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トラーゼ ~ プロコフィエフ/ピアノ・ソナタ第7番
アレクサンドル・トラーゼといえば、数年前にNHKの「スーパーピアノレッスン」の講師をしていて、それを見ていた人なら知っているに違いない。
TVは見ないのでそういう番組が放送されていることさえ当時は知らず、トラーゼを聴いたのは、とっても個性的なプロコフィエフのピアノ協奏曲の録音。

コンチェルトが面白かったので、トラーゼのプロコフィエフのピアノ・ソナタの方の録音も探してみたけれど20年以上前に録音した第7番しかないらしく、それも廃盤。
ありがたいことに、トラーゼのホームページ<Toradze Piano Studio>で、第7番のライブ録音の音源が公開されている。(他のソナタはトラーゼ以外のピアニストの演奏)
他に、バッハ、ドヴォルザーク、ラフマニノフ、ストラヴィンスキの録音もあり。特に明記されていない限りはトラーゼの演奏らしい。

第7番を聴くときは、いつもソコロフのパリ・リサイタルのライブ映像。
今までどうも好きになれなかったこのピアノ・ソナタが、このソコロフのリサイタルのDVDで聴いて以来、お気に入りの曲になってしまったので、この演奏は忘れられない。
ソコロフの色彩感の豊かで鋭く研ぎ澄まされた叙情感が美しいプロコフィエフを聴いてしまうと、ポリーニとかグレムザーのようなメカニカルでやや殺伐としたプロコフィエフは全然聴けなくなってしまった。

ちょっとデッドな音質なのは残念だけど、トラーゼの第7番のライブ録音を聴いてみると、重量感のある鋼のような重厚さと、色彩感のある響きと繊細・濃密な叙情感の両方を備えたトラーゼらしい演奏。
トラーゼのフォルテはロシアの大地を驀進する重戦車のように力強く、重厚な和音の響きもクリアでバンバン強打して音割れすることがないのが良い。
緩徐部分の響きのねっとりした妖艶さにはぞくっとするものがあるし(もっと音質が良いとずっと綺麗に聴こえると思うけれど)、第3楽章は色彩感のある音が綺麗だし、テンポも遅めなので、リズムも複数の旋律もくっきり浮かびあがってくる。
いろんな音にアクセントをつけて強調して弾くところも面白くて、ラストの和音の連打も地鳴りのように迫力充分。
こういう表情豊かなところは、ソコロフの演奏といい勝負。

トラーゼの演奏は、ソコロフのような透明感と煌きのある美音で詩的で洗練されたタッチではなくて、線が太めで油絵のような厚みのある色彩感のある音で、表現もこってりと濃厚な感じがする。
方向性は違うけれど、どちらも無機的で機関銃を連射するようなプロコフィエフとは無縁なのが、とても好みにぴったり。
ドライでスピード感のある感覚的刺激が強い演奏は、聴いていてすぐに飽きるので1回聴けば充分。
どちらかというとソコロフの美的なプロコフィエフの方が好みに合っている気はするけれど、いつも聴くならソコロフやトラーゼのように、音の綺麗で叙情感の濃い表現意欲に満ちたプロコフィエフで。
トラーゼのピアノ協奏曲は全集がCDで出ているのに、ピアノ・ソナタ全集の録音がないのがとっても残念。

                             

トラーゼの第7番ソナタのレッスン風景
Toradze Teaches Prokofiev Piano Sonata No. 7 - II. [Part 1]


トラーゼの「スーパーピアノレッスン」に関する実況記事が、preludeさんの<瞬間の音楽~preludeのクラシック音楽日記~>に連載されてます。
レッスンのポイントが書いてあって、無音の意識、音楽の流れ、対話する旋律とか、なるほど~と思うことがたくさん。プロのピアニストが何を考えながら弾いているのかが垣間見えてきて、いろいろ勉強になる記事です。
ピアノを弾かない人でも、この「スーパーピアノレッスン」を見ていたという人はよく見かける。
子供の頃に見ていた昔の番組「ピアノのおけいこ」とは違って(これは普通の人の普通の練習風景のようで全然面白くなかった)、ピアノを弾かない人にとっても、世界的に著名なピアニストのレッスン風景が見れるのが面白いらしい。
これからどんなピアニストが講師に登場するのかと楽しみだし、こういう面白い企画はずっと続けていって欲しいもの。



トラーゼ&ヤルヴィ指揮N響によるプロコフィエフのピアノ協奏曲第3番の第3楽章
爆演(快演)と評する人もいるくらいに、よく耳にする軽快なプロコフィエフではなく、音が分厚い絨毯のようで力感・量感もたっぷり、重厚でパワフル。緩徐部分の音の美しさと濃厚な叙情感もトラーゼらしい。
軽快でスポーティなプロコフィエフは好きではないので(軽すぎてどんな曲だったかすぐに忘れてしまうので)、トラーゼのプロコフィエフはとっても面白くて好き。
Prokofiev - Paavo Järvi -Toradze - Piano Concerto No.3 Mvt.3



トラーゼといえば、このプロコフィエフのピアノ協奏曲全集
トラーゼが強い思い入れのある第2番は、かなり個性的で全集中最も素晴らしい演奏。
テンポは速くても重量感があり、細部までこだわった表現は陰翳が強く、重々しく濃厚な叙情感のあるところで、好みは分かれるだろうけれど、この演奏を聴くと5曲の協奏曲のなかで、この第2番が最も奥が深い名曲だと思えてくる。

5 Piano ConcertosProkofiev / 5 Piano Concertos
(1998/03/17)
Alexander Toradze(piano),Valery Gergiev(conductor), Mariinsky Theatre Orchestra

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tag : プロコフィエフ トラーゼ

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Author:yoshimi
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クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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