魅力と求心力・推進力の強さに引き込まれて、冒頭のAriaから最後のAiraまで一気に聴いてしまう。
演奏の密度が濃いうえに、演奏時間が90分近くかかっているので、長い旅路を歩いてきたかのような気がする。
(ピアノ版だと全部リピートを入れても長くて80分弱くらい。長い演奏ならテュレック95分(57年盤)、コロリオフ85分)。
ゴルトベルクは凄く好きとまではいかないけれど(ディアベリの方がずっと好き)、良い録音があるらしいと知るとつい聴いてみたくなる曲。おかげで異聴盤が増える一方。
ゴルトベルクをチェンバロで聴くには、私には響きが単調すぎて(それに長いし)途中で挫折するので、聴くのはピアノ版のみ。
20種類以上聴いたなかでは、一番良く聴くのがベッカーとコロリオフ。時々聴くのは、ペライア、ケンプ、それに、音質は悪いけれど、アラウのゴルトベルク変奏曲も気に入ってます。
これだけあればもう十分かと思っていたけれど、このソコロフのゴルトベルクはベッカー以上に気に入ってしまって、CD化されていないのが残念。
<メモ>
主題:アリア
わりと響きが明瞭で表情がしっかりしたアリア。(ここを眠たくなるように柔らかいタッチと響きで弾く人が結構多いような気はする)
色彩感のある音色と、弾力のある強い響きのトリル。
このアリアを聴いているといつも眠たくなるので、途中で飛ばしてしまうことが多いけれど、このソコロフのアリアは、音に煌きがあって表情もはっきりしてよく変化もするので、これはしっかり最後まで聴けた。
第1変奏
凄く速いテンポで、恐ろしく弾力と力強さのある第1変奏。
眠れないなら眼を覚ませとばかりに、全く息を抜くことなく一気に攻めこんでいくような迫力。
初めはなんと力強いタッチかとちょっとびっくりしたけれど、意外と騒々しくもバタついた感じもしなくて、慣れてしまうとこの切れ味の良さが爽快。
両手が同じくらい強いタッチなので、低音の左手のノンレガートが力強く、弾力のあるリズム感。
拍子を刻むようについているアクセントがよく効いているので、一本調子には聴こえず、スピード感と弾けるようなリズム感が冴えている。
第2変奏
ちょっとゆったりめのテンポで、とても優しく可愛らしい第2変奏。
特に、やや軽めのノンレガートなタッチが、そっと肌に触れるように優しくて、これはとても好きな弾き方。
あまりに前の変奏が勇壮果敢だったので、この極端な表情の変化がとても印象的。
第3変奏, Canone all'unisono
これも緩々としたテンポで、ささやくように語り掛ける変奏。
左手側は包む込むように柔らかくぼんやりした響きで、その上を右手側の主旋律と副旋律がクリアな響きで対話し、響きのコントラストによる色彩感が美しい。
第4変奏
再び急速系の変奏になって、これも第1変奏のように力強いタッチ。
テンポはすごく速いわけではないので、歯切れ良いリズムと和声の響きの厚みでとても安定感のある変奏。
急速系の変奏で音が詰まっていない場合、拍をきっちりとった縦の線が強く出ている感じがする。
第5変奏
急速系でも細かいパッセージが多いので、タッチはかなり軽やか。フレージングの末尾にアクセントを強く入れて、メリハリと躍動感の強い変奏。
第6変奏, Canone alla seconda
ゆったりとしたテンポで、ちょっとまったりしたテヌート気味のレガート。何かが起こりそうな期待や予兆といった感じ。
第7変奏
強めの明瞭なトリルは、おしゃべりするように表情豊か。ソコロフのトリルは、全体的に旋律の流れに添ってさりげなく入れ込むというよりは、旋律から浮き出るようにしっかりとした響きで、かなり目立って聴こえる。
第8変奏
第1変奏のように弾けるような力強く躍動的。こういうタッチに慣れてしまうと、これが自然に聴こえてしまう。
第9変奏, Canone alla Terza
緩徐系の曲は、声部ごとのタッチの違いが強くなってよくわかるので、色彩感と煌きのあり、音がとても綺麗。
第10変奏, Fughetta
この変奏は、いろんな速度と長さのトリルが入り混じっていて、トリルがあらわす表情の違いがとても面白い。
第11変奏
全ての声部がとても柔らかくて優しいタッチで弾かれて、ふわふわな真綿でくるまれているような心地よさ。対照的に、長く素早いトリルが鳥がさえずるような表情のあるトリル。この響きのコントラストがとても鮮やか。
第12変奏, Canone alla Quarta
やや速めのテンポで、弾力のある歯切れの良い変奏。横の線の動きがとてもよくわかる。
第13変奏
右手のキラキラとした高音の響きが美しく、左手はずっと柔らかいタッチ。
弱音の響きの微妙な変化でこまかなうねりのある歌うようなフレージング。
第14変奏
急速系の弾力のある変奏。縦の線が明瞭で、トリルや装飾音がここも良く響いて、とてもリズミカル。
第15変奏, Canone alla Quinta - Andante
やや速めのテンポで、あまり憂いを強く出さずに、さらりとした叙情感。ここも声部ごとに響きが違って、カノンが綺麗に3声に分かれて聴こえてくる。
第16変奏 - Ouverture
拍につけるアクセントが良く効いて縦の線がきっちりと刻まれて、とてもリズミカル。後半はやわらかいタッチで旋律の横の流れがなめらか。
第17変奏
急速系だけれど、タッチは強さよりもノンレガートの歯切れ良さが目立って、とても元気で楽しい雰囲気。
第18変奏8 - Canone alla sesta
これは縦の線が強く出て、カチカチとしたリズム感がとても気持ちよい。
第19変奏
ノンレガートだけれどやわらかいタッチで、ささやくような語り口でまったりとした雰囲気の穏やかな変奏。
第20変奏
かなり速いテンポで、音が弾丸のように流れていくのが面白い。音の詰まったパッセージになると音が塊のごとくに聴こえるので、ちょっと速すぎようなきはするけど。
第21変奏 - Canone alla settima
一転して、ややコラール風に静かで内省的。しっとりと水気のある響き。
第22変奏 - Alla Breve
やや晴れやかな雰囲気で、軽やかなノンレガートのタッチがとても優しげで素直な感じ。時折入るトリルは、鳥が囀るように表情豊かで明瞭でこれがとても可愛らしく響く。
第23変奏
ジェットコースターから一気に滑り落ちるようなスピード感と弾力でとても勢いの良いスケール。ユニゾンはとても力強く。
第24変奏 - Canone all'ottava
ここはゆったりしたテンポで、柔らかくて軽やかなレガートがとても優しい雰囲気。
第25変奏
しっとりとした哀感のある静寂な変奏。
10分近くかかって弾くかなり遅いテンポ。内省的な雰囲気を強く出し、まるで旋律が自問自答しながらつぶやいているかのように聴こえてくる。
この旋律を聴くと、ベートーヴェンのディアベリの終盤に出てくる短調の叙情的な変奏をすぐに連想してしまう。
第26変奏
一転して、明るく開放的な変奏。同音型のフレーズの連続で、徐々に鍵盤上を駆け上っていく疾走感が素晴らしい。その細かいパッセージ上を主旋律がリズム感よく流れていく。
第27変奏 - Canone alla nona
弾力のあるタッチで力強いカノン。
第28変奏
速いテンポで、トリルの響きがとても印象的。冒頭は高音のトリルが良く響いている。低音のトリルは穏やかな響き。
第29変奏
弾力のあるユニゾンと、勢い良く上行下降していく同音型の旋律。
第30変奏 - Quodlibet
とても明るく晴れやか。マルカートなタッチで縦の線のアクセントが入って、歯切れ良く、快活。トリルも力強く。
Aria da capo
トリルの響きが綺麗なアリア。冒頭よりも柔らかいタッチで静かに弾いているので、少し疲れてまどろむような雰囲気。最後は音量が落ちてリタルダンドし、静かに眠りについたようにエンディング。
※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。
ソコロフは、基本的にスタジオ録音はしない。随分昔に録音したスタジオ録音がいくつか残っている程度。
もっぱらライブ録音だけ、それもソコロフがなかなかリリース許諾しないので数が限られている。
仏NAIVEレーベルは、それにも懲りずに毎年何十回ものコンサートを録音し続けている。
ソコロフも毎年同じようにリリースはNG。「私が亡くなったら、リリースするのは自由だよ」なんて言っているらしい。
そのせいで、時々海賊版(?)らしきCD-R盤が数種類出回ったりしている。まるで昔のチェリビダッケみたい。海賊盤とはいえ結構音は良いので、ニーズはかなりあるらしい。
《ゴルトベルク変奏曲》は1982年2月レニングラードでのリサイタルのライブ録音で、LPでMelodijaから出ていたが、なぜかCD化されていない。
ベートーヴェンの後期ソナタの録音テープもお蔵入りなので、ソコロフが存命中に気が変わってリリース許諾してくれないかなあと、かすかに期待しているんだけれど。

Sokolov - Bach Goldberg Variations BWV.988.wmv
Leningrad, Feb 27th 1982, Grand Hall of the Leningrad Philarmonic Society (Melodiya)
ライブ録音なので音はそれほど良くはないけれど、芯のしっかりした比較的クリアな音なので、ソコロフのしっとりと潤いのある美しい音色と色彩感は結構聴き取れる。
この音質でこれだけ綺麗な音なら、まともな音質なら素晴らしく綺麗な音に違いない。
ソコロフの音はクリアな響きで深みと煌きがあり、カラフルな色彩感も加わってとても美しい音。
急速系と緩徐系ではタッチが全く変わって響きが全然違うので、それだけでもかなり違った色彩感が出る。緩徐系でも響きのバリエーションがかなり多い。
さらに声部ごとに響きが違い、それも旋律によって変化させていくので、色彩感の違いでとても立体的に聴こえる。
変奏ごとのテンポはかなり幅があり、緩急の落差も大きいので、メリハリはよく効いている。
急速系の変奏は、弾力とリズム感、スピード感が素晴らしく、揺らぎなく堅牢な構造。コロリオフのような縦と横の線が組み合わさったような構成感はあるが、ずっと動的でがっちりとした骨太さと弾力のある力強い推進力がある。
緩徐系の変奏は、柔らかい弱音の響きと微妙な強弱の揺らぎのある表情が繊細で、表情の奥行きが深い。
そういう弱音の繊細さに耽溺したり、感情移入したようなしつこさはなく、表現の幅の広さと繊細さはあっても感情が自然にわきでているような叙情感を感じる。
装飾音はそれほど多くはなく、使っている場合も凝ったものではなくあっさり。
ソコロフの場合は、元々音が綺麗で、微妙な響きの変化が多彩で表情が細やかなので、下手に装飾音を入れない方がすっきりしている。
トリルだけはかなり特徴があって、旋律から浮き出るように立ちあがって、鳥がさえずっているように表情が豊か。
色彩感の豊かさと表現の幅の広さ・深さは、今まで聴いた録音の中でもとりわけ素晴らしく、音自体の魅力と求心力・推進力の強さに引き込まれて、冒頭のAriaから最後のAiraまで一気に聴いてしまう。
演奏の密度が濃いうえに、演奏時間が90分近くかかっているので、長い旅路を歩いてきたかのような気がする。
(ピアノ版だと全部リピートを入れても長くて80分弱くらい。長い演奏ならテュレック95分(57年盤)、コロリオフ85分)。
ゴルトベルクは凄く好きとまではいかないけれど(ディアベリの方がずっと好き)、良い録音があるらしいと知るとつい聴いてみたくなる曲。おかげで異聴盤が増える一方。
ゴルトベルクをチェンバロで聴くには、私には響きが単調すぎて(それに長いし)途中で挫折するので、聴くのはピアノ版のみ。
20種類以上聴いたなかでは、一番良く聴くのがベッカーとコロリオフ。時々聴くのは、ペライア、ケンプ、それに、音質は悪いけれど、アラウのゴルトベルク変奏曲も気に入ってます。
これだけあればもう十分かと思っていたけれど、このソコロフのゴルトベルクはベッカー以上に気に入ってしまって、CD化されていないのが残念。
<メモ>
主題:アリア
わりと響きが明瞭で表情がしっかりしたアリア。(ここを眠たくなるように柔らかいタッチと響きで弾く人が結構多いような気はする)
色彩感のある音色と、弾力のある強い響きのトリル。
このアリアを聴いているといつも眠たくなるので、途中で飛ばしてしまうことが多いけれど、このソコロフのアリアは、音に煌きがあって表情もはっきりしてよく変化もするので、これはしっかり最後まで聴けた。
第1変奏
凄く速いテンポで、恐ろしく弾力と力強さのある第1変奏。
眠れないなら眼を覚ませとばかりに、全く息を抜くことなく一気に攻めこんでいくような迫力。
初めはなんと力強いタッチかとちょっとびっくりしたけれど、意外と騒々しくもバタついた感じもしなくて、慣れてしまうとこの切れ味の良さが爽快。
両手が同じくらい強いタッチなので、低音の左手のノンレガートが力強く、弾力のあるリズム感。
拍子を刻むようについているアクセントがよく効いているので、一本調子には聴こえず、スピード感と弾けるようなリズム感が冴えている。
第2変奏
ちょっとゆったりめのテンポで、とても優しく可愛らしい第2変奏。
特に、やや軽めのノンレガートなタッチが、そっと肌に触れるように優しくて、これはとても好きな弾き方。
あまりに前の変奏が勇壮果敢だったので、この極端な表情の変化がとても印象的。
第3変奏, Canone all'unisono
これも緩々としたテンポで、ささやくように語り掛ける変奏。
左手側は包む込むように柔らかくぼんやりした響きで、その上を右手側の主旋律と副旋律がクリアな響きで対話し、響きのコントラストによる色彩感が美しい。
第4変奏
再び急速系の変奏になって、これも第1変奏のように力強いタッチ。
テンポはすごく速いわけではないので、歯切れ良いリズムと和声の響きの厚みでとても安定感のある変奏。
急速系の変奏で音が詰まっていない場合、拍をきっちりとった縦の線が強く出ている感じがする。
第5変奏
急速系でも細かいパッセージが多いので、タッチはかなり軽やか。フレージングの末尾にアクセントを強く入れて、メリハリと躍動感の強い変奏。
第6変奏, Canone alla seconda
ゆったりとしたテンポで、ちょっとまったりしたテヌート気味のレガート。何かが起こりそうな期待や予兆といった感じ。
第7変奏
強めの明瞭なトリルは、おしゃべりするように表情豊か。ソコロフのトリルは、全体的に旋律の流れに添ってさりげなく入れ込むというよりは、旋律から浮き出るようにしっかりとした響きで、かなり目立って聴こえる。
第8変奏
第1変奏のように弾けるような力強く躍動的。こういうタッチに慣れてしまうと、これが自然に聴こえてしまう。
第9変奏, Canone alla Terza
緩徐系の曲は、声部ごとのタッチの違いが強くなってよくわかるので、色彩感と煌きのあり、音がとても綺麗。
第10変奏, Fughetta
この変奏は、いろんな速度と長さのトリルが入り混じっていて、トリルがあらわす表情の違いがとても面白い。
第11変奏
全ての声部がとても柔らかくて優しいタッチで弾かれて、ふわふわな真綿でくるまれているような心地よさ。対照的に、長く素早いトリルが鳥がさえずるような表情のあるトリル。この響きのコントラストがとても鮮やか。
第12変奏, Canone alla Quarta
やや速めのテンポで、弾力のある歯切れの良い変奏。横の線の動きがとてもよくわかる。
第13変奏
右手のキラキラとした高音の響きが美しく、左手はずっと柔らかいタッチ。
弱音の響きの微妙な変化でこまかなうねりのある歌うようなフレージング。
第14変奏
急速系の弾力のある変奏。縦の線が明瞭で、トリルや装飾音がここも良く響いて、とてもリズミカル。
第15変奏, Canone alla Quinta - Andante
やや速めのテンポで、あまり憂いを強く出さずに、さらりとした叙情感。ここも声部ごとに響きが違って、カノンが綺麗に3声に分かれて聴こえてくる。
第16変奏 - Ouverture
拍につけるアクセントが良く効いて縦の線がきっちりと刻まれて、とてもリズミカル。後半はやわらかいタッチで旋律の横の流れがなめらか。
第17変奏
急速系だけれど、タッチは強さよりもノンレガートの歯切れ良さが目立って、とても元気で楽しい雰囲気。
第18変奏8 - Canone alla sesta
これは縦の線が強く出て、カチカチとしたリズム感がとても気持ちよい。
第19変奏
ノンレガートだけれどやわらかいタッチで、ささやくような語り口でまったりとした雰囲気の穏やかな変奏。
第20変奏
かなり速いテンポで、音が弾丸のように流れていくのが面白い。音の詰まったパッセージになると音が塊のごとくに聴こえるので、ちょっと速すぎようなきはするけど。
第21変奏 - Canone alla settima
一転して、ややコラール風に静かで内省的。しっとりと水気のある響き。
第22変奏 - Alla Breve
やや晴れやかな雰囲気で、軽やかなノンレガートのタッチがとても優しげで素直な感じ。時折入るトリルは、鳥が囀るように表情豊かで明瞭でこれがとても可愛らしく響く。
第23変奏
ジェットコースターから一気に滑り落ちるようなスピード感と弾力でとても勢いの良いスケール。ユニゾンはとても力強く。
第24変奏 - Canone all'ottava
ここはゆったりしたテンポで、柔らかくて軽やかなレガートがとても優しい雰囲気。
第25変奏
しっとりとした哀感のある静寂な変奏。
10分近くかかって弾くかなり遅いテンポ。内省的な雰囲気を強く出し、まるで旋律が自問自答しながらつぶやいているかのように聴こえてくる。
この旋律を聴くと、ベートーヴェンのディアベリの終盤に出てくる短調の叙情的な変奏をすぐに連想してしまう。
第26変奏
一転して、明るく開放的な変奏。同音型のフレーズの連続で、徐々に鍵盤上を駆け上っていく疾走感が素晴らしい。その細かいパッセージ上を主旋律がリズム感よく流れていく。
第27変奏 - Canone alla nona
弾力のあるタッチで力強いカノン。
第28変奏
速いテンポで、トリルの響きがとても印象的。冒頭は高音のトリルが良く響いている。低音のトリルは穏やかな響き。
第29変奏
弾力のあるユニゾンと、勢い良く上行下降していく同音型の旋律。
第30変奏 - Quodlibet
とても明るく晴れやか。マルカートなタッチで縦の線のアクセントが入って、歯切れ良く、快活。トリルも力強く。
Aria da capo
トリルの響きが綺麗なアリア。冒頭よりも柔らかいタッチで静かに弾いているので、少し疲れてまどろむような雰囲気。最後は音量が落ちてリタルダンドし、静かに眠りについたようにエンディング。
※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。