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スティーヴン・ハフ ~ リスト/小鳥に説教するアッシジの聖フランチェスコ
毎日暑いうえに、ベランダのどこかでセミが大声で鳴いていて(探しても姿が見えない...)、これがこの暑苦しさに拍車を掛けている。
セミの鳴き声は暑苦しいけれど、ハフのリスト作品集に入っている<小鳥に説教するアッシジの聖フランチェスコ>で小鳥が可愛らしくさえずっているようなピアノの音は、わりと涼しげに聴こえる。

この曲、リストが僧侶になった晩年に書いた《伝説》にある2曲中の第1曲。
仏教徒なのでキリスト教の聖人のことは名前くらいしか知らないけれど、ず~っと昔ミッキー・ロークが聖フランチェスコの映画を作って主演してましたね。ほとんど覚えていないけれど、彼にしてはとても真面目な映画だったような...。

聖フランチェスコの伝説のなかに、”彼の説教には小鳥達も聞き入った”という話があるそうで、この場面を描いたジョット作のフレスコ画「小鳥に説教する聖フランチェスコ」がサン・フランチェスコ大聖堂にあるので有名。

リストの<小鳥に説教するアッシジの聖フランチェスコ>は、聴けばすぐにわかるほどに、とっても視覚喚起力のある曲。
冒頭1/3くらいは、小鳥のさえずりの描写。両手に現れるアルペジオ、トリル、トレモロ、さらに持続音でつながる旋律がとても綺麗な響き。(ここでは聖フランチェスコが説教している様子はあまりないように思うけれど)
それから主旋律が左手低音部に現れて、聖フランチェスコが穏やかに説教し始める。
冒頭からピーチクパーチクと鳴き続けて煩かった小鳥たちのトレモロやトリルが断続的になっていって、徐々に静かになっていく。
やがて、聖フランチェスコが説教している左手弱音の主旋律と、小鳥達のさえずりのトリル・トレモロが対話するように、交代で演奏されるようになって、旋律も和声も清々しく神々しい輝きを増していき、とうとうフォルテで力強く両者が合唱していく。
最後は再び静かになり、主旋律とトレモロ・トリルが対話するように交互に歌って、両方の旋律がポロロンと優しく鳴ってエンディング。

小鳥に説教するアッシジの聖フランチェスコ(楽譜ダウンロード)[IMSLP]

この曲の録音はかなり多く、名の知れたピアニストなら、ブレンデル、シフラ、ハワード(全集なので当然録音している)、ケンプ、ハフ、ヴォロドスなど。
ハフの演奏は比較するまでもなく、それ自体として素晴らしく良い(と思う)ので、あまり聴き比べする気が起こらない。(ブレンデルとケンプの演奏は聴いてみたいと思うけれど)
ハフは19歳でローマ・カトリックに改宗し、宗教関係の著作もいくつか書いているせいか(ハフのホームページにも載っている)、ハフのリスト作品集には宗教的な曲が結構入っている。

ハフが弾いている左手側の主旋律(聖フランチェスコが説教している様子に違いない)は、とても静かで穏やか。瞑想的な雰囲気も漂っていて、本当に小鳥たちに教え諭すように静かに語りかけているシーンが思い浮かんでくる。
その主旋律と対話するように入ってくる小鳥たちのトレモロやトリルは、初めの明るく楽しげな様子とは打って変わって、とても神妙な雰囲気。まるでフレスコ画に描かれている説教に聞き入る小鳥達の姿が目に見えるよう。
ハフの弱音域の階層はかなり多くて、シャープな線で透明感のある弱音がとても清々しく清楚な雰囲気があるし、ニュアンスも多彩。トレモロ・トリルに加えて旋律が複数交錯するところでも、立体感・色彩感も豊かで、コッテリと濃い色彩の油絵ではなくて、淡い色彩の水彩画のような美しさがある。
主旋律の瞑想的な弱音の静けさや、それがクレッシェンドして力強く神々しく輝くところは、快活なシフラや明るい色調のハワードの録音よりも、はるかに敬虔さを感じさせるものがある。
ハフの演奏を聴くと、この曲に込められている(と思う)晩年のリストが抱いた聖フランチェスコへの畏敬の念がくっきりと浮かび上がってくるような気がしてくる。

Liszt:Piano WorksLiszt:Piano Works
(1998/01/01)
Stephen Hough

試聴する(英amazon)[track5]



ハフのライブ映像はないけれど、膨大なリストのピアノ作品全集を録音しているレスリー・ハワードの演奏があったので。超絶技巧で派手で俗っぽいというイメージのリストとは全然違った曲なのがよくわかります。
《伝説》第1曲<小鳥に説教するアッシジの聖フランチェスコ>



《伝説》第2曲<水の上を歩くパラオの聖フランチェスコ>。
こっちは第1曲ほどには演奏されていないけれど、聴いてみるとそれも納得。
やっぱり第1曲の方が響きが綺麗だし、描写的で面白い。これもハワードの演奏で。

tag : フランツ・リスト スティーヴン・ハフ

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ブレンデルとケンプ
前回のソナタのアラウと伝説のハフをまだ聴いていないのが残念。
私はリストはさほど聴かないのですが、ソナタと伝説は別。大好きです。
特に伝説は、視覚的にもうったえてくる音の描写が素晴らしく、その宗教的な格調高い曲を聴くと、不思議と静かな気持ちになれます。
記事を読んで、ソナタのアラウを、伝説はハフを聴かなくては、と思いました。
ブレンデルの演奏はどちらも好きでよく聴きます。おっしゃる通り理性的な演奏で、音は硬質。アッシジでは、その辺が少し物足らなさを感じるかもしれません。むしろパオラの方が崇高さを感じさせる演奏で、良いかも・・・。
でもケンプも素晴らしいです。伝説では私はケンプの方が好きかしら。
それにしてもパオラの素晴らしい演奏ってなかなかない気がするのですが・・・。
ハワードもアッシジの方が良いですね。
ブレンデルとケンプのアッシジ、ますます聴いてみたくなってます
マダムコミキ様、こんにちは。

リストはわりと相性の良い作曲家なので、ちょこちょこ聴いてはいるのですが、未聴のCDが随分溜まってきているので、本腰を入れて聴いてます。
いろんなタイプの曲を聴くと、リストはとても面白いですね。ベートーヴェン、ブラームスの次に好きなくらいに結構はまってます。

ケンプとブレンデルのアッジシの演奏は聴いたことがありませんが、なんとなくイメージができるところはあります。
ブレンデルの演奏(リストに限らず)と私の間には、常にワンクッションあって、アラウやハフのようにストレートに心情的にシンクロできないところはありますが、どの演奏でも音の響かせ方や解釈に面白さがありますね。
ケンプは弱音の響きの綺麗な親密感やコラールのような敬虔さのある演奏...というようなイメージがします。
両方ともそのうち録音を探して聴いてみようと思ってます。

パオラは構造がかっちりしてやや面白みのない感じがするので、私はあまり気に入っている曲ではないのですが、アッシジよりも曲の意図を表現するのが難しそうな感じはします。下手するとやたらダイナミックで賑やかな印象だけ残して終わりそうな...。

アラウのロ短調ソナタは廃盤が多くて、入手しにくくなってますね。
youtubeに70年録音が登録されていますから、お時間のあるときにでもどうぞ。これがアラウのベストの録音だと思います。
http://www.youtube.com/watch?v=uIUTc5d9moc
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yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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