アンダ ~ シューベルト/ピアノ・ソナタ第21番 

2011, 04. 05 (Tue) 18:00

アンダのディアベリのCDにカップリングされているのは、シューベルトのピアノ・ソナタ第21番。
シューベルトは、その心象世界がまったく異質に感じるので全然好きではないせいか、めったに聴かない。
ただし、後期ソナタの最後の3曲と《3つの小品》の第1曲だけは、好きなピアニストの録音を集めていると、CDがいろいろ溜まってしまうので、例外的に何度も聴いている曲。

アンダの弾く最後のソナタは、かなり変わった解釈の演奏(だと思う)。
BOXセットの解説でも、ディアベリよりもさらに”自然さ”に欠けていると評していて、4頁強の英文ブックレットうち、このシューベルトの最後のピアノ・ソナタだけで1頁少々を使って、特別に詳しく解説していた。

アンダの弾く最後のピアノ・ソナタには、美しい音と響きが優美で透明感のある明るさがあって、どこか醒めたような知的な解釈。
感傷や叙情性に深くのめりこむことなく、時に荒々しく力強い意志を感じさせるものがある。

アンダの録音のレビューを探したけれど、ほとんど見つからない。
アンダのシューベルトがあまり聴かれていないのか、それとも、シューベルト好きには好まれなかったのか。(多分この両方とも当てはまりそう)
少なくとも、アンダの第4楽章の演奏を好むシューベルト好きの人はあまり多くはないと思う。個人的には、感傷的でも過度に叙情的でもなく、疾走していくところがとても気に入ったけれど。

第1楽章は音が美しく、ペダルを多用した多彩な響きが優美。テンポがかなり伸縮し、第2主題は直前の優美で幾分瞑想的な雰囲気を打ち消すようにテンポが上がって、タッチも鋭く引き締まった演奏。
第2楽章は冒頭主題は悲愴感が漂ってはいるけれど、中間部は透明感のある明るさでとても爽やか。
第3楽章はスケルツォらしい力強いタッチで躍動的。中間部はかなりスローなテンポで静かで穏やかな雰囲気がして、短調のわりに暗さは稀薄。

問題の第4楽章。特異と感じられるほど、第3楽章のスケルツォの勢いをそのまま受け継いだように、速いテンポとシャープなタッチで力強くダイナミック。
この楽章は、通常8分前後をかけてゆったりと穏やかな雰囲気で弾かれることが多いけれど、アンダは7分弱という速いテンポ(ma non troppoの指定には、意図的に従っていないような...)。
このスピードに加えて、打鍵が鋭く力感があり、テンポも時折伸縮し、アッチェレランドで加速していくので、何かに追い立てられているかのような切迫感がある。
とりわけ印象的なのは、冒頭部分や途中で何回も現われる打ち鳴らすような和音。f/pの指示通り、フォルテで弾いた後すぐに指を上げるという、スタッカート的なタッチ。
この時の音は、まるで警笛のように短く鋭い響き。ライナーノートには”電気ショック”のようだと形容していた。
アンダの弾く第4楽章には、全体的に嵐の中を駆け抜けていくかのような、疾走感と急迫感がある。
まるで感傷や叙情、平安、諦観といったものに浸ることを拒否し、何かに対する怒りや決然とした意志が込められているかのような解釈が、このシューベルト最後のピアノ・ソナタの終楽章に相応しいのかどうか、わからないけれど、強く印象に残っているのは、数ある定評のある録音よりもこのアンダの演奏。


アンダのDG録音集。ピアノ協奏曲・ピアノ独奏曲のDG時代の録音をほとんど収録している。(グリーグのピアノ協奏曲などは未収録)
今は廃盤。ブラームスやシューマンのピアノ協奏曲など、分売盤が入手できる曲もある。
Troubadour of the Piano (Spkg)Troubadour of the Piano (Spkg)
(2005/09/13)
Geza Anda

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上記BOXセットから、ピアノ独奏曲のみを抜粋収録したライセンス盤。
シューベルトのピアノ・ソナタ第21番も収録。
Art of Geza Anda: Solo Piano RecordingsArt of Geza Anda: Solo Piano Recordings
(2010/07/13)
Geza Anda

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