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アラウ&バーンスタイン指揮バイエルン放送響 ~ ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第4番
ベートーヴェンのピアノ協奏曲で最も好きな第4番を聴くなら、ファーストチョイスはアラウ、次はカッチェンと定番化している。
好きなピアニストの録音はたいてい集めた曲なので、探してみたら結構CDがたまっていた。バックハウス、アラウ、ケンプ、ゼルキン、ポリーニ、ツィメルマン、グルダ、ルプー、カッチェン、キーシン、ムストネンといろいろあっても、アラウとカッチェンが一番しっくりくる。

アラウの第4番の録音は、スタジオ録音、ライブ録音あわせて数種類。

スタジオ録音で有名なのは、Phillipsに録音した2種類。
ディヴィス指揮ドレスデンシュタツカペレ(1984年)盤。
これが一番有名で、アラウの第4コンチェルトと言うとこれを聴いた人がほとんど。大河のようにゆったり時間が流れていくよう。

ハイティンク指揮コンセルトヘボウ管(1964年)
さすがに60歳の時の録音だけあって、技巧の切れも良く、カデンツァは力強くてとてもロマンティック。ただし、まだ若かったハイティンクの指揮が力不足..なんてよく言われている。

EMIに録音したガリエラ指揮フィルハーモニア管との全集録音(1955年)も良いらしいけれど、廃盤になっているのでこれは未聴のまま。

ライブ録音はいろいろ出回っている。有名なのは(たぶん)次の2つ。
バーンスタイン指揮バイエルン放送響(1976年10月、ュンヘン、ドイツ博物館、コングレスザール)
アムネスティ・インターナショナルのために催された特別演奏会のライヴ録音。
バーンスタインの他の録音とあわせて6枚組BOXセットが出ているのは知っていたけれど、このアムネスティ・コンサートだけを収録したTOWERRECORDの特別企画盤が2枚組みで最近リリースされていたのを発見。これは早速手に入れました。

クレンペラー指揮フィルハーモニ管(1957年、Royal Festival Hall)
面白そうな録音だけど、音があまり良くないので手を出しかねているところ。どうしましょう。

このほかには、ベルティーニ指揮シュトゥットガルト放送響(1980年 Ludwigsburgのライブ)、ムーティ指揮フィラデルフィア管(1983年、DVD)、Tevah指揮チリ国立大学管弦楽団(1984年、サンチャゴのライブ) など。ムーティと共演したライブは観て(聴いて)いるけれど、やっぱり全盛期の演奏をDVDで見たい。

                              

バーンスタインのアムネスティ・コンサートは、かなり有名なライブらしく、おヒゲを蓄えたお顔がちょっとワイルド。グランドピアノのアラウも紳士然としていてとても素敵。このジャケット写真は結構気に入りました。

アラウがバーンスタインと共演するのは、これが最初で最後らしい。
どうして、アムネスティがらみの(米国でもない)ミュンヘンのコンサートで、アラウがソリストに選ばれたのか不思議なので経緯を知りたかったけれど、ライナーノートには全く書かれていない。このCDはメインが<運命>なので、ピアノ協奏曲についてはほんのちょっと触れているだけ。
アラウは、故国チリの軍政に反対して晩年になるまでチリで演奏会を開くことはなかったから、チリ軍政下での人権抑圧を批判し続けていたアムネスティとは、そういうところで接点があったのかもしれない。

[追記]
いくつかいただいたコメントの情報等から、アラウとバーンスタインの関りがわかってきたので、以下に追記します。(コメントで情報を下さった方々、どうもありがとうございました)
 
バーンスタインと妻フェリシアが出会ったのは、フェリシアのピアノの先生であるアラウの1946年のコンサート。2人の結婚式では、アラウが仲介人を務めたらしい。

アラウとバーンスタインは、1958年10月にCarnegie HallのNYフィル演奏会で、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番を演奏している。(NYフィルの自主制作盤”Bernstein Live”の演奏記録に記載されているらしい)

バーンスタインの自作曲《Thirteen Anniversaries for piano》の第11曲”For Felicia on our 28th birthday (& her 52nd)”は、元々は”For Claudio Arrau”となっていた。


ベートーヴェン: ピアノ協奏曲第4番, 交響曲第5番, 他ベートーヴェン: ピアノ協奏曲第4番, 交響曲第5番, 他
(2010年06月04日)
レナード・バーンスタイン,バイエルン放送交響楽団,クラウディオ・アラウ(ピアノ)

試聴する(米国amazon)[別のBOX盤へリンク:DISC1]
このCDは、HMVでもamazonでも取り扱っていません。購入できるのは、日本のタワーレコードのオンラインショップか実店舗です。(会員制のオンラインショップで取り扱っているところがありますが、これは例外)

アムネスティのコンサートは、《レオノーレ序曲第3番》、《交響曲第5番”運命”》、《ピアノ協奏曲第4番》のオール・ベートーヴェン・プログラム。
目的はアラウのピアノ協奏曲だったとはいえ、バーンスタインの第5番の録音は持っていなかったので、このカップリングもちょうど良くて、これなら買うしかないでしょう。(このCDの売れ行きは良いらしく、6月のタワーレコード全店トータルのクラシック・チャートでトップになっていた。)

アラウの1964年(旧盤)と1984年(新盤)のスタジオ録音では、20年もの開きがあって音質面の違いも大きく印象がかなり違うので、この間を埋めてくれる録音で良いものがないかと思っていたら、この1976年のアムネスティ・コンサートは、アラウ73歳の時のライブ録音。ちょうど探していた録音に条件にぴったり。

テンポ設定は旧盤の演奏に近い。これでもテンポが遅いのは間違いないけれど、新盤のスローテンポを聴き慣れた耳には、旧盤とこのライブ録音のテンポがちょうど良く感じる。

 録音年     1Mvt.  2Mvt.  3Mvt.
1964年(旧盤)  19'22"  5'31" 10'08" 
1976年(ライブ) 20'00"  5'39" 10'07"
1984年(新盤)  20'50"  6'10" 10'34"

ピアノのかなり弱い弱音がやや聴きとりにくい気はするけれど、76年のライブ録音にしては良い音質(だと思う)。
特に、新盤は残響が多いのとピアノの音が遠くから聞こえて細部が聴きづらかったのと比べると、このライブ録音は、ピアノの音がずっと自然な響きで、細部の表現もずっと明瞭に聴きとれるのがとても良いところ。
ライブ録音は、新盤と旧盤で気になっていた部分が解消されたような演奏なので、私には一番聴きやすい。


第1楽章 Allegro Moderato
クリアなタッチで表情が明快な旧盤と比べると、アラウのしっかりしたフォルムで優美さもある品の良いピアノと、少し骨っぽくて弦楽の低音がよく響く伴奏とが相まって、第1楽章は悠然として広がりと風格がある。

冒頭のピアノソロはいつ聴いても、印象的な旋律。アラウの丸みのある柔らかい響きは、明るめの煌きがあって、この楽章の曲想に良く似合っている。高音の響きは甘いけれど、とても品の良い響き。
アラウのタッチは、ややマルカート的なコロコロとした音が転がっていくようなタッチで、打鍵が丁寧で音がとても明瞭。
綺麗に響きが重なって膨らみのあるアルペジオ、よく響いて旋律がつながっているように聴こえる持続音、一音一音明瞭で可愛らしく響くトリルなど、音の響かせ方が多彩で面白い。
やや遅めのテンポなので、メカニカルな音型が続く旋律でも、歌うように表情がついていたりする。
まったりとした雰囲気の中にも、ルバートがところどころかかったり、強弱と緩急のコントラストも結構ついているので、意外と細かな起伏が多い感じ。

全体的に静かで優しげな雰囲気のなかに、どこかしら翳りがあり、まるで哀しげな微笑みを浮かべる聖母(マドンナ)のようなイメージがする。

カデンツァは、かなり濃い表情のドラマティックな旧盤(まるでロマン派の曲を聴いているような)よりは、いくぶん穏やかかも。
それでも、ゆったりとしたテンポで、ルバートは結構かかっているし、緩急の変化は大胆で、歌うような旋律はとても表情豊か。
アラウのカデンツァは、やっぱりロマンティックで独特のコクがあって、とても好きな弾き方。

第2楽章 Andante Con Moto
旧盤よりも、弱音のニュアンスがずっと多彩で、強弱のコントラストも強くつけているので、陰翳が強い。
終盤でトリルが入ってくる部分は、トリルと旋律ともかなり強いタッチで弾いているので、ずっと強い感情的なものを感じさせる。
伴奏の弦楽も暗い色調で重々しく、悲痛感が良くでていて、ピアノの醸し出す雰囲気と良く合っている。

旧盤は、ピアノが弱音主体で起伏は乏しいけれど、内省的な雰囲気は漂っているのに、伴奏がちょっと元気すぎて陰翳が薄くなっている気がする。
テンポがずっと遅い新盤は、訥々としたタッチの弱音と相まって、より沈潜して瞑想的。

第3楽章 Rondo. Vivace
第3楽章は、旧盤・新盤よりもずっと軽快で快活。
冒頭から軽やかで明るいトーンで、トリルの響きがとても可愛らしい。弱音の響きは柔らかくて暖かみがあり、とても優しい雰囲気。
ややおっとりしたリズム感のアラウのピアノを引っ張っていくように、伴奏は快活でリズミカルで勢いがあるので、アラウのピアノも(伴奏に合わせてか)フォルテが力強く、強弱のコントラストが明快。
ピアノとオケの掛け合いも、ピアノが生き生きとして反応良く、旧盤よりも若々しい感じさえするくらい。

新盤・旧盤・ライブ録音の3つを聴くと、技巧と表現のバランスが一番良いと思ったのはライブ録音。
73歳の演奏とはいえ、テクニカルな不安定さを感じる晩年の新盤と違って、技巧的な問題は全くないので、そこは安心して聴ける。
指がよくコントロールされて、しっかりした打鍵で音に張りがあり、響きも多彩。技巧面では、61歳頃に録音した旧盤と遜色ないくらい。
旧盤は弱音域で弾くことがやや多いような気がするので、表現のメリハリが少し弱く感じるところがあって、ライブ録音では、フォルテはかなり力強く打鍵し、明暗・強弱のコントラストを強く・細かくつけているので、旧盤よりも起伏も多く表情がずっと豊か。
第2楽章は深みのある瞑想的な新盤が良い気はするけれど、第1楽章と第3楽章はライブ録音の方が技巧が安定し表現も細部までよくコントロールされ、音楽の流れがとても滑らか。
音響面も新盤のような残響の多さはなく、ずっと自然なピアノの音が聴こえるし、旧盤よりも響きに煌きがあるのが良い感じ。
旧盤の演奏はアラウのピアノが細部までよく聴きとれるのでとても好きだけれど、ライブ録音と比べると、表現の多彩さや伴奏とかの部分で、ちょっとだけ分が悪い。
それに、スタジオ録音はどこか穏やかなところがあって(ベートーヴェンに限らず)、ライブ録音の方が叙情感や躍動感が強いのがアラウの特徴。
晩年のアラウ独特の世界に浸るのも良いのだけれど、やはり技巧が冴えていた時期の演奏を聴く方が好きなので、日常的に聴くのはこのライブ録音になりそう。

tag : ベートーヴェン バーンスタイン アラウ

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アラウとバーンスタイン
アラウはバーンスタインと奥さんのフェリシア・モンテアレグレと知り合うキッカケを作った方で、結婚した時の立会人も務めたとかいう話を読んだことがあります。
他にも共演したことがあるかもしれませんね
小林少年様、こんにちは。
コメントありがとうございます。

もしかしたら、バーンスタインの伝記にその話が書かれているかもしれませんね。
CDの紹介文によると共演するのはこの演奏会が初めてらしいのですが、それほど親しければ、録音されていない演奏会では一緒に演奏していた可能性もありそうです。
どもども、お邪魔してます。

バーンスタインの妻で女優のフェリシア・モンテアレグレは、アラウと同じチリ
出であり、若い時分はピアニスト志望でアラウの下で学んでいたという記述
も見かけた覚えがあります。出典を覚えておらず、申し訳ないのですが。

アラウは1940年代からアメリカを本拠に活動していたということですから、
ニューヨーク・フィルの演奏会には登場する機会が結構あったのではないか
と思われます。バーンスタインとは所属レコード会社がCBSとフィリップスで
異なっていたので、レコード・ジャーナリズムの上では接点がありませんが。

件のDG録音、先日タワーレコードで購入して、昨晩30年ぶりに聴きました。
実家にはDGのLPがありますが、久しく耳にしていなかったので、懐かしい思
いがいたしました。
アラウとバーンスタインのつながり
情報ありがとうございます。

いろいろ調べてみますと、バーンスタインに関する伝記情報には

”The two had met each other in 1946 at a musical performance by Montealegre’s piano teacher Claudio Arrau.” (バーンスタインとフェリシアは、フェリシアのピアノの先生であるアラウのコンサートで出会った)

という記述があります。
フェリシアは女優の道に入る前はピアニストだったそうなので、おっしゃていることは間違いないですね。
伝記をいくつか読めば、そのあたりの経緯が載っていると思います。

NYフィルの自主制作盤”Bernstein Live”に収録されている演奏会記録には、1958年10月にCarnegie Hallで、アラウがベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番を演奏したと記録されています。
それ以外はないようですね。ただし、転載したホームページで調べただけなので、原盤自体を確認していないのですが。
性格も音楽のつくり方もかなり違う2人ですので、音楽家同士としての相性はそれほどぴったりと合っていた...というわけではないかもしれません。

バーンスタインの自作曲《Anniversaries (13), for piano》”の第11曲 ”For Felicia on our 28th birthday (& her 52nd)”は、元々は”for Claudio Arrau”となってました。
こういうところにも、アラウとバーンスタイン夫妻との関りが暗示されているようです。

このDGのライブ録音のCDには、アラウとバーンスタインが一緒に移っている写真が2つ(ジャケットとケースの内側)が載っていますね。
これは珍しいシーンだったので、とても印象に残っています。
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yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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