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ショパン/エチュード ~ ソコロフ、ロルティ、ペライア
ショパンは好きな作曲家ではないけれど、好きなピアニストの録音収集を兼ねて、全曲2~3種類のCDは持っている。
エチュードは言わずと知れたポリーニの名盤とペライアの2001年録音。最近買ったのはソコロフとロルティ。他にもいくつか試聴したけれど、凄く興味を弾かれる録音がなかったので、今のところはこれだけあれば充分かと。

20年くらい前に初めて買ったエチュードの録音がポリーニ。ポリーニは昔好きだったのでCDはほとんど集めたけれど、このエチュードは一度聴いただけ。メカニックは凄いのだろうけれど、曲自体があまり面白いと思えなかったので。
最近ソロコフのOp.25の録音を聴いて、これがとても良かったので、他の演奏はどうだったかなあとポリーニとペライアの録音をひっぱりだして聴いてみた。
やっぱりポリーニは、堅牢な構造感と力強い打鍵で、音圧・音量・スピードも迫力充分なので、カタルシス感があって爽快。強弱のコントラストが強くて明快なのはよいけれど、表現が直線的なので詩情が希薄。さらりとした叙情感と言えないこともないが、曲自体が面白く聴けるかいうと、度々聴くにはちょっと...。どういう演奏が良いと思うのかは好みによるので、これは昔と変わっていなかった。


ソコロフ~ショパン/エチュードOp.25

ソコロフらしく旋律をよく歌わせているので、エチュードとは思えないほど表情の起伏が大きく、パワフルでダイナミックな迫力と、細部まで濃くドラマティックな表現は聴きごたえ充分。これは繰り返し聴いても飽きなくて、ぴったり好みに合いました。Op.25しか録音していないのが残念。
打鍵は明瞭で音の粒と旋律がクリアに聴こえ、色彩感も豊かで特に高音のシャープな響きはきらきらと煌きがあってとても綺麗。
ダイナミックレンジが広く、力強いフォルテや低音と繊細な弱音の表現が豊かで、曲別や曲中の表情の変化も大きく多彩。リズムもシャープで軽快。どの曲も表情・色彩感も豊かなので詩情何度聴いても面白い。
あまり好きではなかった第1番は起伏が大きくて退屈しないし、ラストの響きがハープのように綺麗。第3番はシャープなリズムと躍動感で活気に溢れ、第4番も軽いスタッカートが軽快。第5番はよく歌う叙情的な中間部がとても美しく、第6番は3度のスケールが軽やかで、クリアな響きはきらきらと煌くよう。曲集の折り返しになる第7番は澄んだ音色で突き刺すような深い叙情感が美しく、第9番は軽快なタッチでとても可愛らしく楽しそう。

最後の3曲になるとスピード感・力感・量感が圧倒的。この怒涛のような勢いはショパンではなくラフマニノフかのような迫力。
第10番はスピード感とパワフルさで迫力充分。中間部の柔らかく甘い弾き方と前後の激しさとのコントラストが鮮やか。
第11番は、木枯らしというより、ブリザードで雪の結晶が激しく舞っているような激しさ。右手が6連符で半音階的下降していくフレーズは、硬質の明瞭な音でキラキラと輝いているよう。
さらにラストの第12番は激しくうねる荒海のように力強く、そのなかでみせる表情の変化がドラマティック(特に1:30あたりから弾く弱音の旋律の情感豊かなこと)。エンディングは長い航海を終えて無事港に帰りついた船のイメージが浮かんでくる。この最後の3曲を聴けばカタルシスを充分味わえる。

練習曲風なところは全くなく、メカニックの凄さを聴くというより(これも凄いのだろうけれど)、表現の幅がとても広いので、音楽として聴いていて楽しいと思えるところがベスト。
さらに楽譜を見ながら聴けばいろいろ発見がありそうで、これはもう少し暇なときに試してみることに。


ソコロフはスタジオ録音はほとんどしない人なので、これも1985年、35歳の時のライブ録音。ライブ特有のキズは聴き取れるけれど、そういうのは(よほどひどくない限り)あまり気にしない方なので、これだけ集中力と気力のこもった密度の濃い演奏を聴ければ充分満足。
全曲通しで聴けば、曲想にあわせた表現の幅広さとドラマティックな組み立ての演奏の面白さが味わえる。ということで、Op.25のエチュードはほとんどソコロフの録音で聴くことに。

ソコロフのショパンのエチュードは、BOXセットと分売盤(3種類)が出ているので、価格とカップリング曲で選択できる。
とてもコストパフォーマンスが良いのはBOXセット、ショパンだけで良いならプレリュード&ピアノ・ソナタ第2番をカップリングした分売盤。

Chopin: Préludes; Sonate No. 2; ÉtudesChopin: Préludes; Sonate No. 2; Études
(2008/01/29)
Grigory Sokolov

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Grigory Sokolov:Beethoven,Schubert,Prokofiev,Rachmaninov,Scriabin (Box Set)
Grigory sokolov:Beethoven,Schubert,Prokofiev,
Rachmaninov,Scriabin (Box Set)

(2003/11/18)
Grigory Sokolov

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ロルティ~ショパン/エチュードOp.10

ソロコフはOp.25のライブ録音しか出していないので、Op.10の良い録音がないかと探してみたら、ロルティの録音がとても評価が良く、聴いて見るとそれも納得。
残響長めの柔らかく煌きのある音が綺麗で(もう少しすっきりした音の方が好きですが)、メカニックも緻密で正確。Op.10の第1番からして輝きのある明るい音とスピード感が素晴らしい。
ポリーニのように一音一音が力強くゴツゴツしたタッチではないので、演奏がとても軽やか。いかにも凄い技巧でしょう風な弾き方はせずに、指回りがスムースでシームレスのようにスラスラ弾いている。
それ以上に、軽快なリズム感は歯切れ良く、細かい起伏の変化で表情豊かに聴こえ、繊細でべたつきのない叙情感があって詩情も豊か。
力感がもう少し欲しいかなと思ったり、”革命”の右手の旋律は力強いタッチで一気に弾いて欲しかったりと、曲によってはペライアかポリーニの方が好きなのもあるけれど、曲の面白さを味わえるという点では一番良いような。
Op.10ならロルティの録音がメインで、時々ペライアとポリーニかな...と思ったけれど、ペライアを聴き直して思い直し、ロルティとペライアがメインになりそう。

ちょっと気になる点といえば、ロルティの録音は、Op.25よりもOp.10の方が良いというレビューをいくつか見かけたこと。
Op.10が目的だったのであまり気にしていなかったけれど、ついでにOp.25も聴いてみると、全体的に急速系の曲でタッチの切れが悪く感じる曲が多く、テンポもちょっと遅めかも。No.8以降でそれを強く感じるし、特にNo.10はレビューの通り、ぼてっと重たい印象。同じ1986年の録音なのに、Op.10とOp.25で演奏レベルにばらつきがあるのはなぜなんでしょう?

Chopin: The Complete ÉtudesChopin: The Complete Études
(1992/10/28)
Louis Lortie
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ペライア~ショパン/エチュードOp.10&Op.25

ペライアは好きなピアニストなので、バッハを中心に結構CDは集めていて、このエチュードもそれで買ったCD。(でも、一度も聴いていなかった)
ペライアのエチュードは、打鍵は力強く切れも良いけれど、残響が短くクリアで柔らかさのある音で、アコースティックというか、耳に自然と馴染む響き。
メカニックはそつなく安定して、テンポの揺れも少なく表現はロルティよりもマイルドだけど、?と思うような演奏がなくて、どれもかっちりと均整が取れて、堅実で折り目正しいといった感じがするショパン。強いクセがないので、練習曲のお手本にするならペライアが一番良さそうな感じ。

ポリーニを聴いてから聴くと、圧迫感がなく、淡い詩情がとても心地よいけれど、ソコロフとロルティを聴いてしまうとちょっと物足りないかなあ..と思ったりもする。
ロルティのOp.25がもう一つだったし、Op.10も残響の多いロルティの録音よりも線がしっかりしたクリアな音は気に入っているし、速いテンポのNo.6はさらりとした叙情感が綺麗だし、《革命》は好きな弾き方だったし...といろいろ考えると、やっぱりペライアのエチュードはやや地味とはいえどわりに好みに合っているらしい。

ショパン:練習曲作品10&作品25ショパン:練習曲作品10&作品25
(2004/11/17)
ペライア(マレイ)

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このジャケット写真、ちょっと威圧的な雰囲気がするので、あまり好きではなくて...。パルティータやゴルトベルクのポートレートがペライアのピアノの雰囲気に良く合っているので、この写真もエチュードのイメージに合わせたのでしょうが。

                                

ショパンのエチュードのCD比較レビューはいろいろありますが、好みに合うこともあって、比較のポイントがわかりやすく的確だと(私は思う)のが<Kyushima's Home Page>
ロルティ、ポリーニ、ソコロフ、ペライアに関しては、全くその通り。(それでも、ペライア盤は好きなので、好みの違いは別にして)
凄いと思う録音は試聴しただけでたいていすぐにわかるので、横山氏と小菅さんの録音はちょっと興味があって試聴。小菅さんは特に魅かれるものがなく、横山氏はメカニックを聴くなら面白いかもしれないけれど、そういうのが目的ではないので試聴どまり。
この比較レビューを読めば演奏内容がだいたい想像がつくし、HMV&amazonのリスナーレビューと試聴でチェックしたので、むやみに異聴盤を買い込まなくて済みました。

<音楽図鑑CLASSIC>も、異聴盤の数がとても多く、ブロガーがピアノが弾ける人だけあって、その視点が入っているのがとても参考になるCD比較評。
上のサイトと合わせて読めば、評価の視点と好みの違いがわかって面白い。演奏技術に関する内容はこちらの方が詳しいので、ピアノを弾く人にはおすすめ。
高評価はポリーニとペライア。ロルティは「繊細・優美という方向性で演奏されたショパンエチュードとしてはこれが最高峰」とコメントされていて、これには納得。

tag : ショパン ソコロフ ロルティ ポリーニ ペライア

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お久しぶりです
Yoshimiさん、こんにちは。
ショパンのエチュードも沢山のピアニストが出してるから、聴き比べてみると楽しいでしょうね。
という私はポリーニとペライアとアシュケナージのしか聴いてないんですが…。
ポリーニに関しては、自分でエチュードを練習するようになってから聴くと完璧すぎてツラくなったというのもあるんですが(笑)、どこか違和感もあって、でも何なんだろうと思っていたら、岡田暁生さんの「音楽の聴き方」に書かれていて、それで腑に落ちましたよ。例えばOp.25-2は、右手も左手も3連符で、その揺れがショパンらしいメランコリックを生むところなのに、右手の3連符が左手に合わせて2音ずつになってしまっている、とか。こういうところが、メカニック的すぎるという批判に繋がるんですね。
あと音大生に評判がいいというアシュケナージですけど、私、アシュケナージの弾くシューマンは大好きなんですけど、ショパンに関しては今一つピンと来なくて。で、結局普段聴くのはペライアにすっかり落ち着いてます。確かに強烈な魅力には乏しいかもしれないし、妙なタメもあるし、決して派手ではないんだけど、それでも悪くないですよね。好きです。

あ、そうだ、ずーっと前にガブリーロフのも聴いたことがありました。ポリーニなんて目じゃない速さで弾き飛ばしてるイメージで(でも、あくまでも正確)、トンでも盤な印象だけが残ってます。(笑)
ペライアはほどよい詩情と堅実さが良いですね
アリアさん、こんにちは。

エチュードはずっと昔にレッスンで標題付きの曲はほとんど弾いていたので、馴染みはあるのですが、録音(当時はLP)はほとんど聴いてなかったですね。
一体あの頃はどうやって練習していたのか...。まあ不熱心な生徒でしたので、今から思えば先生には申し訳なくて...。

聴き比べは楽しいですね~。でも好きな演奏があるなら、それだけ聴くのも良いと思います。私はピタっとくるのがなかなか見つからなかったので、試聴だけのも入れると結構聴きましたが、結局ソコロフ、ロルティ、ペライアに落ち着きました。
ペライアはやや地味ですが、手堅くて適度な詩情もあって安心して聴けますし、力感や音響面はロルティよりも好みに近いです。他の録音が好きな曲もありますが、全曲通しで聴くときはペライアが多くなりそうです。

ポリーニの若い頃の録音は、余裕とか遊びの要素がなく、堅牢な構成感と造形力が特徴のように思います。0と1だけのデジタル的世界の明快さがあるのかもしれませんね。
このエチュード集は編集処理がかなり多いと言われているので(どれほど多いかは知りませんが)、よけいにメカニックが完璧に聴こえるのでしょう。
ポリーニは昔は好きだったので、ほとんど録音は持ってますが、ショパンの前奏曲集、バラードとスケルツォはあまり記憶になく、ピアノ・ソナタだけよく聴きました。(ソナタを今聴き直すと印象が変わるかも)

「音楽の聴き方」は私も読みましたが、斜め読みに近かったのでOP.25-2の指摘は全然記憶になくて、記憶にあるのは巻末の心得書きだけ...。やっぱり本はちゃんと読んでおくものですね。

アシュケナージは、ブラームス、ベートーヴェン、バッハの録音を少し聴いて好みと違うように思えたので、CDはほとんど持っていません。音に関してはカラフルで綺麗だし、魅力的なんですが。
”中庸の大家”とか言われてしまってますが、ベートーヴェンのヴァイオリンソナタ集(のピアノパート)は、美音とバランスの良い表現が理想的に思えるので、とても気に入ってます。

ガブリロフの盤は有名ですが、私はレビューを読んでトンでもなさそうなので、試聴するのも避けました。メカニックだけなら、横山氏がかなり凄そうなので、もしどちらか選べといわれたら、氏の方かなと思います。
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yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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