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ヘンリー・クーパーjr.著 『アポロ13号 奇跡の生還』
立花隆の『ぼくはこんな本を読んできた』は、彼の読書に対する考え方や読書術がいろいろ書かれていて、これは読書論のなかではかなり面白く読めた本。
この本に限らず、彼の政治・時事もののルポルタージュはどれを読んでも面白い。
昔は頻繁に本を出していたけれど、最近は病気療養のためか、評論や新著をあまり見かけないのが残念。

ぼくはこんな本を読んできた―立花式読書論、読書術、書斎論 (文春文庫)ぼくはこんな本を読んできた―立花式読書論、読書術、書斎論 (文春文庫)
(1999/03)
立花 隆

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印象的だったのは、学生時代は文学や小説といったフィクションばかり読んでいて、出版社に入社して先輩から「ノンフィクションを読め!」と言われたというところ。
ルポとかドキュメンタリーを小説よりもレベルが低いと見なしていてあまり読まなかった彼が、本格的にノンフィクションを読み出すと、これが面白くて、それからはフィクションよりもノンフィクションばかり読むようになったという。

この部分が強く記憶に残っていたせいか、昔から歴史ものや時事ものはかなり好きだったこともあって、ノンフィクションを意識的に多く読むようになった。
そこまでは良かったけれど、フィクションを読む気が全然起こらなくなって、昔読んでいた小説を除いては、今では、伝記、評論、歴史、ルポものとかのノンフィクション系しか読まなくなってしまった。あるテーマの本を読むとしても、探すのはノンフィクション系。
歴史的事実や人物をベースにした小説ならたまに読むこともあるけれど、それ以外のフィクションは若い頃のように単純に感情的にシンクロするような読み方はできなくなっているので、もう読むことはほとんどない気がする。
映画もここ数年めったに見なくなってしまったのは、本と同じくフィクションの世界にリアリティを感じなくなったからかも。映画を見るとしても『エリザベス』とかの歴史物とか、実話を基にした映画くらいかな。

ノンフィクションもので面白いものはたくさんあったけれど、特に強い印象を受けた本の一つが『アポロ13号 奇跡の生還』。原題は『13:THE FLIGHT THAT FAILED』。
翻訳者は立花隆。(下訳は鶴岡雄二氏。まえがきで下訳者を明記して謝意を表しているところは、有名人の翻訳本にしては珍しいかも)
本書を読むと、現実は常にフィクションを超えるものだと実感するし、緊迫感とリアリティに溢れてスリリング。下手なSF小説やパニック映画がつまらなく思えてきてしまう。

アポロというと、日本では月面着陸したアポロ11号が有名。考えられない事故を起こして無事地球に帰還することができたアポロ13号のことはあまり知られていない。
このドキュメントを読んでいると、訳者がまえがきで書いているように、「アポロ11号の成功よりも、アポロ13号の失敗のほうが、アメリカの宇宙技術のすごさを示している」と思わずにはいられない。
アポロ13号の打ち上げから地球への帰還までの顛末(Wikipedia)


「考えられない事故」というのは、2基の酸素タンクが両方使えなくなり、3基の燃料電池のうち2つが壊れ、2つの電力供給ラインの一つが使えなくなったという、だれもシミュレーションしなかった想定外の事故。
エネルギー供給がほとんど絶たれたために、わずかに残った酸素・水・電力、反対に増加する二酸化炭素という厳しい船内環境と、アポロの隔壁の向うは地球から数十万キロの離れた真空で零下100℃以下の宇宙空間という、過酷な状況。地球上の事故のように外部から救援が駆けつけることは不可能。
それでも、3人の宇宙飛行士を無事地球へ帰還させることができたことは、邦訳のタイトルが”奇跡”と謳っているのも全然大袈裟には思えない。

アポロの船内と地上の管制センターの状況が、時系列でドキュメンタリー風に書かれている。
技術面の説明もわかりやすく、全く想定していなかったトラブルが次から次へと発生して、その新たな難題に対処するために、考えられるいろいろな原因や選択肢を考慮して、的確に状況を分析し判断を下していく様子が、臨場感のある文章で描かれていて、TVドラマの『24』ばりに面白い。
いわゆるベテランは少なく、20代、30代の若いスタッフがほとんど。この異常事態を乗り切ったのは、個々人の能力の高さと、組織としての危機管理能力の高さの両方が備わっていたからで、「読んでいて驚くのは、これだけのことをなしとげるアメリカの技術的底力であり、組織力である」と立花隆が書いていたことと同じことを感じる人は多いのでは。

アポロ13号 奇跡の生還 (新潮文庫)アポロ13号 奇跡の生還 (新潮文庫)
(1998/06)
ヘンリー,Jr. クーパー

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本を読むのはどうも...という向きには、トム・ハンクスが出演していた映画も公開されていて、こっちも面白い。(私は昔からSF映画が好きだったので、最初にこの映画をみて、それから本が出ているのを知りました)
基本的にはシリアスな映画。でも、船長の家庭の様子とTV局のエピソードは、エンターテイメント映画らしく挿入されたもの。
アポロ13号の船長役のトム・ハンクスはあまり記憶に残っていなくて、それよりも地上で陣頭指揮をとったNASAの飛行管制官ジーン・クランツ役のエド・ハリスの演技が真に迫ってリアルだった。

特に印象に残ったシーンは2つ。
出発直前にはしかに感染した疑いで交代させられた宇宙飛行士のケン・マッティングリーが、地上のシミュレーターで何度も試行錯誤しながら、最少限の電力で地球へ再突入するためのチェックリストを短時間で作っていくシーン。
それに、船内で増加する二酸化炭素を吸収するために、NASAの地上スタッフが宇宙船にある物だけで空気清浄機を考えだすシーン。
当時の管制センターの運営方法や技術的なレベル、危機的な状況下で判断基準、当事者たちが何を考えていたのかとか、細部を知りたければ本の方を読みましょう。
映画『アポロ13号』のあらすじ[Wikipedia](かなり詳しい。史実との比較まで載っている)


アポロ13 【プレミアム・ベスト・コレクション1800円】 [DVD]アポロ13 【プレミアム・ベスト・コレクション1800円】 [DVD]
(2009/07/08)
監督:ロン・ハワード, 出演:ケビン・ベーコン, エド・ハリス, ビル・パクストン, ゲイリー・シニーズ, トム・ハンクス

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コメントのお礼です
ツィンマーマンのコメント..、そうですね。思い出しました。
ツィンマーマンのバッハについて、ブログ記事にされている方が結構いらして、当時あちこちにコメントしていたので、どれだったかしら....と記憶を探りましたら、ブログのタイトルにつけていらっしゃる地名ですぐにわかりました。

わざわざコメントのご返信いただいて、それに、いつもブログを見てくださっているとのこと、どうもありがとうございます。

「アポロ13」のエド・ハリス、とっても素敵ですね。あの頼りがいのある姿はまさに理想の上司というところでしょうか。
私も随分昔に前に見たので、かなり記憶が曖昧になってきているので、この記事を書いていて、またDVDを見たくなりました。

小説の方は、映画のノベライゼーションもののようなストーリーだけ追っているものではなく、ノンフィクションらしい緻密に事実を追って行く淡々とした筆致で、技術的にもしっかり書き込まれているので、なかなか読み応えがあります。
ぜひ読んでみてくださいね。

では、今後ともよろしくお願いします。
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yoshimi

Author:yoshimi
<プロフィール>
クラシック音楽に本と絵・写真に囲まれて気ままに暮らす日々。

好きな作曲家:ベートーヴェン、ブラームス、バッハ、リスト。主に聴くのは、ピアノ独奏曲とピアノ協奏曲、ピアノの入った室内楽曲(ヴァイオリンソナタ、チェロソナタ、ピアノ三重奏曲など)。

好きなピアニスト:カッチェン、レーゼル、ハフ、コロリオフ、フィオレンティーノ、パーチェ、デュシャーブル、アラウ

好きなヴァイオリニスト:F.P.ツィンマーマン、スーク

好きなジャズピアニスト:バイラーク、若かりし頃の大西順子、メルドー(ソロのみ)、エヴァンス

好きな作家;太宰治、菊池寛、芥川龍之介、吉村昭、ハルバースタム、アーサー・ヘイリー
好きな画家;クリムト、オキーフ、池田遙邨、有元利夫
好きな写真家:アーウィット

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