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ユーリ・エゴロフ ~ ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第5番
スークが録音したベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲のCDには、なぜかユーリ・エゴロフのベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番《皇帝》とモーツァルトのピアノ協奏曲第20番がカップリングされている。
レーベルはAngel Records。EMIの廉価盤レーベルらしい。
スークとエゴロフの演奏のカップリングというのは、エゴロフがそれほど有名なピアニストではないだけに、ちょっと珍しい気がした。

エゴロフは、以前<早逝したピアニスト>という記事でちょっとだけ書いたことがある。
HMVサイトにあるエゴロフの紹介文によるとによると
「エゴロフはボリス・ゴドゥノフの歌でもおなじみの旧ソ連の都市カザンに生まれています。カザン音楽院とモスクワ音楽院でピアノを学んだ彼は、各種コンクール入賞の後、政府からの圧力に耐え切れず、1976年、演奏旅行中にオランダに亡命、23歳でアメリカで活躍を開始、高名な批評家ハロルド・ショーンバーグからも高い評価を獲得、25歳の時には彼の2枚のLPがビルボードのクラシック・ベストセラーにチャート・インするほどの人気を博します。
 エゴロフは80年代に入ると活動の拠点をオランダに戻し、EMIやCANAL GRANDEを中心に録音をおこない、美しく繊細なタッチによる見事な演奏を聴かせてくれましたが、エイズのため33歳の若さで亡くなってしまいます。」

このCDはスークのベートーヴェンの録音を探していて見つけたもの。
エゴロフの《皇帝》は聴いた人の評判がとても良いし、エゴロフの録音はピアニストの内藤晃さんが愛聴していることもあって、買っておいたCD。
ヴァイオリン協奏曲を聴いてから、しばらくCDラックに眠っていたけれど、突然なぜか思い出して《皇帝》を聴き始めたら、これが予想外にとても素晴らしくて、びっくり。
続けて何回も聴いたし、おかげでエゴロフのBOXセットまで購入する羽目になってしまった。

Violin Concerto / Romances / Piano Concerto 20Violin Concerto / Romances / Piano Concerto 20
(1995/06/20)
Suk, Egorov, Boult, Marriner, Sawallisch,Academy of St Martin in the Fields,Philharmonia Orchestra

試聴する(英amazon)[エゴロフのBOXセットへリンク:DISC5_Trak5~7]
ピアノ協奏曲の伴奏は、サヴァリッシュ指揮フィルハーモニ管。

エゴロフは、タッチが丁寧だし、音が柔らかでふわっとした膨らみがある。
弱音でもしっかりした芯のある音が綺麗で繊細。フォルテはバンバン強打せずとも音量が大きく伸びやか。
ペダリングが上手いせいか、ペダルを多用しても長さや膨らみを細かく調節して、過剰な濁りや残響がなく、音が波のように広がっていく。
極端なテンポ設定はせずに、変なクセのあるアーティキュレーションもなく、ディナーミクや緩急のコントラストを特に強調するタイプでもないけれど、平板さや起伏の緩さは感じさせず(少なくとも私には)、特に柔らかいタッチのレガートが美しく滑らか。伸びやかで無理のない自然な流れを感じさせるところが素敵。

HMVのレビューで「美しい和声に関する絶対的な天分がある」と書いている人がいたけれど、これは全くその通り。
そもそも音自体がとても綺麗なうえに、色彩感のある響きも多彩。ミケランジェリのようなクールな硬質の音ではなく、暖かみと丸みのある明るい音で、とても耳に心地よい響き。

優れた”和声的感覚”(とでもいうのか)で、フレーズに合わせて響きの重ね方や厚み、長さが自在に変化し、立体感もあってとても鮮やか。
第1楽章冒頭、アルペジオが重なる伸びやかな響きが美しく、空間的な広がりを感じさせるところからすっかり惹き込まれてしまう。ゆったりとした第2楽章は、繊細な響きと詩的な雰囲気がとても美しく、第3楽章のリズミカルな躍動感が力強くて、堂々としたフィナーレ。

巨匠タイプの重厚さはないけれど、”軽い”わけでは全くなく、正確な打鍵と滑らかなフレージングからくる安定感があり、強い個性的な解釈や外形的に目立ったユニークさがなくとも、美しいソノリティと淀みない流れが品良く、緩みのない正攻法的な演奏に惚れ惚れとしてしまう。
ソコロフの鋭い硬質の研ぎ澄まされた音のもつ強い吸引力とは違っていて、エゴロフの音は柔らかで多彩な響きに魔法にかかったように誘い込まれているような感覚。
エゴロフのピアノを魅力的と感じるかどうかは、人によってかなり違うような気がする。ピアノの音が綺麗で響きも多彩で詩情のある演奏を聴きたい人なら、何か魅かれるところが見つかるように思います。

                               

エゴロフのBOXセット(7CD)。EMIでのセッション録音とカーネギー・ホールのライブ録音を収録。
他レーべルの録音だと、CHANEL Classics(CANAL GRANDE)などからCDが数枚でている。(今はほとんど廃盤)

収録曲は、ドビュッシーの《前奏曲全集》と《版画第1集》、シューマンの《謝肉祭》《色とりどりの小品》《クライスレリアーナ》《蝶々》《アラベスク》《トッカータ》、ショパンの《バラード第1番》《スケルツォ第2番》《別れの曲》《幻想曲》、バッハやモーツァルトの小品など。
ピアノ協奏曲はベートーヴェンの《皇帝》とモーツァルトの第20番&第17番。

特にシューマンの録音、なかでも《謝肉祭》と《色とりどりの小品》の評判がとても良い。
実際、聴いてみたら、シューマンは誰の録音を聴いてもよくわからないのに、エゴロフのシューマンには繊細な音を聴いただけで惹きこまれそうだし、詩的だけどべたつかない叙情感でロマンティック。
特に《謝肉祭》の第12曲”Chopin”は、こんなに綺麗で詩的な曲だった?と思うほどに、響きがとても綺麗で詩情豊かな感じがする。
他の曲も、試聴しただけで最後まで聴きたくなってしまう曲が多くて、ここまでくればもうこのBOXを買うしかない。ということで、英国のamazonサイトでオーダーしました。
以前、このBOXセットを試聴した時はあまりピンとくるものがなくて、そんなに相性が良い感じはしなかったけれど、最近はソノリティにかなり敏感になっているせいか、音の美しいピアニストに魅かれるようになったらしい。(それとも、昔は単に耳が悪かっただけ?)


The Master Pianist / Yuri EgorovThe Master Pianist / Yuri Egorov
(2008/03/04)
Youri Egorov

試聴する



<ユーリ・エゴロフに関するブログ記事>

 ピアニスト内藤晃さんのブログ<Moments musicaux>エゴロフのCD紹介
初めてエゴロフのことを知ったのが、内藤さんの愛聴盤紹介の記事。(カッチェンのピアノもとても好きな方です)

 私版光と風と夢/ピアニスト讃(HOMMAGE A PIANISTES)/ユーリー・エゴロフ
エゴロフのCDやコンサートに関する紹介、感想が書かれている。

tag : ベートーヴェン エゴロフ

※右カラム中段の「タグリスト」でタグ検索できます。
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(非公開コメント受付中)

初耳でした
ユーリ・エゴロフ、全然知りませんでした。
でも、ご存じの通りシューマン大好きな私なので(笑)
内藤晃さんの記事を拝見して、試聴もしてみました。
まだ謝肉祭を聴いてみただけなんですけど、本当に音が綺麗!
特に高音が際立ってますね。
これは確かに最後まで聴いてみたくなってしまいます。
ああ、またしても欲しいものが増えてしまいましたよ~。

しかもシューマンのトッカータが入ってるのが嬉しいです。
これ、言ってしまえばトレモロの練習のためみたいな曲だし
(アルゲリッチは指馴らしに使ってたらしいです)
世間一般的な評価はよく知らないんですけど、なんだか妙に好きなんです。
なのに、CDとして持ってるのはリヒテルだけで。
You Tubeだとシフラやホロヴィッツの演奏があるんですけどね。
(ホロヴィッツは音声のみ)
…その2人が弾いてるってだけでも
どんなタイプの曲か分かる気がしませんか?(笑)
いつかは弾いてみたいんですけどね~。ものすごく難曲そうです。
トッカータ、面白い曲でした
アリアさん、こんにちは。

エゴロフを知っている人はとても少ないと思います。私も昔は名前も全く聞いたことがなかったです。
内藤さんお薦めのピアニストは、好みにかなり合いそうなので、わりとチェックしているのです。

ステレオだとピアノの音が遠めに聴こえたので、ヘッドフォンで《皇帝》を聴いていて、アルペジオが綺麗だし、音の響かせ方がうまくてびっくり。
昔はそれがわからなかった自分の耳の悪さに呆れましたが、まあ今回気がついて良かったです。
BOXセットを試聴した限りでは、ドュッシーは好みとしてちょっと詩的すぎる気がするので(それはそれでいいんですが)、シューマンがとても良さそうな感じです。

トッカータは聴いたことがあっても、すぐに曲が浮かんでこないです。
でも、録音しているピアニストの名前を聴いただけで、技巧バリバリの練習曲風なイメージがしますね~。
Youtubeでリヒテル、シフラ、ホロヴィッツとかを聴いてみると、クリスピーなタッチでリズムを強調するポゴレリッチが面白かったです。ちょっとテンポは遅いですけど。
聴いてみるとトッカータはわりと好きな曲なんですが、どこかで聴いた気がするんですよね....。
もしかしたらと思ってカッチェンのモノラル録音を探すと、やっぱり20歳代で録音してました。
テンポはシフラ並で結構速いですが、指回りのすこぶる良いカッチェンでも、ときどき音がモコモコ。
やっぱり難曲ですね。でも、指の分離の訓練には抜群に良さそう。(私は絶対弾く気にはなりませんが)

エゴロフの録音は、演奏時間が7分とテンポが遅めですね。その分、バリバリ練習曲風とはちょっと違うかも。
CDが到着したら早速聴いてみます。楽しみ~。
遅いですが
今頃になってポゴレリッチを聴いてきました。
いや、面白いですね! クリスピーなタッチ、たしかに~。
全体的なタッチがびっくりするほど揃ってますね。
左手のアクセントの入れ方に他とはまた違う表情があって新鮮でした。
スピードは抑え気味ですけど、きっともっと速く弾けるんでしょうね。
テンポが正確すぎて怖いぐらいです。(笑)

後のピアニストは… シフラは、まあ、シフラだし…(笑)
ホロヴィッツは独自の世界な人ですけど、テンポや強弱を揺らして
表情を豊かにしすぎるのは、この曲にはあんまり似合わない気がします。
リヒテルは迫力があっていいんですけど、リヒテルらしく荒いし…(笑)
ギレリスはいい感じなのに、音が悪いのが残念。(途中怪しい箇所もありますが)
あ、ルガンスキーはなかなか良かったです。テンポも速いです。技巧派ですね。
(You Tubeのは、途中で音飛びしてますが)

今まで聴いたトッカータの中で、ポゴレリッチが一番好みの演奏かもしれません。
逆に面白い演奏を教えていただけて感謝です!

エゴロフはどんな感じでしょうねえ。楽しみですね。
ボゴレリッチとエゴロフのトッカータ
アリアさん、こんにちは。

ポゴレリッチ、面白いでしょう!
彼のベートーヴェンやブラームスは全く合いませんが、このトッカータは茶目っ気たっぷりというか、才気溢れる演奏で、古今東西の録音で文句なくベスト3には入るでしょう。(言いすぎかな?)

シフラは指回りはさすがですがバンバン煩いし、リヒテルはお年のせいか、ちょっと切れが悪いですね。弱音部の旋律の歌わせ方とかは好きなんですが。
ギレリスは若い頃の録音なので、メカニックは良いですが、ちょっと重戦車風かも。
ルガンスキーはお手本的に上手いですね~。技巧派なので、この程度は楽に弾けるのでしょう。

さて、エゴロフはというと、やはり指回りの良さで弾くタイプではなく、彼の長所を生かした和声的な響きが面白いトッカータ。こういう風に弾く人はそう多くはないでしょう。
やわらかいタッチで、音が軽やかなレガートで弾いてます。ちょっと優雅で詩的な雰囲気がしますね。
残響が多く(ペダルをかなり使っている?)、響きの重ね方に特徴があります。
多少混濁気味になるのも気にせず厚みのある響きで、その中から浮かびあがってくる旋律の響きが面白いですし、旋律の歌わせ方も綺麗です。
ただし、終盤のフォルテで弾くところが、ちょっと重たくてあまり響きが綺麗に出ていない感じはしますが...。

まろやかなタッチと響きが厚いところは好みが分かれるでしょうね。
yoshimiさん、ありがとうございます!
まだ聴けてないんですが、今晩にはーー。
取り急ぎお礼まで。
いえいえ、どういたしまして
アリアさん、おはようございます。

ダウンロードできるはずなので、ゆっくり聴いてくださいね~。
私は、わずか1週間で英国から届いたBOXセットを夜中に少し聴いてみたら、すっかりはまってしまいした。
ドビュッシー、シューマン、ショパン、どれもとっても素敵です。
CD7枚あるので、今日中に全部聴く予定です。
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プロフィール

yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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