アラウ ~ ブラームス/ヘンデルの主題による変奏曲とフーガ 

2010, 09. 09 (Thu) 18:00

アラウの『ブラームス作品集』に関する追加記事:《ヘンデルの主題による変奏曲とフーガ》の録音について

アラウはブラームスのピアノ独奏作品のなかで、《ヘンデルの主題による変奏曲とフーガ》や《ピアノ・ソナタ第3番》をリサイタルで良く弾いていた。
特にヘンデル・ヴァリエーションは、晩年の1978年のスタジオ録音以外に、2種類のライブ録音がリリースされている。
ヘンデル・ヴァリエーションといえば、私がすぐ思い浮かべるのはゼルキン、カッチェン、ウゴルスキ。
アラウの録音はさほど有名ではない気はするし、晩年のスタジオ録音の方がライブ録音よりも(たぶん)よく聴かれている。

スタジオ録音は、晩年のアラウ特有のゆったりしたテンポで、重厚ではあるけれど切れ味が鈍く、技巧の衰えや、ライブ録音とは違う穏やかさを感じる。
第4変奏や第25変奏など、高速の重音移動が多い変奏ではタッチの切れが悪くて重たいし、技巧的な問題からか、以前は入れていなかったルバートやリタルダンドがあちこちで入って、テンポが落ちて勢いがそがれたり、流れの悪さを感じる。
アラウの得意な第24変奏のアルペジオも、ライブ録音ではうねるようにダイナミック(これは何度聴いても迫力がある)だったけれど、スタジオ録音ではうねりが平坦になって躍動感が薄くなっているし、最後のフーガも勢いが弱かったりして、いろいろ気になってしまうところが多い。

スタジオ録音だけ聴いていると、若い頃(といっても60歳だけど)の演奏との違いはわからないけれど、それでも全盛期に録音したゼルキンなどのピアニストの演奏を知っていれば、技巧面や演奏自体の切れの悪さは聴こえてきてしまう。
テンポが遅いこと自体は気にならないけれど、重たくて切れの悪い演奏というのは誰の演奏でもあっても好きではないので、いつもライブ録音の方を聴くことになる。

概して、アラウの1960年前後から1970年前半くらいまでの演奏は、技巧的にほぼ安定しているし、構成力とスケール感があってダイナミックだし、表現も晩年にくらべてロマンティシズムが濃いものが多い。
晩年のゆったりとして重みのあるヘンデル変奏曲が一番素晴らしい!と思う人はともかく、当時60歳だった1963年のシュヴェツィンゲン音楽祭ライヴ(またはルガーノライブ)で弾いたヘンデル・ヴァリエーションは、技巧が安定して演奏の切れ味がよく、表現もずっと豊かで、生き生きとした躍動感と繊細な情感がこもっている。(気合の入りすぎで勢いあまったせいか、ところどころミスタッチがありますが)
何よりも、アラウはライブが”本領”という人もいるくらい、気力溢れる演奏が聴けるというところが私にはとても魅力的。

アラウの《ヘンデルの主題による変奏曲とフーガ》(ルガーノ・リサイタルのライブ録音)[Youtube]
このルガーノのライブ録音よりも、シュヴェツィンゲンのライブ録音の方がミスタッチが少なく安定して、音質も良いので、私はいつも聴くのはシュヴェツィンゲンの方。

スタジオ録音は廃盤になっているので入手するのはかなり難しい。
ライブ録音なら最近リリースされたCDや、itunestoreのダウンロードで簡単に入手できる。
これは、シュヴェツィンゲン音楽祭のライブ録音のCDで、1963年と1973年のものを収録。60歳と70歳のアラウが弾いていたベートーヴェンやブラームスが聴ける。ヘンデル・ヴァリエーションは1963年の録音。
ピアノ・リサイタル 1963年 & 1973年 - ベートーヴェン&ブラームスピアノ・リサイタル 1963年 & 1973年 - ベートーヴェン&ブラームス
(2009/06/12)
クラウディオ・アラウ

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