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キース・ジャレット 『ラ・スカラ』
キース・ジャレットのソロ・コンサートの録音のなかで、《パリ・コンサート》の次に(というか同じくらいに)好きなのが、1995年イタリアのミラノ・スカラ座でのライブ録音《La Scala》

La ScalaLa Scala
(2000/01/25)
Keith Jarrett

試聴する(米amazon)
《パリ・コンサート》のアルバムと同じく、ECMらしいスタイリッシュなジャケットデザインがとても綺麗。
《PartⅠ》は旋律と和声が美しく、特に終盤8分間は、フィナーレに相応しい開放感と高揚感がありその美しさは格別。
《パリ・コンサート》のようなバロック風のタッチではないけれど、全体的に静寂で瞑想的な雰囲気が支配的。
冒頭は、聴きやすいポピュラー音楽風の叙情的な旋律で始まり、やがてアラビア風(のように感じる)のエキゾチックな音階の旋律が続き、やがて左手低音部にオスティナートの同音連打が現れて、何かが迫り来るような雰囲気。ここからすぐに次に展開するかと思ったけれど、これがなかなか終らない。
ようやく、激しいトレモロが現れてきて、まるで蝶が激しく舞っているかのよう。
ここから曲想が変わって、36分頃から、新しい旋律が単音、それから和音で提示されて、そこに低音部の伴奏的なアルペジオが絡んでいく。
この部分は旋律の美しさと低音から立ち上がってくるアルペジオの力強さが、フィナーレの始まりらしい雰囲気。
ここを聴いていると、人気の全くない静かな森のなかの大きな泉で、蝶や昆虫たちが飛び交って、綺麗な花も咲き乱れているような情景が浮かんでくる。
終盤は全てが浄化されていくような美しさと開放感が清々しくて、とてもドラマティックなエンディング。

Keith Jarrett - La Scala [PartⅠ:エンディング]


《PartII》は《PartI》とは全く違うトーン。フリー・ジャズというものらしい。
(フリーは聴いたことがないので、実際にどういう音楽なのかよくわからない)
冒頭から調性感が安定せず、断片的な旋律や音の塊が、あちこち方向性なく飛び跳ねたり、循環したりしている。
これが、音型のパターン・音域など、いろいろと変化していき、この部分が結構長く続く。和声的には歪んだ荒々しい響きがなくて、調性が安定せずともなぜか綺麗な響きに聴こえる。
右手の中~高音域だけで、短いスケールが連続するパッセージが続き、やがて左手低音部が絡んできて、そろそろ新しい動きが出てくる予兆。

始めから12分くらいのところで、ハープでアルペジオを弾いているような響きのパッセージが現れて、《PartI》の終盤の冒頭へと再び回帰したような、美しい旋律と乱舞するような左手のアルペジオに変わる。
ここでほっと一息。静けかな湖面の細波のようなトレモロやアルペジオの響きが美しい。
これでクレッシェンドしてフィナーレへ...と思ったら、徐々に旋律と和声がシンプルになり、ディミヌエンドしてフェードアウト。
再び前半のように、方向性なく舞うパッセージが再び現れて、唐突に終る。

《La Scala》がフリー・ジャズのようだと良く言われるのは、たぶんこの《PartII》の印象が強いから。
現代音楽を聴きなれていると、音がランダムに現れてくる構成感・形式のない変わった音楽だと思えても、さほど強い違和感は感じない。
不協和的な音であっても、なぜかキースの和声はひどい歪みがなく、やはり美しい。つかみどころがない気はすれど、耳ざわりな感じはない。
でも、これを30分近く集中して聴き続けるのは、よほどこういう音楽が好きでないとかなり難しい。


アンコールの《Over The Rainbow》は、とても素敵なピアノソロ。
なかなかこの曲で良いピアノ・ソロが聴けなかったので、キースの《Over The Rainbow》は(個人的な)ベストと思えるほどに好きな演奏。
《PartII》が結構聴きづらい音楽だったので、《Over The Rainbow》を聴くと懐かしい故郷に戻ったような気分になる。
この日のコンサートの中では、《PartI》は結構飽きずに聴けたし、特に終盤の美しさが一番好きだけれど、《Over The Rainbow》が一番良かった...なんていう人もいるのもわかる気はする。聴衆の拍手もこの曲が終った時が一番熱が入っていたし。

Kieth Jarrett - Over The Rainbow

tag : キース・ジャレット

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(非公開コメント受付中)

久しく聴いていなかったのですが...
こんにちは。

キースはThe Melody At Night, With Youのような小品集とか、比較的短いソロの集まりであるカーネギーとか,そのようなものを中心に,最近は聴いていました。あと長いソロは飛ばして、アンコールの小品。

改めて久方振りにラ・スカラとプレゲンツを聴いてみましたが、いいですね。何で久しく聴かなかったのか不思議なほど、気持ち良く入ります。クラシックを聴くようになってからの方が、スムーズなような気がするのは、気のせいだろうか?

ジャズ的な浮遊感や逸脱感が少ないからかも知れないなあ、と思った次第です。ピアノの響きの美しさで聴くことができるようになったのは,クラシックを聴き出してからのように思うので.
古典と現代が融合したかのような
ken様、こんにちは。
ご出張先からのコメント、どうもありがとうございます。

パリ・コンサートを含めて、この3つのソロ・コンサートを聴くと、かなりクラシックなテイストを感じます。
キースのCDを聴いて強く印象に残るのは、その音の美しさ。
クラシックのピアニストでも、こういう純度の高い吸引力のある音を出す人はそう多くはないんじゃないでしょうか。
そこに古典的/現代的な音の配列や和声が入ってくると、さらに音の美しさが際立ってきます。
そういう点では、クラシックを聴いている人には、馴染みやすいですね。

ただし、延々と同じようなパターンがオスティナートされて、しっかりとした構成感が稀薄なので、クラシックオンリーで聴いていると、こういう長大な即興には退屈してしまう人も結構いるようです。(私はケルンはちょっと苦手なので...)
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クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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