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F.P.ツィンマーマン ~ シューマン/ヴァイオリン協奏曲
土曜日の真夜中にウェブラジオで放送していたフランク・ペーター・ツィンマーマンのライブ中継。
今回はシューマンのヴァイオリン協奏曲ニ短調で、伴奏はユッカ=ペッカ・サラステ指揮ケルンWDR交響楽団。
また珍しくマイナーな曲を...と思ったら、今年はシューマンイヤーだった。

このヴァイオリン協奏曲、ずっと昔にFMラジオで放送していたので、ちょっとだけ記憶に残っている。
ピアノ協奏曲ほどに若々しい感情が横溢するようなロマンティックな曲..というわけではないけれど、第1楽章はちょっと古典的な趣きがあって、オーケストラパートはシューマンの交響曲を聴いている気分。
ヴァイオリンが弾く主題もわりと颯爽としてドラマティックなので、第1楽章はとっても印象的で好きだった。

久しぶり(何十年ぶり?)に聴いてみると、やっぱり第1楽章がとっても良い感じ。冒頭からベートーヴェン(というよりはメンデルスゾーンが近いかも)の交響曲に似たようなドラマティックな雰囲気。
第2楽章は元々緩徐楽章は苦手でほとんど記憶になくて、何度か聴いてみると、穏やかな旋律のなかにももの哀しい雰囲気が漂っているような...。
第3楽章は少し覚えていたけれど、”ポロネーズを思わせるリズミカルな曲調”と解説にあるわりには、全然リズミカルでもなく、テンポもあまり速いという感じがなくて緩々。
速度指定が"Lebhaft doch nicht schnell"なので、どの曲でも比較的速めのテンポをとるツィンマーマンのヴァイオリンがそれほど走っていなかったのか、元々こういう曲なのか...。終楽章とはいえ、高揚感漂うパッショネイトな曲である必要もないし...という気がしてくるほどに、とても上品な舞曲風。
当時シューマンがバッハを研究していた影響~フランス風序曲を連想させる第1楽章の符点リズムの第一主題、ゆったりしたポロネーズ風第3楽章~があるというのが定説(らしい)。

旋律が魅力的なピアノ協奏曲ほどには印象が強くない気はするけれど(でもヴァイオリンのソロパートはすごく難しいという)、地味ながらも、シューマンの曲にしてはやや抑制されたようなロマンティックな叙情感が美しくて、さほど評価も人気も高くないのが不思議なくらい。
何度か聴くと結構気に入って、シェリングのCDを買おうかな(ツィンマーマンは録音していないので)...と思い始めた。

[追記]
コメントでツィンマーマンのCDが出ていることを教えていただきました。(熊太郎さん、どうもありがとうございました)
1992年のライブ録音で原盤は廃盤。今年EMIからリリースされたシューマンイヤー記念BOXセット(サヴァリッシュ/SKDの交響曲全集、ヴァイオリン協奏曲、チェロ協奏曲などを収録)に収録されています。


Schumann Violin Concerto - Szeryng & Doráti/LSO


コンチェルトの演奏が終ると、熱狂的な拍手歓声...というほどではなかったけれど、結構盛大な拍手が延々と続いてなかなか止まらない。
とうとうアンコールとして、ツィンマーマンがバッハの無伴奏ソナタ第3番の”ラルゴ”を弾き始めた。
最近のライブ録音を聴くと、アンコールではいつもこの曲を弾いている。それを度々聴いているせいで、バッハの無伴奏のなかでは、記憶にしっかり残っている曲の一つ。
ツィンマーマンのヴァイオリンの音が綺麗だしとても品が良くて、ソロだと音の美しさがコンチェルトよりもよくわかる。弾き終わった時の聴衆の拍手も、コンチェルトの時以上に熱が入っていたかも。

                             

ヴァイオリン協奏曲のWikipediaの解説を読んでいると、いろいろといわくつきの曲。
献呈者のヨアヒムと妻クララがなぜこの曲を封印してしまったのか、演奏至難の難曲だったせいか、それとも最晩年のシューマンの精神状態が反映されたようなただならぬところを感じたのかとか...ちょっと謎めいたところも。

レビューや解説記事などを調べてみると、1953年年作曲されたこのコンチェルトは当時の晩年のシューマンの精神状態が反映されていると言われているらしい。
第1楽章の感情の浮き沈み、行きつ戻りつするような錯綜感、妙に優しげで夢見心地の緩徐楽章、熱気が稀薄で緩々とした第3楽章...とか。
そう思って聴くと、第1楽章の途中で出てくる緩徐部分(8分くらい)に、不気味な妖艶さがあるようにも聴こえる。
第3楽章はたしかに舞曲にしては緩いテンポで躍動感も薄い(バロック風ポロネーズだと、このゆったりしたテンポが適切という人もいる)。

こういう精神的に危うげな要素をはらんだ曲というのは、演奏によってかなり雰囲気が変わる。
シューマンの交響曲第2番は、シノーポリ/ウィーンフィル盤で聴くと、崩壊しつつある精神が狂気の深淵を垣間見たような不気味さと凄みがあるのに、他の録音だとそういう感じは稀薄で甘美なロマンティックな曲に聴こえる。
このヴァイオリン協奏曲は、ツィンマーマン(やシェリング)の演奏を聴いても、感情が錯綜するような不安定感や異様さはそれほど感じず、優雅な端正さとやや抑制された情熱が漂うロマンティックな曲のように聴こえる。
それでも、交響曲第2番が現実の世界と向うの世界の境目の淵にかろうじてとどまっているような張り詰めた緊張感があるのとは違って、このヴァイオリン協奏曲で時々感じるのは、まるで夢の中の世界にいるようなどこかふわ~とした浮遊感や弛緩したような雰囲気。異聴盤をいろいろ聴けば、なにか発見することがあるかもしれない。

tag : シューマン

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知りませんでした♪
シューマンのヴァイオリン協奏曲は全く知りませんでした。
綺麗な曲なのになぜ、マイナーなままなのか、不思議ですね。
ツィンマーマンは、私も大好きなヴァイオリニスト。2回ほど、コンサートも聴いて、本当に素晴らしいなと思いました。
前の記事を読んで、シベリウスの協奏曲も是非聴いてみようと思ってます。
シューマンのコンチェルト、良い曲ですね
マダムコミキ様、こんにちは。

このコンチェルト、テクニカルな面で至極演奏が難しいわりに、演奏効果が上がらないらしく、あまり人気もないので、ヴァイオリニストに敬遠されがちな曲だそうです。
緩々としたところはありますが、地味ながら良い曲だと思うんですけど。

ツィンマーマンのコンサートを聴かれたなんて、うらやましいですね~。
最近は来日が少なく、去年は東京公演(ブラームスの協奏曲)のみなので、行く機会がなくて。
その代わり、ウェブラジオの中継やライブ録音は頻繁に流れているし録音もできるので、CDリスニング中心の私としては、さほど不満はないんですが。

新盤のシベリウスも良いと思いますし、ツィンマーマンの演奏にまずハズレはない(と思っている)ので、彼の演奏はCDでもライブでもどれでも好きです。
私としては、コンチェルトよりもピアニストのパーチェと組んだヴァイオリンソナタの録音が聴きたいのですが、ソニーからは新録がほとんど出てきません。残念。
もしOndineに移籍したなら、ムストネンのようにCDリリースが増えるかもしれないので、ちょっと期待してます。
通りがかりに
はじめまして。
ツィンマーマンの弾くシューマンの協奏曲、CDが出ていますよ。
EMIの1992年録音です。機会があったらお聴きになってみてください。
(調べたらドイツのamazonで取り扱いがありました)
情報をどうもありがとうございました
熊太郎様、はじめまして。

CDの情報、どうもありがとうございます。

ツィンマーマンのCDは、廃盤になっていたので見落としていました。
amazonでは米・英・ドイツなどで扱っていましたが、いずれも高額なプレミアムが乗っていましたし、海外サイトからはダウンロード購入もできないため、別盤がないか探してみました。

幸い、EMIが今年出したシューマンBOX(交響曲、管弦楽曲、協奏曲集)に収録されていました。
HMVで安く購入できますし、ほかの曲もいろいろ収録されていますので、こちらで聴いてみます。

教えてくださったおかげで、欲しかった録音が見つかりました。
どうもありがとうございました。
またもや来てしまいました
シューマンのVN協なので また来てしまいました。
ちょっと長くて申し訳ないのですが 力はいってしまいました。

去年 コンサートを検索しましたが
やはり人気ないからでしょうか 出会えずじまい。
一昨年12月前半には演奏あったようですが。。。(その2日後にこの曲 しりました)

私の購入レビューにあるように「ブラームスVN協」目当てで購入した 
イリヤ・カーラという人のCDが出会いです。
カップリングがシューマン? VN協あったんだぁ まぁいいかぁって感じでした

ところが第一楽章出だしから気に入ってしまいまして
その日は5~6回くらい聴いたと思います


>主題もわりと颯爽としてドラマティックなので、第1楽章はとっても印象的で好きだった。

仰るとおりで 颯爽としてドラマティック!! そこが大好き

>第2楽章は元々緩徐楽章は苦手でほとんど記憶になくて、何度か聴いてみると、穏やかな旋律のなかにももの哀しい雰囲気が漂っているような...。

私の場合 私はわりと好きでしたが
夢見がちで美しいのに
あちこち彷徨う不思議な それも少し悲しげな旋律だなぁと思いましたね。
己の死を予感した人が 色々なことを回想するような感じ。

調べると背後に何とも痛ましいことがあったんですねぇ ・・痛々しい

>、全然リズミカルでもなく、テンポもあまり速いという感じがなくて緩々。

この楽章 未だにいまいちわからないです 誰の演奏でも(笑)

>やや抑制されたようなロマンティックな叙情感が美しくて、さほど評価も人気も高くないのが不思議なくらい。

そうなのですよね。シューマン好きでも 物凄く好き派VSどうでもいいよ派
 と 分かれるようです・・・

>何度か聴くと結構気に入って、シェリングのCDを買おうかな...と思い始めた。
>こういう精神的に危うげな要素をはらんだ曲というのは、演奏によってかなり雰囲気が変わる。

おっしゃるとおりで 演奏によってかなり雰囲気が変わります

●第一楽章のテンポ、見せ場 表現が大きく分けると2つ

●全体的に 「甘さを表現したい」 か 「清清しさを表現したい」したいか

ワタシはイリヤ・カーラーというヴァイオリニストは爽やかな演奏でとても気に入りましたが
他も知りたく 調べたところ
Youtubeで聴いたところ シェリングが 私のストライクゾーン!!
さっそく購入しました。

他も できるだけ聴いてみましたが
やはりカーラーとシェリング が好みです
(カーラーはグラズノフもGood!)
次点にラウテンバヒャーという方の演奏、第一楽章のびのびとしていて好みでした。

ポイントは第一楽章で
上記2点& 全体的に甘すぎず凛とした雰囲気
→例えると レーゼルのピアノに通づるところがあり。

人によってはシェリングの演奏 つまらん!!って方もいらっしゃいましたので
こればっかりは プロコじゃあありませんが 好みですネ♪
                            

>緩々としたところはありますが、地味ながら良い曲だと思うんですけど。
一部のシューマン好きの方(特に音大卒)によると 
どうにも不器用で 不完全さがあり 緩慢なところが見受けられるが
それを承知で惹かれるようです
詳しい解説、どうもありがとうございます!
ぶひ様、こんにちは。

とても詳しい解説、勉強になりました。
こういうレア曲は、知っている方も好きな方も少ないですね。
私の印象が妥当なのかどうか、よくわからなかったのですが、大きくはハズしていなかったようなので(と思いますが)、ひとまず安心。

シューマンの管弦楽曲、どれも主題は颯爽していて、ソロ曲よりも好きなのです。
第1楽章は、ツィンマーマンでも清々しく弾いてました。
シェリングは気品があって良いですね。確かに芸風はレーゼルに似ているところがありますし。
”精神性”云々と賞賛されていたので、昔は敬遠してました。バッハのヴァイオリンソナタのライブとか、いくつか聴いてみたら、余計な飾りがなくて凛と澄んだ気品があって、それから聴くように。

第2楽章はもしかしたら結構深刻な曲で、ここで彼岸と此岸の間を彷徨って、結局、第3楽章で、向うの世界に行ってしまったのかも。
第3楽章は、心ここにあらず...というような、つかみどころのなさがあるようにも感じます。

シューマンの曲に何を期待するかで、好みが分かれるようにも思いますが、どことなく不気味な静けさが漂っているように感じますし、感情の起伏の激しいソロ曲よりも、私にはとっつきやすいです。
シノーポリの第2番の解釈が納得できるので、この曲にもそういう精神的な面での危うさを感じるところがあるからでしょう。


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Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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