マルタン/小協奏交響曲 

2011, 02. 03 (Thu) 12:00

フランク・マルタンというと、名前くらいは知っていた。
でも、てっきりフランス人だと思っていたり、マルティヌーとマルタンを混同していたりと、まともに聴いたことがないスイスの作曲家。
ピアノが入っている曲があったので、フリッチャイの録音で聴いてみた曲が《小協奏交響曲》。
どんな音楽か全く予備知識なしで聴いたら、これが意外に面白くて。
1945年の作品で、楽器編成が風変わり。チェンバロ、ピアノ、ハープとオーケストラによる協奏的なシンフォニー。

Life in MusicLife in Music
(2003/08/12)
Ferenc Fricsay,Berlin Philharmonic Orchestra ,Vienna Philharmonic Orchestra

試聴する(米国amazon)[DISC-6,track8-10]



《小協奏交響曲》は、古典的な響き、無調ではないけれど現代的な和声、十二音技法を使った(ような)前衛的な雰囲気が融合した、ちょっと摩訶不思議な音楽。
どこかで聴いたような気がする和声や旋律があちこちに出てくる。
連想するのは、ブロッホの《コンチェルトグロッソ》、ブラームスの第1交響曲第1楽章の冒頭、プロコフィエフのピアノ協奏曲、シェーンベルクの《浄夜》など。何かに追い立てられているような急迫感はブラッハーのピアノ協奏曲を思い出す。
十二音技法的な音の動きをする(と思える)部分でもわりに調性感があるし、現代ものを聴きなれていればとても聴きやすい。

全体は2部構成。全体的に短調系の暗いトーンで急迫感や陰鬱な雰囲気の曲想。なぜか最後だけ長調に転調して明るく終っている。
独奏楽器3つの音色がそれぞれ明瞭に違って聴こえるので、色彩感が出ていて面白い響きに思えるところ。
バッハのピアノ協奏曲だとオケに溶け込むようなチェンバロが、この曲ではピアノと同じように響きがクリアで存在感があるし、ハープもピチカート的につまはじいた鋭角な音とグリッサンド(というのか?)的なカーテンのように敷き詰められた音とが使い分けられている。
チェンバロとハープが入ると、古典モードに気分が変わるのに、曲そのものは現代モードなので、このアンバランスさが面白い。
フリッチャイの録音だとかなり陰鬱な不安感のようなものが強く漂って、後期ロマン派的な幾分世紀末的な雰囲気。
シュトウツの演奏だと、そういう濃密な叙情感はやや薄く、シャープなタッチでより現代的。


Frank Martin : Petite symphonie concertante (1945)1. Adagio - Allegro con moto
指揮:エドモント・ド・シュトウツ、チューリッヒ室内管弦楽団(たぶん)



この曲の録音は少なく、その中で売れているらしいディスクはapexの廉価盤。
Petite Symphony ConcertantePetite Symphony Concertante
(2003/05/20)
Armin Jordan, Suisse Romande Orchestra

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第1楽章 Adagio - Allegro Con Brio
冒頭のアダージョは、すこぶる暗い叙情感漂う陰鬱な旋律。こういう響きを聴くと、現代音楽らしくてなぜかほっとしたりする。
アレグロに入ると、チェンバロが主題を弾き、次にピアノとチェンバロで二重奏。
そこにハープのアルベジオが入ってきて、この3つの音色と響きが重なるとかなり摩訶不思議な雰囲気。
アレグロの主題はシャープでリズミカル。何かに追い立てられているような急迫感とか焦燥感を感じるので、ちょっと圧迫感を覚えるものがある。
旋律自体はわかりやすく、和声にも後期ロマン派くらいの調性感はあるので、前衛色は薄い方。

続く中間部の緩徐部分は息の長い旋律が続き、陰鬱さと妖艶で不気味さが混じったような叙情感。
チェンバロの絃をつまはじくようなシャンシャンという音とハープのポロンポロンという音が古風な感じで、この曲想によく似合っている。
中世の古い教会の薄暗い回廊に迷い込んだようなイメージが湧いてくる。
徐々に和声に厚みが増して加速していき、ピアノパートも目立ち始めて、再びアレグロに戻り、主題の再現。
ラストはテンポを落として、鬱々とした叙情的な旋律が現れて、フェードアウト。

第2楽章 Adagio
冒頭のチェンバロのアルペジオの響きがちょっと神秘的な雰囲気。
それを背景に旋律を弾くハープのポロンポロンという音色が、さらに輪をかけて不可思議さを増幅。
さらにピアノが加わって、高音域で強い調子で旋律を弾き、最後はチェンバロに交代して、徐々にテンポを上げていき、突如として終る。

第3楽章 Allegro Alla Marcia
行進曲風ではあるけれど、勇壮な行進曲というより、ひたひたと黙々と不気味な雰囲気。
最初はチェンバロがゆったりしたテンポでわりと静かなトーンで旋律を弾いている。
次に入ってくるピアノがかなり目立っている。和音移動やアルペジオが多用されて、響きの厚みが出て、勇壮な雰囲気に変わっていく。
終盤になるとテンポが上がり、まるで目的地が見えて一気になだれ込むような勢い。
なぜか、最後だけは調性音楽に回帰したような長調で明るく終っているところが面白い。

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