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アラウ ~ アスコナ国際音楽祭ライブ(1971年)
アラウのライブ録音は最近かなりリリースされているけれど、マイナーレーベルが出しているせいか、すぐに在庫切れで廃盤状態になることが多い。
晩年のリサイタルやコンサートは、ライブ映像が結構多く出回っている一方で、全盛期にあたる1950年~1960年代のものは放送局や音楽祭で録音した放送用音源が主体。
特に音楽祭のライブ録音は、スイスのルガーノやアスコーナ、ドイツのシュヴェツィンゲンのリサイタルのものが残っていて、プログラムも多彩で演奏内容も素晴らしく、かなり稀少なもの。
ルガーノとアスコーナのライブ録音はCDが廃盤状態で、itunestoreで一部の曲はダウンロードできる。
シュヴェツィンゲンのライブ録音はCDリリースが最近なので、これはまだCDが手に入る。

アスコーナ音楽祭のライブ録音は1959年と1971年の2種類。Swiss-Italian Radioが放送用に録音した音源なので、音質はとても良い。
1959年のライブ録音(Ermitage/aura盤)は熱情ソナタ、シューマンの『幻想曲』、ドビュッシーの『ピアノのために』など。
『ピアノのために』は、itunestoreでルガーノのライブ録音の一部とカップリングされた盤があり、ダウンロード可能。
Piano Sonata 23 F Minor Op 57 / Fantasia C MaorPiano Sonata 23 F Minor Op 57 / Fantasia C Maor
(1999/08/31)
BeethovenSchumann

試聴する(米amazon)


1971年のリサイタルは、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第13番、リストのロ短調ソナタ、ショパンのバラード第4番、ノクターン、スケルツォ第1番。収録時間の関係と聴衆のノイズが入っているので、ドビュッシーの『映像』とアンコールのショパンのバラード第3番は未収録。
PLAYS BEETHOVEN, LISZT AND CHOPINPLAYS BEETHOVEN, LISZT AND CHOPIN
(1999/12/28)
BeethovenLiszt

試聴する(米amazon)

プログラムから言えば、1971年のリサイタルの方が好きな曲が多いし、バラエティ豊か。まだ技巧的に衰えの見られない全盛期終わり頃のライブ録音なので、この盤は安心して聴ける。

ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ第13番
第13番は、第14番の月光ソナタと並んで、作品番号14として幻想曲風ソナタと言われているにしては、あまりにポピュラーな月光ソナタの影に完全に隠れてしまっている。
第13番は何度か聴いたことはあるけれど、さほど印象に残っていなかった。
このスタジオ録音を聴くと、なぜかこの13番ソナタがとても素敵な曲に聴こえてきたので、これは一度弾いてみないと...と思い直してしまった。月光ソナタと違って、全体的に穏やかな曲想で地味な感じはするけれど、明るい雰囲気の主題が多くて、月光ソナタのようなちょっと鬱々した雰囲気はないのが、良いところ。
第1楽章はアラウのピアノの響きが綺麗で淡いファンタジーを感じるし、第2楽章も軽快なリズムのなかにさらりとした哀感があるし、第4楽章の終盤はオルガンの響きが重なるように荘重。
ベートーヴェンの標題のついていない曲は、全曲演奏会以外では単独で演奏される機会は少ないけれど、結構かみ締めれば味が良くわかるような曲が多い。
アラウの全集を聴きなおしてみると、やっぱり無題の曲でも良いなと思える曲が結構あって、3番、4番、7番、9番、15番、18番、22番、27番、28番はとても気に入った曲。

リスト/ピアノ・ソナタロ短調
アラウのスタジオ録音は、長い間リサイタルのプログラムから外していたリストを再び弾き始めた頃の録音。
リサイタルの時に比べてまだ試行的な部分が残っているらしい。アラウによると、リサイタルでも5回目に弾いたウィーンの頃から満足できる演奏だったという。

1971年のリサイタルの演奏なので、かなり弾きこなれてきた頃だと思うけれど、数年後のライブ録音の方がさらに演奏内容が深まっているのかもしれない。
スタジオ録音よりも、テンポが速めでより起伏も激しく、音色もより艶やかで、特に緩徐楽章に当たるアンダンテは、グレートヒェンの純粋さに加えてちょっと妖艶な雰囲気のする響きがとても綺麗。

ショパン/バラード第4番
ショパンの作品のなかで、数少ない好きな曲がバラード。特に第1番と第4番が良くて、個人的なスタンダードはアラウの晩年のスタジオ録音。
これが記憶に刷り込まれているので、後で聴いた評判の良いツィメルマンのバラードが、華美でベタベタ甘く聴こえてしまって好きになれないのには、困ってしまった。

アラウの1977年のスタジオ録音は、技巧的にもまだ安定していたので、71年のライブ録音と大きな違いはないけれど、ライブ録音の方が多少演奏時間が短く、テンポの速いところは少し起伏が大きくタッチも激しくなって、感情移入が深い感じはする。

解説によると、終盤のコーダ直前の5つの有名な”魔術的な(magic)”和音の前の最後の和音をかなり弾き伸ばしている。これは楽譜上に指示のない弾き方なので、普通とは違うイレギュラーな解釈。
バラードはアラウの録音くらいしかちゃんと聴いていないので、他の演奏とまじめに比較したことがなくて、解説がなければ気がつかなかった。

ショパン/ノクターン第17番(Op.62 No.1)
ショパンのノクターンは眠くなるのでめったに聴かないけれど、たまに1曲だけ聴くとなぜか良い曲にいつも聴こえる。
この第17番は、ノクターンのなかではわりと好きな方で、アラウのトリルがとっても綺麗。

ショパン/スケルツォ第1番
ライブ録音は68歳の時の演奏なので、テンポは10年以上後のスタジオ録音よりも1分くらい速い。
1984年にスケルツォを全曲スタジオ録音しているけれど、ちょっともたっとした重たいところがあって(特に第1番)、81歳という高齢ゆえの指回りの悪さを感じさせるし、スタジオ録音特有の穏やかさ(晩年はその傾向が強い)がある。
それはそれで味わいがあるともいえるんだろうけれど、このライブ録音と聴き比べると違いがよくわかって面白い。

ライブ録音では、急速なパッセージでの音の切れが鋭く、ややアッチェレランド気味で急迫感のあるクレッシェンドも勢いがあり、全体的にがスタジオ録音よりもテンションが高くて感情移入は激しい感じ。
そのせいで、凪のような中間部の叙情感が一層深く引立っている。技巧がまだしっかりしていた頃のアラウが弾くスケルツォらしく、後年よりもずっと切れ味の良いスケルツォ。
さすがに少し若い頃の演奏を聴くと、晩年のスタジオ録音には物足りなさを感じるので、第1番を聴くときはいつもライブ録音で。

Youtubeにもアラウのスケルツォが登録されている。
第1番だけはこのアスコーナ音楽祭のライブ録音が音源。(演奏時間も同じだし、聴いてみてもやっぱり同じ演奏だと思う)

tag : ベートーヴェン ショパン アラウ フランツ・リスト

※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。
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アラウは本当にCDが沢山ありますね。
最近ドビュッシーを弾きこなせるようになるべく頑張っているので
アラウのドビュッシーも聴いてみようかなと思ったんですけど
アラウの3枚組のCDには「子供の領分」が入ってなくて残念です…
やっぱり次に聴くアラウはバッハにしようかな。(笑)

あ、3枚組には「ピアノのために」はサラバンドしか入ってなかったようですが
ライブ録音ではちゃんと3曲とも入ってるんですね。
アラウの弾く「ピアノのために」の「前奏曲」も聴いてみたいなと思ってたんです。
あとで試聴してみます!

先日教えていただいたジャンケレヴィッチの本、早速借りてきました。
まだちょこっと読んだだけですけど、これ、ものすごく面白いですね!
こんな本が読みたかったんです~。
理解するのは結構大変そうだし、読むのに時間がかかりそうですが
手持ちのCDを聴きつつ、じっくり読んでいきたいと思います。
ただ、ペレアスとメリザンドがかなり大きく取り上げられているようなんですが
私、戯曲は本で読んだんですけど、曲を全然知らないんですよね。
やっぱりその辺りも聴いた方がいいよなあと思いつつ…
オペラにはあまり手を出したくなくて、ちょっと逡巡してます。(^^ゞ
ジャンケレヴィッチ、面白いでしょう!
アリアさん、こんにちは。

アラウのドビュッシーは、私にはちょうどぴったり合うのですが、ちょっと変わっているらしいです。
響きに透明感がなくて厚みがあるので、曲によってはもやもや霞がかったような感じがします。でも、その背後に生温かな生命力を感じるところが面白いです。
他にもいろいろ聴いてみましたが、チッコリーニがかなり相性が良いので、当分この2人のドビュッシーを聴こうかなと思います。

アラウの「ピアノのために」の”プレリュード”はYoutubeにあります。1959年のアスコナのライブ録音です。(CDは廃盤です)
アラウは20歳頃から、ドビュッシーをリサイタルでずっと弾いていたので、腕は確かだと思います。
http://www.youtube.com/watch?v=25fNMQocVGE

ジャンケレヴィッチ、お気に入られたようで良かったです!
最初はあまりにいろんな曲が登場するし、独特の概念と文体なので、記憶に残らないところが多かったですが、2回読んでようやく全体(概念)と細部(曲)の対応がわかってきました。
メモを取りながら読んでいるので、そのうちまとめて何か書こうと思います。

ジャンケレヴィッチは、自分でピアノをかなり弾く人なので(録音もあるらしい)、ドビュッシーの同時代の音楽については博識ですね。
直観的に核心を把握する人なんでしょうが、例示が多く表現をいろいろ変えて説明しているので、この種の文章を書く人にしては、わりとわかりやすい方だと思います。
リストに関する本も出しているので、次はそれを読むつもりです。

私はそもそも演劇は一切見ないので、オペラ(とミュージカル)には全然興味がなくて、「ペレアスとメリザンド」のところは飛ばし読み状態です。
知っていれば、一層面白く読めるし、視点も広がり、理解も深まるとは思いますが、好きでないものには手を出さないことにしているので。
私ほどに劇物がイヤでなければ、そのうち試しに聴いてみると、結構気に入るかもしれません。
でも、オペラにはまってしまうと、後が大変ですから気をつけましょう。
アラウのプレリュード
yoshimiさん、おはようございます。
You Tube、見てきました!

この曲は単に技巧をひけらかすような感じにもなりやすいと思うし
そうなると、どこかとげとげしい印象になりやすいと思うのですが
アラウの演奏は、やっぱりアラウの音がしていますね~。
音は鳴りきってるのに、全然とげとげしくなくて、とても綺麗でした~。
でも確かにあんまり透明感はあまりない… これは乳白色な感じ?(笑)
曲によってはもやもやするというのが、すごく分かる気がしました。
ドビュッシーって、弾く人によってものすごく違いが出てきますね。
なんだかだんだん面白くなってきました。(笑)

あ、でもやっぱりオペラには手を出さないと思います…
音が下っていく辺りとか、説明がとても分かりやすいので
音楽を知らなくても、話が分かっていれば十分に思えてきました。
とりあえずは、ピアノ曲だけで十分かも~。
そうでなくても、本当に色んな曲が引き合いに出されますものね。
アラウのドビュッシー、独特のものがありますね
アリアさん、おはようございます。

アラウのプレリュード、冒頭からして、どことなく感情的なものが渦巻いているような気がするんですが...。(気のせい?)
アラウの音は、ドビュッシーに向いているのかよくわかりませんが、線が太めで丸みがある上に、残響が多めなので、厚みのあるテクスチュアになりますね。これがもやもや感の原因の一つかも。

ドビュッシーが好きなわけではなかったんですが、いろんな録音を聴いていると、すっかり苦手意識が消えてしまって、最近ではとても面白く思えます。
やっぱり自分の好みにあった演奏を見つけるのが、苦手解消には一番良いですね~。
これも、アリアさんのドビュッシーの記事をいろいろ読んで、刺激されたおかげです。ありがとうございます!

ジャンケレヴィッチの本は、オペラを実際に見た(聴いた)ことがなくても論旨はよくわかりますから、ストーリーを知っていれば、全然問題なさそうですね。
私は、ピアノ(と、たまにヴァイオリン)を聴くだけでもう手一杯。
実際、オペラまで手を出す余裕もないし、ピアノだけでも世界があまりに広くて奥も深いので、これだけで充分かなあと今は思ってます。
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プロフィール

yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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